【活路を見出せ】
人生というのは本当に都合よく進んでくれない。
魔法属性を授かったと思えば最弱。
魔道具を作って貰えて嬉しくて練習してたのに今は王都が壊滅。救援かと思えば襲われて、何とか倒して師匠も無事では無いけど発見は出来た。そしたらさらに多くの敵に囲まれている。魔力の量を考えてもピンチだ。
さらに相手の中にいる1人は確実に自分より強い。
リゼの実力はまだ未知数だがそこに活路を見出すしかない。
ガングリッドとの修行の成果でもある、冷静な状況把握が今、実践を通して重要性を理解出来た。
「だからこそ。生きて師匠に褒めてもらう!! うぉおおおお」
ヴィスは自身を鼓舞する為の咆哮をあげた。誰か気付いて加勢に来てくれたらと、淡い期待も込めて。
リゼは先程グレイン・アーク所長から受けとった中身を確認していた。
「あぁーー。 所長め。こんな時にお泊まりセットの方を渡してきやがったぁぁぁ」
リゼの悪夢にようなセリフに我が耳を疑う。
「ちょっとリゼ。まさか今の冗談だよね!? 」
「ヴィス君ごめん......マジです」
人は僅かな希望を与えられそれを奪われる時、通常よりも絶望を感じると身を持って学んだ二人だった。
敵は当然待ってくれない。
指揮官らしき深紅を纏った人物が右手を挙げて振り下ろす。それを合図に11人の黒いローブを被った者が一斉に襲いかかる。
一同が火球を放つ。物量で逃げ道を無くす作戦だろう。11人の火球連撃が降り注ぐ。
「ヴィス君! 私の後ろに! 」
ヴィスは急いでリゼの後ろに回り込む。
リゼは着ていた白衣を脱いで、自分とヴィスの被せる。優しい香りに包まれた。リゼの香りだ。ヴィスは窮地にも関わらず頬を赤らめた。
「この白衣は特別なんだよ〜 魔法糸で編まれてるから火球程度なら防げるんだけどね」
白衣に魔力を流す。次の瞬間数多の火球が二人に降り注いだ。狙いを定めて撃っている訳では無いのだろう。滅茶苦茶場所に着弾していた。それでも着実に二人にも当たっている。
「防げはするけど魔力消費もきついね。私って頭脳派だから。それに衝撃はやっぱりきつい」
リゼの魔力がみるみる消費されていく。
「リゼさん。攻撃はできますか? 」
「あー無理だ。私って頭脳派だから。魔道具さえあれば良いんだけど。ごめんね」
「そしたら僕行きます。幸いアイツらが滅茶苦茶やってくれてるおかげで視界が遮られています。師匠が昔言ってました。魔法打ちすぎて視界が無くなるのは馬鹿だって。それが今わかりました」
「ははは。なるほどね! さすが英雄冒険者だわ。悪いけどヴィス君に頼んじゃうね! もし無事にこの場を抜けれたら。うーん。良し! お姉さんのキスあげちゃう」
「リゼさん。良くわからないですけど、なんかそれ言っちゃいけない台詞って気がしました」
おどけて舌を出すリゼ。この笑顔はヴィスを緊張させない為なのか、素なのか判断は出来なかったが、それでも勇気は貰えた。
「では、行きます。3、2、1」
ヴィスは魔力操作で身体能力を強化した。残り一割だが出し惜しみしている余裕は無い。最短で最速に。握り締めたナイフが1人目の喉を切り裂いた。
砂煙と着弾の爆発音でまだヴィスに気づいていない。
1人、2人と着実に始末しする。しかし4人目の首を切り裂いた時、放ちかけていた魔法がその場で破裂した。巻き込まれたヴィスの身体は敵の眼前に放り出される。
勢い良く吹き飛ばされたヴィスの身体は、何回転もしながら地面に幾度と叩き付けられダメージを蓄積する。
突然のヴィスの出現と仲間の死に、敵は焦りながらも、咄嗟にヴィスに手の平を向けて攻撃目標を変えた。
ヴィスもすぐさま体勢を整え、敵にナイフを突き立てる。敵は戦闘訓練をした事が無いのか、驚く事に同士討ちをする始末だ。
雑兵の残数も4人。
「良し。勝てる」
戦闘中において油断は命取りだ。実戦経験の少ないヴィスを責めることは誰にも出来ない。しかしその僅かな隙。判断ミス。先入観。ヴィスは真紅のローブを纏った人物は何もしないと決めつけていた。
真紅のローブを纏った者は、仲間命など歯牙にもかける様子もなく、ヴィス諸共魔法攻撃の餌食となった。
地面から無数の石槍が現れ、全員を串刺しにした。
ヴィスは脅威の反射で直撃は免れたが、左腕を1本の魔法が掠め肉を抉った。
腕を伝い、指先から地面へと血がポタポタと零れ落ちていく。
突然出現した石の槍も、砂に姿を変えて風に乗って消えていく。そこには穴の開いた死骸が4体転がり落ち、ぽっかりと空いた穴から血が流れ出て水溜まりを作る。
雑兵の駆逐は完了したが、それ以上の絶望が今動き出した。




