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後編

北の丘に通じる幹線道路を歩いていると、丘の入口から急な登り坂になった。


「この坂を登るの?私、疲れちゃったわ」


エカテリーナは急に足を止め、その場にしゃがみ込んだ。


「フラッグ、ちょっと休まないか?公園を出てから歩きっぱなしだし、みんなも疲れているようだし」


マーカスは少し疲れた様子のエカテリーナを見て、提案して来た。

ボブも見やると息を切らせている。

ここで休みをとるのがいいのだろうが、マーカスの言う通りにするのもしゃくに触る。

オレはみんなに別の提案をした。


「この坂道の半分まで登ったらひと休みしよう。初めから休むと、また途中で休みたくなる。サイモンも待っていることだし、のんびりもしていられない」

「半分もー」


エカテリーナのため息交じりの声が空に響いた。

オレは指揮を執るように、先頭に立ってひとり丘を目指して登って行く。

その後にボブが続いた。

マーカスはエカテリーナに肩を貸すと、二人で後から追いかけて来た。


「フラッグって、いつもあんな感じなのか?」

「いつもあんな感じよ。強引で意地っ張りで、それにエリート意識が強いから、どこかで私たちを見下しているのよ」


急に小声で話しかけて来るマーカスに、エカテリーナは日頃の鬱憤を言葉にした。


「そうなのか……エリートね」

「そう言えばマーカスもリサイクルできるからエリートよね。フラッグみたいに威張らないの?」


急に質問して来るエカテリーナの言葉に、マーカスは照れ笑いながら答えた。


「ボクはそんな柄じゃないよ。それに誤解しないでくれ。エリートがみんなフラッグのようなタイプってことはないから」

「そうよね。エリートがみんなフラッグみたいだったら、この世の終わりよ」


お腹を抱えて笑い出すエカテリーナとマーカスの方を振り返ってフラッグが言った。


「何が、そんなにおかしいんだよ」

「別に何でもないわ。マーカスが、ちょっと冗談を言っただけ」


何の事かわからないかったが、なぜか気に食わなかった。

マーカスとエカテリーナの関係はどうでも良いのだが……。

ただ無性に腹が立った。


「ボブ、行くぞ!」


オレはひとり苛々しながら、大股でドスドスと歩いて行った。



先に坂道の真ん中まで来たオレとボブは、土手に大の字になって寝ころんだ。


「さすがに疲れたな」

「フラッグが言い出したんだよ。坂の真ん中まで登ってから休みだって」


そうだったな。


「ところで、フラッグはエカテリーナのことをどう思っているの?」

「な、何を急にそんな事を言いうんだ」


ボブの唐突な質問に度肝を抜かれ、オレは声を裏がしてしまう。


「だって、今のマーカスとエカテリーナって良い感じじゃん。二人、付き合っちゃうんじゃないかと思ってね」

「お、オレには関係ないよ。オレはエリートだぞ。落ちこぼれのエカテリーナとなんて」


慌てて答えるオレに、ボブは頬を膨らませ睨んでくる。


「フラッグのそう言うところがいけないんだよ。もっと素直になりなよ。じゃないと本当にエカテリーナが去って行くよ」


ボブの言う通りだった。

エカテリーナのことを好きとか言うんじゃなくて。

エリートとしてのプライドが何かと邪魔をしているのだ。


「ふーぅ。やっと着いた。私は、しばらく休むから。起こさないでね」


マーカスと二人でやって来たエカテリーナは、崩れるように倒れ込んだ。

そしてオレの横にコロコロ転がって来ると尋ねて来た。


「二人して何を話していたの?良い話?」

「エカテリーナの話だよ」

「ボ、ボブ。余計な事を言うな!」


正直に何でも話してしまうボブの言葉に、オレは全否定した。


「わ・た・しの話しねぇ」

「な、なんだよその目は」


色目を使って見つめて来るエカテリーナを横目に、オレは顔が熱くなるのを覚えた。

手カテリーナとは長い付き合いだが、こんなに緊張するのははじめてだ。

オレはやっぱりエカテリーナのことが……。


「さあ、お三人方。休憩はそのぐらいで、先へ急ごう。サイモンが待っているんだろ?」


マーカスの言葉にオレは正気を取り戻した。


「そうね。サイモンのこと忘れちゃ悪いわね。行きましょう」

「うん。サイモンを必ず助けるぞ」


マーカス、エカテリーナ、ボブの三人は和気藹々としながら、先を急いだ。

その様子を後ろから見ていたオレは心の中で思った。

こういうのも悪くないかもって。



坂道を登り切ると、それは姿を現した。

真っ黒に染まった不気味で大きな大木。

枝と言う枝に数十匹のカラスが止まり、ギャアギャアと騒いでいるのだ。


「あれは全部、カラスなのか・・・なんて数だ」


オレは目の前の光景が信じられず、愕然とした。

夢の島にもカラスは多いが、せいぜい数えられるほど。

この木を根城にしているカラスの群れは、とてつもない数。


「どうするフラッグ。あんなに多いんじゃ勝ち目はないぞ」


冷静なマーカスもお手上げの状態だった。

武器と呼べるものは何も持っていない。

しいて言えば、それぞれの個性があるだけだ。


空缶のオレは、体をつぶせば大きな音が出る。

傘のエカテリーナは、傘を広げたり、閉じたりできる。

長靴のボブは、これと言って何もないが。

ペットボトルのマーカスも音を鳴らすぐらいだろう。


「せめてカラスの数が少なければ、何とかなりそうなのに……」

「それだ!」


ボブの思わぬ呟きに、オレは妙案を思いついた。


「フラッグ、いきなり大きな声を出してどうしたの」

「良い作戦を思いついたんだよ」

「作戦って?」


驚いた様子のエカテリーナは、興味深々な目でオレを見つめる。

オレは周りにいる三人の顔を見やると、静かに語り出した。


「作戦はこうだ。誰かがおとりになってカラスの群れを引き付ける。その間に木の上の巣に囚われているサイモンを救出するんだ。カラスの数が少なくなれば勝機もある」

「作戦はわかったけど、誰がおとりになるのよ」


エカテリーナは不安げな様子で三人を見回した。


「それは、マーカスだ。マーカスはこの辺に詳しい。それにカラスは光る物が好きだ。マーカスに水を入れて、太陽の光を浴びればキラキラと光る」

「そんなの無茶よ。マーカスひとりでカラスの大群を相手にするなんて。いくらマーカスが気に入らないからと言って、危険なことを押し付けるなんて、フラッグ酷いわ!」


オレの作戦に不服のエカテリーナは声を荒げて反論して来た。

オレが好き嫌いでこの作戦を考えたとは思っていないだろうが、納得はしていない。

すると、マーカスが口を開いた。


「心配してくれてありがとうエカテリーナ。ボクなら平気さ。その作戦をやってみようじゃないか」

「マーカス……。マーカスがおとりになるなら、私もおとりになるわ」


エカテリーナはひどく動揺しているようで、目に涙を浮かべながら必死に訴えて来た。

しかし、オレは。


「ダメだ。エカテリーナはオレ達と一緒にサイモンの救出だ」


強く否定した。


「なぜよ、フラッグ。マーカスが可哀想じゃない」

「いいんだよ、エカテリーナ。フラッグは間違ってはいないさ。サイモンを助けるために必要なことなんだよ」

「マーカス……」


泣き崩れるエカテリーナの肩をそっと抱き寄せると、優しい口調でマーカスがエカテリーナを諭した。

そんな二人のやり取りを見ながら、オレは奥歯を噛み締めた。


「それじゃあマーカス、頼んだぞ」

「わかっているよフラッグ。見事、おとり役を全うしてみせるよ」


マーカスの肩に手を置くオレに応えるかのように、マーカスが胸を張って自信を見せた。

さっそくマーカスは、丘の上にある水飲み場で水を汲みはじめる。

残ったオレ達は、木陰に身を潜めながら、その時を待った。


マーカスは少しよろめきながら、カラスのいる大木へ近づいて行く。

そして、10メートルぐらい離れた所に立ち止まると、太陽の光を浴びて体をクルクル回しはじめた。

太陽の反射光がキラキラと辺りを照らす。

その光に気づいた一匹のカラスがマーカスの方を睨んだ。


「カラスが気がついたようだ。これならイケる。後はカラスがマーカスの所に集まることを祈るだけだ」


木陰から周りの様子を伺いながら、オレは囁くように呟いた。

カラスは一匹、また一匹とマーカスに気づきはじめる。

そしてギャアギャア騒ぎ出すと、一斉に飛び上がり、マーカスを取り囲んだ。


「マーカス!!」


突然、エカテリーナが木陰から飛び出した。


「エカテリーナ!」


オレの言葉も聞こえるはずもなく、エカテリーナはマーカスの元へ。

傘をバタつかせながら、マーカスを攻撃しているカラスを追い払った。


「ちくしょー。これじゃあ作戦が失敗じゃないか」

「どうするのフラッグ?」


悔しさを滲ませた声でオレがガックリと肩を落とすと、ボブが不安そうに尋ねて来た。

作戦を台無しにしたエカテリーナに落胆したが、それよりもエカテリーナがマーカスを選んだことに、ひどく腹が立った。


「オレ達だけでサイモンを助けるんだ」


オレの剣幕にボブは何も反論できず、ただ頷くだけだった。



オレとボブの二人はカラスに気づかれずに、大木の根元までやって来た。


「この上にサイモンがいるはずだ」

「この木を登るの?少し大き過ぎるんじゃない」


木肌は凹凸がなく、つるりとした表面で良く滑りそう。

しかし、所々についている節に手足を引っかけられそうだ。


「ボブ、馬になれ」


オレはボブを踏み台にして木をよじ登って行った。

木登りに不向きなボブは木の根元で見張り番。

カラスが戻って来たら大声で知らせることに決めていた。


もともと身軽なオレは木登りなど朝飯前。

あっという間に木の上まで辿り着く。

すると、目の前にカラスの巣にされていたサイモンを見つけた。


「サイモン、大丈夫か?」

「その声はフラッグか。早く助けてくれよ」


サイモンはカラスの巣にこんがらがりながら、情けない声を出す。

予想していた通りカラスの巣の材料にされていた。

カラスからすれば、丈夫なサイモンはうってつけの素材なのだろう。

巣が丈夫ならばヒナも安全に守れる。

狡猾なカラスならではの目の付け所だ。


「フラッグ、何ひとりでブツブツ言ってるんだよ。カラスが戻って来るだろ」


案の定、オレが巣に近づこうとすると、空から大きなカラスが飛んできて、目の前に立ち塞がった。

サイモンをさらったカラスだ。


「オレ様の根城に侵入するとはいい度胸だ。覚悟はできているんだろうな」


大きなカラスは野太い声で脅かすと、鋭い目つきでフラッグを睨んだ。

さすがに大きな群れのリーダーだけあって、威圧感が凄い。

オレはたじろぎながらも、カラスに向かって叫んだ。


「オレの仲間を返せ!」

「仲間ってこのゴミのことか?これはオレ様が見つけたゴミだ。だからオレ様の物だ」


どこかで聞いたことのあるセリフだと思ったが、オレ様系の奴はみんなそうなのだろう。

こういうタイプの奴に限って、情け深かったりもする。


「サイモンはオレの大切な仲間なんだ。オマエにもわかるだろ。あれだけ大勢のカラスを従えているんだから」

「アイツらのことか。アイツらはオレ様の下僕だ。仲間と言う甘っちょろいもんじゃない」


オレの予想が外れた。

コイツは話してわかるような相手じゃないと確信する。

そして、オレは力づくでサイモンを助けるため、カラスに立ち向かって行った。


ガシャガシャガシャ。


勢いよく体をつぶしたり、膨らませたりしながら、金切り音を立てカラスを脅かして見せる。

しかし、カラスは澄ました顔で唾を吐いた。


「そんなことで、このオレ様がビビると思っているのか。ずいぶんナメられたものだな」


カラスは大きな翼を広げると、翼を羽ばたかせ、つむじ風を巻き起こした。

オレはすぐさま枝にしがみつき、飛ばされないように耐える。

ガサガサと周りの枝葉が激しく騒めいた。


オレは打つ手をすっかりなくしてしまう。

下にいるボブに頼っても、ボブは歩くこと以外、これと言った個性もない。

せめてエカテリーナがいてくれれば、カラスを脅かすことはできただろう。


「観念したようだな。所詮、オマエのようなゴミに、このオレ様を倒そうなんて思うことが間違いなのだ。オマエは巣にも使えない役立たずだ。そんな奴はこうしてくれるわ」


カラスはフラッグの上に乗っかると、鋭い爪でフラッグの体を貫いた。

―ギャアアアー。と普通は悲鳴を上げるところだけど、オレは空缶のゴミだ。痛くも痒くもない。


「痛くないのか?」

「残念だったな。オレはただの空缶のゴミだ。痛みなんてないよ!」


驚いた顔でまじまじと見つめて来るカラスをよそに、オレは静かに立ち上がり構えなおす。


「面白いヤツだ。でも、オレ様が優位なことに変わりはない」


カラスは再び飛び上がると、フラッグの頭を鷲掴みにして空へ舞い上がる。

そして、空の上まで来ると足を放し、フラッグを地上に落下させた。

フラッグは地上まで勢い良く落下し、カコンと音を立てた。


「フラッグ!!」


巣で様子を見ていたサイモンと木の根元で見張りをしていたボブが叫ぶ。

すると、カラスが地上に降り立ち、フラッグの体の上に足を乗せた。

そして、みんなに聞こえるように叫んだ。


「オマエ達のリーダーは沈んだ。降参しろ!」


最後まで抵抗していたマーカスとエカテリーナも白旗を上げた。



大木の枝にぶら下げられた檻の中に、オレ達は閉じ込められていた。

檻と言っても鉄格子で囲まれた丈夫なものではなく、小鳥を飼う鳥籠だ。

オレやマーカスは納まりがよいが、エカテリーナに至っては籠からはみ出している。


「ちょっと!私をこんな所に閉じ込めて、いったいどういうつもりよ!閉じ込めるならもっと大きい檻にしてよね!」


注文が少し誓うだろうと思いながら、オレは重い体を起こした。


「フラッグ、無事だったのか?」

「ああ、ちょっと風通しが良くなったけどな」


体に開いた穴に手を通しながら、オレは冗談まじりに答えた。

みんなカラスに捕まってしまったが、これと言ってケガはしていないことが唯一の救いだ。


「これからどうするフラッグ。この檻は外から鍵がかかっているから、内側からではまったく開かない。」

「ボクたち、これからどうなるの?干からびるまで、ここに閉じ込められたりするのかな」


ボブの心配も最もだが、生憎、オレ達はただのゴミだ。

腐っても干からびることはないだろう。

けれど、このままと言う訳にも行かない。


すると、見張りのカラスの話し声が聞こえて来た。


「おい、あのゴミ。布をはげば巣の材料になりそうだぞ」

「そうだな。いい骨組みをしている。後で、リーダーに相談してみよう」


見張りのカラスはエカテリーナを嘗め回すように見て、興奮する。


「ちょっと、勝手なこと言わないでよ。誰が、あなたたちの言う通りになるものですか!」


カラス以上に興奮しながら、エカテリーナが強い口調で言い放った。


そんなやり取りを遠くから、こっそり眺めている者がいた。

それはカラスの巣にされていたサイモンだ。

どうやって逃げ出したかはわからないが、見張りのカラスの隙を伺っているようだ。


オレがサイモンに気がつくと、サイモンは首を横に振って一指し指を口に当てた。

そのサインの意味を悟ったオレは、見張りのカラス達の注意を引く。


「おい、オマエ達。オマエ達はリーダーの下僕なんだろ?そんなので悔しくないのか。たかが体が大きいだけの違いじゃないか」

「オレ達のリーダーは体が大きいだけじゃない。とても賢いんだ」


オレは続けた。


「頭の大きさは変わらないんだから、脳もそんなに違わない。オマエ達はリーダーにビビっているだけだ」

「ビビッてなんかいないよ。オレ達はリーダーに従っているんだ」


あくまで認めようとはしない見張りのカラス達にうんざりしたが、良いチャンスを作れた。

サイモンがブーメランのようにクルクル回りながら飛んできて、見張りのカラスにぶつかる。

ふいをつかれた、見張りのカラス達は慌てて空へ逃げ出した。


「サイモン!」


エカテリーナとボブが声を揃えて声を上げた。


「サイモン、お前なら助けに来てくれると思っていたよ」

「本当か、フラッグ。オレを担いでいるんじゃないだろうな」


サイモンは冗談まじりに答えると、オレ達を檻から外へ出してくれた。

あいにく見張りのカラスも他のカラスも辺りにはいない。

逃げるなら今がチャンスだ。


「サイモン、ありがろう。やっぱり頼れるのはあなただけだわ」


エカテリーナが猫撫で声を出しながら、サイモンにすり寄るのを突き放してサイモンが言った。


「話は後だ。逃げるなら今しかない」

「ああ、サイモン。みんな行くぞ」


オレの掛け声と共にみんなその場から逃げ出した。

すると、マーカスが先頭に立ち合図して来た。


「みんなコッチだ」


マーカスの目の前には背丈の高い草むらが広がっていた。

これならばカラスに見つからずに逃げられる。

この辺の地理に詳しいマーカスならではのアイデアだ。


しかし、カラスはそれ以上に狡猾だった。

空の上から鷹の目のごとく、地上の動きを見ていたのだ。

すぐにフラッグ達はカラスに見つかってしまう。


「ちくちょー。カラスに見つかった。みんな足を止めるな。走って逃げるんだ」


必死に駆け出すが、返って草むらが邪魔になって、なかなか前に進めない。

カラスは二手に分かれると、フラッグ達を攻撃しながら追いかけて来た。



オレ達はカラスの攻撃をかわしながら、必死に草むらを逃げ回る。

すると、目の前が開け、まぶしいくらい光が差し込んで来た。


「よし、草むらを抜けたぞ」


目の前に立ち塞がっていたのはリーダーカラス。

先回りして待ち構えていたのだ。


「もう逃げ道はないぞ。観念するんだな」


回りはカラスの群れが取り囲み、引くに引けない状況。

オレ達は覚悟を決めて、カラスに立ち向かって行った。


「わー!」


カラスは容赦なしに嘴や爪で攻撃して来る。

翼をバタつかせ風を起こしたり、空の上から滑降して来たり、やりたい放題。

オレ達は数少ない個性で応戦した。


しかし、やっつけてもやっつけてもカラスの数は減らない。

そればかりか、他の群れのカラスも参戦して来た。


「これじゃあキリがない。何か他に手はないのか」

「リーダーだ。群れのリーダーを狙おう。リーダーをやっつければ、カラスは引き下がるはずだ」


マーカスの提案にオレ達は納得して、一斉にカラスのリーダーに立ち向かって行く。

カラスのリーダーは一瞬度肝を抜かれた顔をしたが、すぐに切り替え応戦して来た。

翼をバタつかせ、お得意のつむじ風を巻き起こす。


「同じ手に二度もくらうか!」


すぐさまフラッグはヒラリと体をペチャンコにつぶして避ける。

そしてリーダーの尻尾に捕まると大きな声で叫んだ。


「捕まえだぞ。みんな今だ!」


オレの合図でサイモン達が一斉に攻撃する。

エカテリーナは傘の先端でカラスを突き刺し、ボブはその大きな足で飛び蹴り、マーカスはカラスの頭目がけて体当たり。

そしてサイモンはブーメランのように回り、カラスの顔を打ちのめした。


「うぉぉぉ……」


カラスのリーダーはその場に大の字になって倒れ込んだ。

その光景を見ていたカラスの群れは、一瞬凍りつく。

そして、なかなか起きないリーダーを横目に騒ぎ出すと、慌てて空へ逃げ帰って行った。


「やったぞ。ボク達、カラスを倒したんだ。どんなもんだい、凄いだろ」


ボブは調子に乗って気絶しているカラスのリーダーの上に乗っかって見せる。


「ボブ、その辺にしとけよ。さあ、帰ろう夢の島へ」

「夢の島?フラッグ達は夢の島から来たのかい?」


マーカスは驚いたように目を見開くと、オレ達の顔を見て来た。


「そうよ、マーカス。あなたも来る?」


エカテリーナの突然の誘いに一瞬戸惑いを見せたマーカスだったが、すぐに頷いて答えた。


「じゃあ決まり。これでマーカスも私達の仲間よね。いいでしょフラッグ?」

「ああ、マーカスはオレ達の新しい仲間だ。よろしくな、マーカス」


オレのその言葉を待っていたかのように、周りのみんなは笑顔で答えた。

そして、オレ達の歴史に1ページ記された。

カラスの群れから仲間を救い出した英雄フラッグとその仲間達と。


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