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 【シュタイン・リーゼロッテ】


「あはははっ!やっばい!ミスったあはははは‼︎」


ヴィスが慌てて建物の外へ出ると、図書館前の広場の中心で、白衣を着た若い女性が高笑いしていた。


広場には等間隔に、円を描く様に筒状の装置が置かれていて、そこから光の球が打ち出されては、爆発して周囲に轟音と振動を響き渡らせている。


避難するように建物から出てくる来館者達。

図書館の司書と思われる人々も出てきたが、目の前の光景を見て怒り心頭の様子である。


「またあの女か!騎士団は何をやっているんだ‼︎」


「とにかく避難だ!来館者の安全を最優先しろ!」


「騎士団、まもなく到着するそうです!」


そんな言葉が飛び交う中、ヴィスは何故かその女性から目が離せなかった。周囲は大惨事だというのに、彼女は実に楽しそうだ。逃げ惑う人々を見てもお構いなしにゲラゲラと笑い続ける。


「いやー、ゴメンゴメン!まさかこんな反応になるとは!あはははは!はぁ〜…ん?」


ヴィスが唖然と見つめていると、彼女もこちらに目を向け、笑うのを止めた。目を見開き、もの凄い速さでこちらへ駆けてくる。

ガシッとヴィスの両肩を掴むと、獰猛とも言える笑顔を向けてきた。左目の片眼鏡で覗き込むようにこちらを見る。


「君、魔力量凄いねぇ!しかも何それ。その本、水魔攻察じゃん!何々?その歳で水魔法研究者?ちょっとお姉さんと仲良くお喋りしようか!」


ヴィスは反射的に思った。これは関わってはいけない類の人物だと。


「あ、いや僕は…」


ヴィスが何か言うのも待たず、彼女はもの凄い早口で捲し立てる。


「あ〜、あの爆発?あれは試験運用だよ。いや、爆発するとは思ってなかったんだけどね?ホントは結界発生装置で、それはもう美しい結界が図書館広場に構築される筈だったんだよ。あ、どっちにしろ燃料魔力が無くなるまで停めようがないから。ほっとくしかないの。だからいいでしょ?お姉さんとお茶しましょ?いいわね?ほら行くよ!」


そう言うと、彼女はヴィスの体を抱えて跳び上がった。文字通り、跳び上がったのだ。図書館の外壁を蹴り、あっという間に市街地へと飛翔する。


ヴィスは空から見る街の光景に圧倒された。単純に綺麗だと思い、思わず呟く。

「凄い…」


「そうでしょう?私が作った魔道具なんだ。あ、違法だから普通はこんな景色見られないんだからね?」


彼女は街の屋根を飛び跳ねながら楽しそうに語る。


ヴィスは極端な上下運動に少し酔いながら、ようやく尋ねた。


「あの〜、お姉さんは誰なんですか?」


「わたし?私は魔道具開発者のシュタイン・リーゼロッテ。みんなリゼって呼ぶよ。君は?」


「…僕は、ヴィスです。昨日、田舎から師しょ…父と出てきたんです」


「ほうほう。では続きは店の中で話そうじゃないか。ああ、お金は大丈夫だよ。お姉さんが奢っちゃうから!」


と言って着地したのは、木造の年季が入ったカフェの前だった。


ーーーーーー


「へぇ〜。じゃあバルト渓谷から、わざわざ森を抜けて来たんだ。強烈なお父さんだねぇ」


「そうなんですよ。僕、街道があるなんて知らなくて」


「君のその世間知らずっぷりも、よっぽどだけどねぇ」


「え〜?ひどいなぁ」


話してみるとテンションがやたら高いだけで、リゼは気さくな人物の様で、ヴィスはあっという間に打ち解けてしまった。


彼女は自分の事も包み隠さず話してくれているみたいであった。


シュタイン・リーゼロッテ。16歳。王立魔道具研究所の研究者であり、なんと教授。12歳で飛び級で研究者になり、15歳で教授に抜擢。天才少女と呼ばれるが、最近は(何故か)変人教授と呼ぼれる事もあるらしい。


知性的な片眼鏡と白衣の下は、なんとショートパンツにチューブトップ。随分と露出の多い格好だが、本人曰く、動きやすいからだそうだ。

冒険者登録もしていて、必要な素材があれば自ら調達する事もあるそうなので、その辺りの事情もあるのかも知れない。


「で、本題なんだけどさ。その本、興味あるの?」


「ああ、これですか。図書館から勝手に持って来ちゃった。後で謝らなきゃ」


「大丈夫大丈夫!どうせ誰も読まないよ、そんなマニアックな本。水魔法

の攻撃活用なんて、普通は考えないから」


「やっぱりそうなんですね」


「まあ私はそう思ってないけどね!六覇天の中でも記録が残ってないのにはむしろ浪漫を感じるね!失われた水魔法の活用!君もそうなんじゃないかい?」


「いや、僕は属性鑑定で水って出たばっかりで。魔力量が多いから、何か出来ないかなって思っただけで」


「そう!魔力量ね!いやー君のは凄いよ。正直見た事ないよ。メジャーモノクロが壊れたかと思ったもん!あ、この眼鏡の魔道具の事ね」


ガングリッドはヴィスの魔力量が多い事にすぐに気付いたが、普通は魔道具等を使わないと判らないらしい。


「それだけ多かったら、絶対何か出来るよ!時間があったら私の研究室においで。あ、これ連絡先と住所ね」


渡された紙には金色の文字で【王立魔道具研究所 第3位階 シュタイン・リーゼロッテ】とあり、研究所の住所も書いてあった。


「ありがとう。父さんに相談してみるよ」


「そうそう!お父さんと一緒においで!直ぐにおいで、何だったら今から…」


その時、カフェの扉が開き、リゼと同じ白衣の白髪の男が入ってきた。長身で体つきもしっかりしている。年齢はガングリッドより少し若いくらいだろうか。立っているだけで威厳を感じる。


「あ、やばい。ごめんヴィス君。また今度ね」


男を見るとリゼは財布からテーブルに硬貨を置き、コソコソと扉へ向かう。


が、男に見つかり摘み上げられて外へと連れていかれてしまった。


ヴィスは嵐のような人だったなぁと思いながら、置かれた硬貨を持って会計に向かう。


会計は丁度ピッタリだった。


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