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 【水撃】

テーブルには複雑な幾何学模様が描かれていて、リゼの詠唱に反応してぼんやりと輝きだした。


リゼが浮遊石と呼んでいた澄んだ青色の石が、光に照らされ、少しずつ溶けていく。


軽薄な言動ばかりのリズの口元は楽しそうに笑っているが、眼の奥には真剣な光が灯っている様に見えた。


溶け出した石はテーブルの模様に沿って意思を持つかの様に動き、円形の窪みに収まった。

リゼはスプーン状の器具を使い、筒型の魔道具の内側へと流し込んでいく。


ヴィスは綺麗だな、と思いながら作業を眺めていた。


工具を使ってネジやら部品やらを付けたり外したりする事暫し。リズは満足した様に声を上げた。声には少し疲労の色が出ていた。


「よ〜し、とりあえず今はここまでかな」


「もう出来たんですか?」


ヴィスが尋ねると、リズは首を振って答える。


「いや、試作品って感じだけどね。だから早速試してみようか。実験場が空いてた筈だから、2人とも付いておいで」


ーーーーーー


実験場は研究所の建物に囲まれた場所にあり、植物園かと思う程の多彩な種類の植物達の間を抜けた、開けた空間だった。


「ちょっと待っててね。今カカシ立てるから」


そう言ってリズが木造の倉庫から木の人形を抱えて持ってきて、地面へと突き立てる。


「さあヴィス君。やってみようじゃあないか!魔道具初体験でしょ?装着型だから扱いは簡単だよ〜」


魔道具は筒型だと思っていたが、どうやら腕に嵌めて使うらしい。

着けてみると、サイズも丁度良い。

先程の作業中にヴィスの腕をベタベタ触っていたが、この為だった様だ。


「基本的に体に魔力を流すのと一緒だよ。腕を通して掌から出せば、自動で発動するから。まずは水を球体にする方だけでやってみよう。このレバーで切り替えるからね。ハイどうぞ!」


背中を押されてカカシの前に出たヴィスは、魔道具の装着された腕を突き出し、魔力を流した。


掌を基点に水の球が生まれる。見る見る大きくなり、人の頭ほどの大きさになった。


「そのくらいでいいでしょ!はい、打ち出して!」


リゼに言われ、前方に水球を飛ばす様にイメージする。


水球は直ぐに水飛沫となって地面に落ちた。


「はい、良し!どうどう?感想は!」


「凄い!いつも通りに魔力を使っただけなのに!でもこれじゃあ使えないよね?」


「ふっふっふ!まだまだだよ?さあ次々!」


そう言ってリゼが魔道具のレバーを動かす。


「コレが浮遊と水球の両方。初の組み合わせだから、あんまり沢山魔力流しちゃ駄目だよ?」


「うん、わかった!」


言われた通り慎重に魔力を流すと、先程と同じ様に水球が出来た。


「カカシに打ってみて!」


リゼの声に促され、水球を前方へ解放する。

水球は形を保ったまま進んだが、カカシに届く前に飛沫になってしまった。


「あー、やっぱりそうなるよね〜。という事で、とりあえず私の想定通りですっ!」


「ええ?どういう事?」


「細かい説明は省くけど、今見た通り、水球の飛ばせる距離はヴィス君の足で5歩分くらいです!今はそれ以上は無理です!」


何故か胸を張って説明するリズだが、ヴィスには期待外れであった。


「でもまだ終わりじゃないよ。今度はカカシから3歩だけ離れて撃ってみて」


ヴィスが首を傾げながら水球を撃つと、カカシの頭に当たり、そのまま頭の部分に水球が留まっていた。が、さほど経たないうちに球が崩れて、単なる水として落下してしまった。


「じゃあ次、カカシの目の前で撃ってみて」


今度はカカシの頭を包んだ水球は、それなりに長く留まっていた。


それまで黙っていたガングリッドが口を開く。


「つまり、ヴィスに近ければ水球が留まる時間が長く、離れると直ぐに水に戻るという事かのう?」


「惜しいね、パパさん!ちょっと違うんだ。これは水球の移動距離の問題だね。移動距離が短いなら、包んでる時間が長い。逆に移動距離が長いと、当たる前に水に戻っちゃうってワケだね!」


ヴィスは少し混乱してきた。


「えーっと…」


「浮遊石の力は移動中に消費されちゃうって事だね。対象に到達すれば、水そのものの力も合わさって、水球状態を長く保ち易くなる。水って何かにくっついたり、丸くなろうとしたりするみたいなんだよね。葉っぱに水滴が着いたの見てみると、丸くなってるでしょ?でね?その性質から考えられる…」


リゼが2人にお構いなしで早口に喋るが、ガングリッドが手で制してそれを止める。


「つまり、近くでぶつければ良いと言う事じゃろう?」


「そうだね!至近距離でぶつければ、窒息するくらいの時間は球状を保てるよ!ヴィス君、かなり鍛えてるでしょ?体もまだ小さいから、相手の懐に飛び込んで撃てば、全然使えるんじゃない?」


「そっか、なるほど!」


「あ、レバーを奥まで動かせば、機能は止まるからね。装着しっぱなしでも、使い分け出来るようにしておいたから」


その後、流す魔力量を増やすなどを実験してみたが、大きさは最大で大人が両手で抱えるくらいの水球が限界だった。リズ曰く、浮遊石の量とか質の問題らしかった。


ようやく落ち着いた頃には、ヴィスもリズも少し疲れが出ていたので、3人で研究所中庭の庭園でお茶をするのであった。


いずれ魔道具無しで使える様になる可能性もゼロではないそうで、イメージの為に水球に名前を付ける事になった。

今後もバリエーションが作れるかも知れないと言うリズのアドバイスに従って、二分節の名前に決まった。


「水撃・泡」である。


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