第23話 【冒険者の心得】
バーグラードッグの内臓を取り出して皮を剥いだ。
そのまま木を突き刺して火にかける。
ワイルドといえば聞こえは良いが、あくまでもエネルギー補給のための食事。
「なんか味気ないよ師匠」
「馬鹿モン。旅というのは何が起こるかわからん。家のように調理なんぞできんわい。今回も崖上にいい場所があったから火を使えたが、場合によっては煙で魔物を呼び寄せる事になる」
「あっ......そっか。じゃあもしかして今回は運がいいだけ? 」
「そうじゃ。持ってきた燻製肉しか食えん時もある。場合によっては飯抜きだってのぉ。それが旅というもんじゃ」
ガングリッドは旅人としての心得をヴィスに伝えていく。家で行う修行とは異なり、現地で伝える情報は鮮度が違う。
ヴィスもガングリッドから視線を外す事なく真剣に聞き入っていた。
時折、薪が“パチパチ”と火花を弾き飛ばして音を立てる。
青白い煙が夜空に立ち上る。
ヴィスはいつの間にか眠りについていた。
ガングリッドは火を消すと、そっとヴィスに毛布を掛けた。
「どれ、結界は張っとかんとなぁ。<ヴェールウォール>」
ガングリッドとヴィスを覆い隠すように結界が展開された。結界の外から中を視認しにくくする効果もある魔法だ。
ガングリッドも魔法の展開を確認すると静かに瞼を下ろした。
ガングリッドの大声でヴィスは飛び起きた。
「おいヴィス!! 構えるんだ」
目の前には両腕を高々と振り上げて二足立ちをする巨大な魔物がいた。
ガングリッドに敵意を剥き出し、眉間に皺を寄せながら牙を見せつけ涎を垂らしていた。
この魔物はガングリッド達を餌と認識しているようだった。明らかに別格の魔物。ヴィスも見たことの無い熊の魔物だ。
「師匠!! こいつは!? 」
「話は後じゃ。まずは戦う準備じゃ。ワシが気を引いてる間に準備じゃ」
ガングリッドは熊の魔物に向かって襲い掛かった。
魔物もすかさず応戦する。
ヴィスは荷物の中から武器を拾い、身体に魔力を巡らせた。
それと同時に実践経験の無さを悔やんだ。
もしガングリッドがいなければ即死していただろう。
気を抜いてはいけない。ガングリッドの教えが胸に強く刺さった。
気を引き締め、ガングリッドに加勢する為に走り出した。
熊の魔物が放つ一撃にガングリッドは吹き飛ばされ、駆け寄るヴィスにぶつかってしまった。
「馬鹿モン。もっと周りをよく見るんじゃ。気合いなんぞいらん。落ち着け。観察するんじゃ」
ガングリッドはそれを早口で伝えて、身体を起こし、再び魔物の元へ向かっていった。
ヴィスは言われた通り一旦落ち着こうと深呼吸を加え、まずは戦況を観察することにした。




