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ボクの初恋のひと それぞれの青春  作者: 明けの明星


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15/24

中2~変化

早いもので、中2も2学期が終わるころになっていた。


海の高校は外部受験をする、という発言は少なからずショックだったけど、

それから、海はとのことについて特に口にすることはなく、

ボクから聞くこともなかった。


そんな頃、あすかから路上ライブをやるから見に来て、

と連絡があった。


もちえろんボクだけではなく、翔×マリアのみんなにだ。


指定された日にとある駅の、コンコースに行く。

そこはいろんな人がよくライブやパフォーマンスを行っている場所だった。


冬、日が落ちるのは速い。

すっかり暗くなった、コンコースの片隅に、あすかがいた。

てっきり大学の仲間とバンドとしてライブをやるんだと思っていたんだけど、

あすかは一人だった。


ギターを弾きながら、あすかは歌っていた。

たぶん自作の曲だ。

そこを行き交う人はさほど多くはないけど、

電車が着いた後は何人ものひとが、あすかの前を通り過ぎた。


足を止めてくれる人はほとんどいないけど、

通りすがりに拍手をしてくれたり、あすかの方をがっちり見ながら歩く人も多かった。


ボクたちはあすかの視線に入らないように、片隅に隠れるように演奏を聴いていた。

ボクたちが正面に立ち止まって聞いていてもよかったんだけど、

それじゃ、サクラみたいでいやだ、と拒否られた。


小一時間のライブが終わり、ボクたちは近くのファミレスに集合していた。

あすかは満足そうな顔をしていた。


そこで、陸がもってきたタブレットを使って、

さっきのライブの感想なんかがSNSで流れていないかを確認した。


ライブであすかは

「#翔×マリアに感想よろしく!」

と書いた大きな看板を置いていた。


探してみると、#翔×マリアや #服部あすか と言ってタグの付けられて

書き込みが出てきた。


その中には痛烈なものもあった。

「お遊びレベル」

「プロとか目指してないよね」

「もう少しうまくなってから路上やってほしい」

など。


もちろん、

「上手かった」とか「また聞きに来ます」となの好意的な意見もあったんだけど、

こういう時、批判している言葉の方が突き刺さる。


あすかはしばらく考えていたけど、

「どんな意見も、今の私には言われて当たり前のことだよ。

やはりまだまだプロレベルじゃない。路上ライブやるにレベルにもなってない、いうことだよ。」


「楽しかったらいいんじゃないの」

ボクはそう言った。

楽しそうに笑い歌うあすかがボクは好きだった。


その帰り道、みんな寄り道だとか用事があるだとかで、

ボクとあすかのふたりだけにった。


「今日のライブで区切りが付けられそう。

来年からそろそろ就活しなきゃだから」


あすかは来年度には大学3年生だ。

そろそろ将来を考えなくてはいけないんだ。


「もう歌わないの?」

ボクはそう聞いた。


「歌わないわけじゃないけど」

とあすかが口ごもりながら言った。


並んで歩いていると、あすかがボクの方を見た。

あすかがボクを見上げるように上を向いていた。


ボクはいつの間にやらあすかより身長が伸びていた。

そして声も前よりずっと低い声になっていた。


「けいた、大きくなったね」

あすかが改めて身長差に驚いたように言った。


「声だって、変声期?」

あすかの問いになんだか恥ずかしくなった。

ボク、いま大人になってまーす、って言いふらしているように感じて、

照れ臭かった。

仕方なく少しだけ頷いてみた。


道の脇のビルの窓ガラスに、並んで歩くボクとあすかの姿が映っていた。

あすかより頭一つ分くらい背が高くなったボク。


並んで歩いている二人はなんだか、大人の男女のように見えた。

ボクは心の中で、

「前にコンビニで変な奴が絡んできたとき、今の姿だったら付き合ってるって言われてもサマになったのに」

と思っていた。


あすかもコンビニでの出来事を思い出していたらしい、

「あのコンビニで私の彼氏、とか言っちゃった時、いまみたいに背が伸びて、野太い声のけいただったら、そんなこと言えなかったね。本気にされても困ったもんね」

と。

あすかにとってボクは彼氏とか付き合ってる人とか、そういう対象ではない、

その現実を改めて思い知らされた、

そんな帰り道だった。


応援していただけると感激します。

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