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ボクの初恋のひと それぞれの青春  作者: 明けの明星


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13/24

中2~先輩になった

また春が来た、

桜の花びらがまい、新緑の香りがする風が吹く。


ボクは中学2年生になった。


新1年生も入学し、ボクも先輩だ。

吹奏楽部への新入生の勧誘も、2年生の大切な役割だ。


ボクのサックスの腕前は、はっきりいってかなりダメで、

吹奏楽部で主要なメンバーにはなれていなかった。


一方、片桐海のほうは、1年生の時からレギュラー演奏者になっいた。

運動部じゃないのに、レギュラーとか控えとかあるんだって、ボクは初めて知った。


高校受験をして新たな道に進み始めたまいかは、通学時間が今までの倍くらい

かかるようになったけど、毎朝、自力で起きている。

これはすごいことだ。


そして、学校の道具の倍ほどある、ダンスのための荷物を担いで

家族のなかで一番早く家を出てい行っていた。


その頃、海の兄、片桐陸が実家を離れ、一人暮らしを始めた。

理系の学生である陸は、このころから研究室に入りびたり状態で、

家に帰る時間も惜しい、ということで、大学近くに部屋を借りだのだった。


ある日、ボクと海で陸の部屋に遊びに行った。

見かけは小ぎれいなワンルームだけど、さすが、理系男子の部屋、

どこか殺風景だった。


部屋に積み重ねてある、本とレポートらしき紙の束、

机に無造作に置かれたパソコン。


陸は煙草を吸ったりはしないが、部屋はどことなくどんよりとして、

むさくるしい匂いがしていた。


小さな流しに、電動式のコンロが一つ。

そして小さな冷蔵庫。

ボクと海で、流しに詰めこまれていた食器類を洗い、

冷蔵庫に放置されていた謎の食品を処分し、お土産に持ってきた、

飲み物と、海の家から持参したおかずを綺麗に並べた。


「兄さん、こういうことをやってくれる彼女っていないの?」

海が聞く。

「いるわけないじゃん、いつもお前らとつるんでるし」

と陸。

想定通りの答えだった。


「でもさ、陸もいつかは結婚したりするんでしょ」

ボクが聞いてみた。


「そうだな、いつかは安定した家庭が欲しいかな。

ま、まず安定した仕事に就かないと。家族を養わないきゃだし」


結婚するって家庭をもつことなんだ。

ボクは自分のことに当てはめてみた。


両親と姉、そしてボクの家族。

そこから、結婚して新しく家庭を持つ。


まったく想像ができなかった。


「陸は大学卒業したら、この部屋どうするの?」

これも聞いてみた。


「え、家に帰ってくるの?兄さんの部屋、お母さんの部屋にされてるよ」

海が言う。


「多分、院進するから少し先だけど、その後は一応就職するつもりだから、

このまま実家には戻らないかも」

陸が答えた。


ボクには陸の言葉はひっかかっていた。

このまま実家には戻らない。

大学生になって、家を出てそのままずっと家族とは別に暮らすってことだ。


そういえば、まいかが高校生になり、学校が遠いせいもあり夜遅く帰宅することが多くなった。

夕食時にまいかがいないと、父が不機嫌そうに、

「家族そろって食事ができるのもあと何年もないのに、遅く帰ってばかり」

と言っていた。


父だって、仕事が忙しくボクたちが小学生の頃はほとんど夕食時には帰宅していなかったのに。


父は、このころになって家族そろって過ごす時間を大切にしていたように思う。

休みの日でも、皆がそろっていれば遠出じゃなくても近くのスーパーに皆で買い物に行ったり、

リビングでみんな揃ってテレビをみたり。

そんなことを望んでいた。


でもそんな父のこだわりはボクやまいかにとっては、

とても煩わしく、できれば関わりたくないといった気分だった。


なので、父が完全に不機嫌にならないぎりぎりのところで

気持ちだけ付き合う、と言ったスタンスでしのいでいた。


「あと数年でまいかも独り立ちしてしまう」

というが、そのあと数年、これはボクにとっては

まだまだずっと先の事のようにしか思えなかった。


そして、家族そろって、と言われるたびに、

父と母がそろっていなかった、あすかの事を思った。





この年頃に、お父さんの存在はうざったいですね。

けいたもまいかもあからさまに反抗しないのがえらいいです。

応援していただけると感激します。

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