【魔道具の可能性】
ヴィスとガングリッドは魔道具研究所前に到着していた。
ガングリッドが門兵に何かを話すと、そのまま奥へ案内された。
「師匠。知ってる人? 」
あまりのスムーズな通行許可にさすがガングリッドだと少し誇らしかったがすぐさま否定された。
「どうやら、天才にはワシらの動向などお見通しなようじゃ。ですな? 教授殿」
「あははははは! 良く来たね! 君がお父さんと来てくれるって信じてたよ、ってあれ?なんか見たことある?......まーいっか! さぁさぁ研究室までおいでよぉ」
昨日と変わらないマイペースなリゼだったが、その自由さがヴィスを惹き付けた。
「さぁさぁ入った入った! ここが研究室だよ! それでえーっと名前なんだっけ!? 」
「あっ、ヴィスです。あと父のガン....」
「あーそうそうヴィス君ね! それで君水属性なんでしょ!? 昨日言ってたもんね!? 」
「あっ、はい。だからこれから師匠に無ぞく..... 」
リゼはガングリッドには興味が無いようだった。ヴィスの話しも最後まで聞かず、自分のペースでどんどん話を進めていく。
「いいね!いいよ!すっごくいい! 君ほどの魔力量をもった子初めてだよ! それが水属性なんて最高すぎっ! 私が作った魔道具にピッタリのモルモ......じゃなくて人材!! それでね、君はどんな魔法使いたい? おねーさんに言ってごらん! 」
考えたこともなかったが、どんな魔法かと改めて問われると答えに迷う。
ヴィスは顎に手を当て、自らの欲に問いかける。
その結果思わず出た答えが。
「うーん。なんかどっかーんてやつ。えっあれ。えっと何言ってんだろ」
「はっはっは。いいじゃん!どっかーんてやつ! それ最高だよ! じゃあ、どっかーんを考えてみよ」
ヴィスは呆気に取られた。思わず笑われるかと思ったのに、リゼは真面目に考えてくれていた。
自由でありながら、魔道具に愚直。
ヴィスもそんな彼女に応えるべく水魔法を使い闘っている自分を思い描いてみた。
しかし水を戦いに流用するというのは想像以上に難しい。
「難しいよ、例えば川みたいに沢山の水を流せたら? 例えば氾濫した川みたいに」
「おーいいね! でもその量の水出したら君が魔力枯渇で死んじゃうねぇ。うーん川か。川、かわ、カワ、水難、事故、溺れて。......うん? 溺れて!? 。そうか生き物は呼吸してるから、そもそもそうか。イヤでも、それなら。うん。そうかそうか」
リゼは何かを思いついたみたいだった。
空中に何か文字のような物を書いていた。
頭の中を整理しているのか、何かを計算しているのか、変人、もとい天才が何を考えているかは凡人には理解出来ないのである。
「よし! そうだよ! これならいける!! じゃあ君さ、水出してみて! 」
言われたままに魔力を手の平に集中させ水に変化させた。誰に習った訳でもないのだが、属性判定後には無意識でできたのだ。
まるで初めから扱えたかのように理解出来た。
手の平から水に変わった魔力がちょろちょろと現れて床へ流れ落ちる。
「おぉいいね! 形状変えたり、留めたり、浮かせたりとかできる? 」
魔力を水に変えるのは理解出来るのだが、水を"操る"のは全くもって理解できない。
「現状は魔力を水に変えて垂れ流すだけ。それならまず"アレを"実現するには形状変化して、そのままコントロール出来ればいいんだから、あの魔道具に操作の魔石で。うん!! よし、できる!! 」
リゼは部屋の奥に消えていった。
「いやはや、ワシも初めて御目にかかったんじゃが噂通りの女史じゃのぉ」
「強烈だよね。でもなんか楽しいけど」
そんな話をしていると奥に消えていたリゼが何やら抱えて戻ってきた。
「お待たせ!! この魔道具をベースにこの魔石を配合してヴィス君専用の魔道具作っちゃう」
「えっ!? 作るの!? 」
「そりゃそうでしょ? この魔道具は流れ出す水を球体にして留める魔道具なんだ。んでこの魔石が浮遊石って言って物を浮かせるの。二つを合わせれば、球体上の水を浮遊させて操れるようになるはず。それでね、生物っていうのは大抵水の中じゃ呼吸ができないでしょ? つまりその作った水球を操って顔を覆ってしまえば......っね! 」
「なんともえげつないこと考えるもんじゃ。じゃが名案かもしれん」
思わずガングリッドが口を開く。
「でしょでしょ! さすがヴィス君のパパ! じゃあサクッと作っちゃうね」
二つの道具を机に並べて置き、呪文の詠唱を始めた。




