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【ファースト】


リゼは急いで落ちたヴィスを追う。

狂化は長くは持たない。

先程の戦いではリゼに割り込む余地は無かった。

地面の大穴は千載一遇のチャンスだった。


地下は古代遺跡を思わせる建造物で構成されている。未開の遺跡であるのは間違いない。保存状態も良く、歴史的発見の可能性が高い。


太陽が開いた穴から差し込み地面を照らす。その中程辺りで吐血し、身体を痙攣させるヴィスを見つけた。

リゼは急いだ。もう一刻の猶予もない。


ヴィスの元まで駆け寄り抱き起こす。

ヴィスはリゼの肩に噛み付く。


「イッ.....痛いけど、我慢だ私。ヴィス君戻ってきて」


肩に噛みつくヴィスを無理矢理剥がして、そしてリゼはヴィスの口にキスをした。

所長が渡してきたお泊まりセットの中に魔道具が一つだけ入っていた。確実に偶然であるが、この状況においては最高最善の物だった。


それは魔法薬だが、失敗作で破棄されるはずのものだった。しかし狙っていた効果とは異なる物だったが、乾燥を防ぐ効能が強く、乾燥しやすい唇に所長が気に入って塗っていたのだ。


そしてこれはリゼしか知らないもう1つの効果だが、この薬は魔力の浸透率を高める効果も持っていたのだ。失敗作の産みの親だからこそ知り得た事だ。


リゼは自分の唇に塗ってヴィスへ口付け行い、自分の魔力を流し込んだ。

狂化は魔力枯渇時に起こる状態異常だから、魔力が少量でも入れば状態異常から脱却する。


勿論根拠はないし、実験をした事も当然にない。リゼの咄嗟の仮説だ。そして一か八かの大勝負。リゼは賭けに勝った。ヴィスの意識が戻る。


「あ......れ。こ......こ.......いった...い」


「ヴィス君が私を守ってくれたから、私からのお返しだよ。初めてだから感謝してよね。でも多分そろそろあいつが来ちゃう。私じゃ勝てないし状況は未だに最悪だけどね」


リゼはヴィスを強く抱きしめて大穴の上を見る。

ゆっくり降下してくる男の姿を捉えた。


「あと1分位であいつがくるね。まぁ仕方ないか。よく頑張ったよヴィス君。すっごいかっこよかったぞ」


リゼの言葉にヴィスは敗北を悟った。

最後はリゼに抱かれて死を迎える。

不思議と恐怖は無かった。


「あ......の。魔力...どうや....って」


「うん? キスだよ。恥ずかしいからあんまり言わせるなっ」


「えっ...き...す...って」


「まーいいじゃん。する必要があったし、別にヴィス君にならいいやって思っただけ。でも恥ずかしくて死にそうだし逆に生き残る可能性なくてラッキーかもね」


リゼはおどけて見せた。

窮地の中穏やかな時間が流れる。

最後の瞬間を2人は笑顔で待っていた。


だが、突然リゼの表情が変わった。


「えっ。うそ。まさかそんな!? イヤでもあれは間違いない」


「リゼ...さ...ん。一体...? 」


「ヴィス君聞いて。もしかしたら助かるかもしれない。30mだけ動ける? 」


ヴィスは身体を動かしてみた。しかし激痛が走り動かす事は不可能だった。


「ごめん...無理...」


「わかった。大丈夫。次は私が守るから!! 」


リゼはヴィスの背中側から脇下に腕を入れてヴィスを引っ張る。


「ヴィス君。ごめん我慢して」


"ズリッズリッ"と少しずつヴィスを引きずり、目的の場所を目指す。

降下しながらその光景を見ていた男は必死に逃げようとする二人を見て滑稽だと笑った。


男は地下へ降り立った。そして1歩1歩ゆっくりとリゼ達の元へと進み始めた。

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