【中央大聖堂】
王都ゼレンデルグには教会が4つある。内3つは礼拝や、地域の行事等にも使用される。
王都だけあって、3つの教会もそれ一つで通常の街の大教会程の大きさを誇るが、中央大聖堂は群を抜いて巨大で、そして荘厳である。
中央の王城を囲む貴族街、市場地区、平民街と順に広がっていく地区の輪を白亜の外壁と塔が跨ぎ、それ一つで小さな街程もある規模だ。
そもそも、王都ゼレンデルグの名前からして『女神ゼレンディア』の名前の後に『建国王グランデルグ』が入るのだから、その権勢は推して知るべしである。
その大聖堂の一画、市場地区からの門を入ったばかりの場所で、ヴィスは思わず叫んでいた。
「うっわ〜‼︎すっごいね師匠‼︎」
「これこれ。あまり騒ぐでない。周りに迷惑じゃろうが」
と窘めるガングリッドだが、興奮するヴィスを見て若干嬉しそうである。
巨大な柱の並ぶ入り口を抜けて建物に入ると、大量の窓口に人々が並んでいた。
市場地区の入り口だからだろうか。並ぶ人々も個性豊かである。
修道女や商人、町民以外にも、柄の悪いゴロツキみたいな人間まで居る。
そして、時折服の裾から動物の尻尾が見え隠れする者まで居た。
「師匠、あそこの人、尻尾があるよ?」
「おお、獣人じゃな。この国では珍しいのう」
「へぇ〜!色んな人が居るんだねぇ」
「そうじゃの。世界は広いからのう。他にも様々な種族がいるわい。ま、この国では大半が人族じゃがな」
そんな話をしているうちに、2人は窓口の1つに辿り着く。
カウンターに身綺麗な青服の修道女が座っていて、にこやかに話しかけてきた。
「ようこそ中央大聖堂へ。本日はどの様なご用件でしょう?」
「この子の属性判定を頼みたい」
ヴィスに目をやり、修道女は戸惑った様子を見せる。
「えっと…すみません。その子の年齢は?」
「8歳になる。成人前の規定は知っておるが、例外枠で頼みたいんじゃ」
「失礼ですが、三等位以上の方の推薦状はお持ちですか?」
「うむ。これで良い筈じゃ」
と言ってガングリッドが渡したのは、王都の門で見せていたカードだった。
カードを見て、修道女は血相を変える。
「大変失礼致しました!ご案内いたしますので、少々お待ちください!」
といっても、奥の扉へと消えてしまった。
程なく現れたのは、白い修道服に美しい金髪、肌の色も白磁の様な白さの女性だった。
「お待たせいたしました。修道長のアンリと申します。ご案内致しますわ」
通された奥は細長い通路で、両脇に点々と木の扉が並ぶ中を3人は歩いていく。
「修道長が自ら案内とは、恐縮じゃな」
「いえいえ。中央魔法騎士団の元副団長、『砲撃のガングリッド』様にお会いできるとは、こちらこそ光栄でございますわ」
「昔の話じゃがな。もう田舎で隠遁生活しとるジジイじゃよ」
「ご謙遜を。しかし、ご子息がいらっしゃったとは初耳ですわ」
「まあ色々と事情があってのう。すまんが、あまり詮索せんでくれるかのう」
「ああ、それは失礼致しました。以後気を付けますわ」
そんな会話をヴィスは大人しく聞いていたが、内心では大いに驚いていた。
魔法騎士?副団長?『砲撃のガングリッド』?凄そうな単語ばっかり出てくる!師匠はやっぱり凄い人だったんだ!
そんな事で頭がいっぱいで、目的の部屋に通されるまで、自分の属性判定の事も忘れてしまっていたのだった。
部屋の中央には両手を広げた大きな女神像が祀られていた。
像の周囲は池になっており、建物の中だというのに清らかな水が流れ、水面には美しい桃色の花が浮かんでいる。
水面にも足場があり、女神像の正面に続いている。
そこには、長方形の台座に人の頭程もある球状の水晶の様な物が飾られていた。
アンリがヴィスへと説明する。
「では、ここからはお一人でお進み下さい。両手で宝玉に触れれば、属性の判定が行われますわ」
ヴィスは頷くと、ゆっくりと台座へと進んでいった。




