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ボクの初恋のひと それぞれの青春  作者: 明けの明星


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10/24

中1の冬~直前

冬休みに入り、今年もあとわずかとなった。

ボクは部活も、音楽教室も休みとなり、家でのんびりと過ごしていた。


母から掃除や買い出しの手伝いを依頼されることは多かったが、

適当に請け負って、お小遣いをもらっていた。


まいかは冬休み連日、塾へ通うそうだ。

休めるのはお正月の数日のみ。


高校受験をするの中3なら当たり前なのかもしれないが、

我が家では想定外だった。


そのまま高校に行けるまいかの学校で、外部受験をするのは3人ほどらしい。

まいかのクラスに2人、隣のクラスに1人。


まいかの外部受験が公になってからは周囲の友達と微妙に距離ができているらしい。

学校で、まいかの前でわざわざ冬休みの遊ぶ計画を話し合ったり、

高校生になったらやることを決めたり。


そして、わざとらしく

「まいか、ごめーん、まいかは一緒じゃないんだよね」

とか言ってくるらしい。


そういえば、中学受験のときも、小学校で女子同士、

「同じ公立の中学に行かない子はハブる」

とか言われていたっけ。


「わざわざそんなこと言わなくても、シカトしてればいいのに」

とまいかはあっさりしていた。


それでも、まいかがずっと行きたがっていたイベントに

まいか以外の仲良しで行ってきて、その様子をSNSにアップしていたのを

見た時にはさすがにすこしへこんでいたようだ。


「私の高校が決まったら一緒に行こう、って言っくれてたのにな」

そういってしょんぼりとした。


「でも、私はそんなことに構っていられない。私はやることをやるだけ」

と自分を奮い立たせるように言った。


新年になり、昨日までの年の瀬の慌ただしい様子が一転して

のんびりと穏やかな空気が流れていた。


その日の夕方、まいかが

「ダンスの練習、動画撮ってほしいから一緒に来て」

と言ってきた。


まいかが受験するのは舞踊に特化した高校だからダンスの実技試験もある。

ダンス教室でも対策をしているようだけど、自主練も欠かしていない。


近所にある公民館の側面がガラス張りになっていて、

暗くなると鏡のように姿がうつる。


その前にはダンスの練習やお笑いのネタ、歌の練習など

いろいろなことをやっている人たちが集まっている。

この地域では有名なスポットだった。


まいかもよくここで練習をしていた。


この日も既に先客が何組かいたけど、

空いているスペースを確保し、まいかは自分の姿を映すように

ガラスに向かって踊り出す。


音楽はイヤホンで聞いているから、ボクには音に合っているのかわからないけど、

動きはとても軽やかだ。


こうやって見ると、まいかって手足が長くて顔が小さい、

とても見栄えのする体形だった。


なかなかやるじゃん、と思いながらまいかのいう通りに動画を撮り、

それをまいかが見て確認、そしてまた踊る、

を繰り返す。


1時間ほど続けた頃、ふと人の気配がした。

女の子が近づいてきた。

まいかの同級生だ。


「まいか、ごめんね。先にAXワールドに行っちゃって。まいかの受験が終わったらって約束してたのに」

まいかが行きたかったイベントのことだ。

その子はまいかの仲良しだ。

まいかの画像で何度も見た顔だった。


「いいよ、気にしてないし」

まいかは踊りながら答える。

「でも、よくここが分かったね」


その子の家はここから数駅離れたところだった。

「お家に行ったら、まいかのお母さんがここだって教えてくれたの」


まいかは踊るのをやめてその子に向き合った。

「お正月なのに、わざわざ来てくれたんだ」


「まいかに頑張って、って言いたかったから。学校だと他の子に聞かれそうで、怖いし」

その子が言う。


「私はまいかが外部受験するって聞いて、やっぱりって思った。でも高校も一緒だって思っていたから

寂しい。それでも、まいかを応援したい。まいかはダンスを極めるべきだよ」

うつむいて話すその子の声は小さかった。

そして、まいかに比べるとずいぶん内向的に見えた。


「ありがとう、るるちゃん。高校、一緒じゃないけどずっと友達だよ。

なにかあったらすぐに言うんだよ」

その子、るるちゃん、篠崎こゆるは少し涙目になってまいかを見ていた。


ボクのことに気づいたらしく、

「この子、弟?」

と聞いた。


「そうだよ、弟のけいた。中1」

るるちゃんがボクの方を向いて軽く会釈した。


「お姉さんにはいつもすごく助けてもらってるの。私内気だからいいように使われることも多くて、

そんな時に代わりに言ってくれたりするの」

るるちゃんはボクに向かって言った。

口下手なのか、言葉につまりながら話した。


練習を終え、帰り道、ボクとまいかとるるちゃんで歩いた。

ボクのことはすっかりスルーでまいかとるるちゃんがたのしそうに

喋っている。


るるちゃんを駅まで送った。

手を振って駅の構内に消えていくるるちゃん。

内気な子に見えていたけど、笑顔が可愛くてなんだか映画のワンシーンを見ているようだった。


帰り道、まいかが

「るるちゃんが一番最初に私の外部受験に賛成してくれたんだ」

そう言った。

まいかは先生や両親に話す前に数人の友人に相談したらしい。

その時、るるちゃんだけが

「まいかは世界を目指していいと思う。まいかならできると思う」

と言ってくれたのだそうだ。


他の子はふーん、すごいね、程度の反応だったようだけど。


「るるちゃんは私の夢を真剣に聞いてくれて、真剣に考えてくれた。

誰に反対されても曲げるつもりはなかったけど、るるちゃんに背中を押された」

そう言った。


「るるちゃん、内気だから高校で仲のいい友達ができるといいんだけど」

まいかはそう言ったけど、

さっきの笑顔のるるちゃんをみて、ボクは大丈夫だと思った。

るるちゃんの眼の奥になにか強いものを感じていたから。


まいかの高校受験が間近に迫ってきた。

そんなころ、ボクは流行性の風邪を引き寝込んでいた。






受験直前に家族に病人がでると焦りますね。

けいたの風邪、まいかにうつりませんように。

応援していただけると感激します。

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