第25話 【王都 ゼレンデルグ】
王都までの道のりは長かった。
熊の魔物程の強者は出てこなかったが、それでも道中は気の休まる時間が無かった。
そもそもの話として、常に周りが木々に囲まれている森で、手持ちの地図や方位を知る方法として天体の方向など様々な情報を駆使してようやく辿り着ける。知識無くして冒険は不可能という事も知ったのだ。
王都の門が視界に入った時、思わず泣きそうになってしまった。
門の前では検閲を受ける商人の馬車などを筆頭に多種多様な人々が列をなしていた。
ガングリッド達も列に並び、入国審査の順番を待つ。その際一つ疑問が芽生えたので、ガングリッドに質問してみる事にした。
「師匠。 この人達ってみんな師匠みたいに強いの? 」
「うん? どうしてじゃ? 」
「だって荷馬車やあんな軽装でもここまで辿り着いてるんでしょ? 相当の実力が無いと僕達みたいに森を抜けれないよね? そもそも馬車とかどうやって来たの? 」
ガングリッドは鳩が豆鉄砲を食らったような表情を見せた。
「何言っとるんじゃ? そんなもん街道を通ってるに決まっとるじゃろ。 街道には冒険者や兵士などが見回りをしとるんじゃ。魔物が出た所で問題なんぞほぼ無いわい」
今度はヴィスが続けて目をぱちくりさせて驚いていた。
「えっ? 街道? どういう事? 僕達魔物と戦ってそれで野営して......」
「そんなもん修行に決まっちょる。そもそも街道通ってれば二日で着いとるわい」
「えーーーーーー。じゃああの方向を知る知識とかなんだったの!? 」
「そんなもん方位を知る魔道具だってあるわい。でもな、もし冒険の途中で魔道具が壊れたらどうするんじゃ? 良いかヴィスよ。道具に頼ってばかりではいかん。知識は生命線じゃ。魔力、体力、智力、精神力。様々な力を鍛えるんじゃ。それが生きるコツじゃ」
この道中全てが修行だった事を知ったヴィスは、改めてガングリッドのスパルタに恐れ慄いた。
それと同時に、ガングリッドの偉大さに少し誇らしく思えた。
「そっか。なんかすっごおおおおおおく大変だったけど、これからも頑張るよ! 」
ガングリッドは笑顔でヴィスの頭を撫でた。
「帰りはヴィス一人で頑張るんじゃ。ワシは見てるだけにするからの。一ヶ月以内には家に帰りたいもんじゃ」
絶句とはまさにこの瞬間を表現すべき言葉だろう。ガングリッドの真意が読み取れない。
本気で言っている可能性も考慮しておくべきだと考えた。
「確かにこれは精神力鍛えられてるよ」
ヴィスはポツリと愚痴をこぼした。
順番は進み門兵の前まで来た二人。
ガングリッドは何やらカードのような物を見せると何かを伝えていた。チラリと視線をヴィスに向けるとすぐさまガングリッドに向き直し、敬礼を行う。
一分にも満たないやり取りで入国する事ができた。
50メートル程続く門をくり抜いて作られたトンネルの道を進むと城下街が現れた。
それはヴィスが今まで見た事無い壮大な景色だった。
レンガを積まれて造られた家々。
先程見ていた城壁街の道とは違い、城下の道はレンガが敷き詰められて道を形成していた。
「うわぁー。すごい」
絶句するヴィスを見てガングリッドは、自分が褒められているかの様に喜びの笑みをこぼしていた。
「ヴィスは記憶がないからのぉ。もしかしたら来ていた事もあったかもしれん。何か記憶を戻すきっかけになる物があればいいんじゃが...... 」
「それもそうだけど、僕はやっぱり魔法属性を早く知りたいよ!! 」
「それは明日じゃ。まず今日は宿を決めて休むとしよう」
ヴィスは城下に目を奪われていた。しかしガングリッドは迷う事なくスタスタと道を進み、あっという間に宿へ到着してしまった。
「師匠はもしかしてこの辺詳しいの? 」
「まぁ、人並み程度じゃ。たまに調味料の買い出しなどで城下には来るしのぉ」
宿の扉を開けると、“カランカラン”と真鍮製のベルが音を奏でて来客を知らせる。
「いらっしゃいませ」
扉を入って直ぐにあるカウンター内には中年位の女性が一人で立っていた。
ガングリッドを見ると女性は驚きの表情を浮かべた。
「あらぁ、珍しいお客様だこと。お久しぶりですね、ガングリッド様」
「はっはっは。女将も息災の様で何よりじゃ」
「そちらのお連れ様は? 」
ガングリッドは少し返答に悩みながら、照れくさそうに、“ワシの子じゃ”と女将に伝えた。
女将も明らかに動揺を隠しきれていなかった。
でも僕は少し嬉しかったのは秘密だ。
その後金銭のやり取りを終えて部屋の鍵を受け取った。部屋に着くとベッドが二つ並んでいた。
着替えてベッドに横になると、夕食を食べていないのにも関わらず睡魔に襲われ、意識が消えた。
翌朝、太陽の光が窓から差し込む。
久々のベッドで快適な睡眠を取れたおかげで身体の疲れも全回復できた。
今日は待ちに待った魔力属性を調べる日。
隣で大口を開けているガングリッドを叩き起こし、教会に向かう準備を整えるのだった。




