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生き甲斐


第3話【生き甲斐】


この世界において義務教育という概念がない事も驚いた。

村長の話では街まで行くと学舎があるそうだが、それも選ばれた者しか入学できないという。


貴族や、高難易度の入学試験を通過できた一部の者達だ。

幸い俺には前世の記憶があり、大学もしっかり卒業した。ある程度の知力はあるつもりだ。

しかし懸念点はある。この世界と元いた世界はあまりにかけ離れている。


いつか機会があれば試験にも挑戦してみたいものだ。

そもそも街に行けるようになるには年齢制限があるらしい。

それが世界の常識か村の掟なのかは定かでは無い。


いつかの日の為にも日々の訓練は怠らないようにしている。

実は数年前の事だが村の裏手で遊んでいた時に怪我人を助けた事がある。

その人物は、冒険者だと言っていた。


子供ながらに(もちろん中身はおっさんだが……)心が躍ったのを覚えている。

だってファンタジーじゃないか。漫画の世界に自分は存在している。

そしてその冒険者は怪我が治るまで村に滞在していた。


その際に魔法についても聞いていたのだ。

村長は教えてはくれなかったが、冒険者は色々な話を教えてくれた。

その中に魔法訓練の話があったため密かに日々の日課としていたのだ。


両親にバレるわけにもいかない。

家の裏手でこっそりと訓練していたそんな時、自分を呼ぶ声がする。


「ヴァイス!! どこにいるの? ご飯よ」


母の声が聞こえた。ヴァイスとはこの世界での俺の名前だ。

なんかカッコいいと思い気に入っている。


「はーい ここにいるよ」


できる限り大きな声をあげて返答する。

駆け足で家に戻ると両親と我が最愛なる日の女神に愛されし妹が、太陽を上回る眩き笑顔で帰宅を迎えてくれた。


街の学校に行くと天使たる妹に会えなくなる。

いっそ自宅警備員でも目指すか!? と本気で悩んでいるのは秘密だ。

家族揃って昼食を食べる。


片付けを済ますと父が声をかけてきた。


「ヴァイス。これから畑の手入れがある。お前も準備してくれ。今日は大忙しだぞ」


「はい! すぐ支度します」


颯爽と身支度を整え大好きな妹のおでこにキスをする。

これぞ兄特権。

初キスが妹。何が悪い。家族だ馬鹿野郎。


畑に着くと早速作業に取り掛かる。


「ヴァイスは雑草を抜いてくれ」


「うん」


畑の端に向かい、体を屈ませる。実はこの瞬間も訓練が可能なのだ。

身体に魔力を巡らせて動きをカバーする。

鍬などを振るう場合には道具にも魔力を通わせる。


雨によって固まった土なども溶けたバターのようにサクサク掘る事ができる。


訓練を始めた頃はすぐにバテていたが今では数時間でも続ける事ができる。

結果として大人顔負けの仕事量をこなせているのだ。


前世の仕事は苦痛でしかなかったがこの世界での労働は生き甲斐と言える。

神か仏かわからんが、転生させてくれてありがとうと心の中で手を合わせるのだった。


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