スローライフ
第2話【スローライフ】
妹が無事産まれ、俺は7歳になった。
俺の家族の住んでいる村は、のどかで良い村だ。
文明が発達していない世界なのか、それとも単なる田舎なのかは判らないが、畑や果樹園の収穫物、そして近くの川で獲れる魚を食べて暮らしている。
山林に囲まれているので、木を切って薪にして冬を乗り越える。
転生前の日本に比べて生活の為に費やす時間が殆どで、娯楽という娯楽も無い。
5歳くらいから水汲みや収穫の手伝いをするという、なかなか子供の身体には厳しい部分もある。
が、ブラック企業でこき使われていた俺にとっては天国の様なスローライフだった。
と言うか、子供の身体のせいなのか、体力はどんどんつくし、前世でデスクワークばかりだった俺にはむしろ楽しいくらいだった。
そして何より…
妹が可愛い!
両親も素朴ながらけっこう美男美女である。
かく言う俺も、初めて水面に映った自分を見た時はなかなかイケメンじゃないか?と思ったが、妹は別格だ。
身内贔屓?いやいや、そんな事はない。マジで天使。将来はさぞかし美人になるだろう。
手が空く度に、ついつい様子を見に行ってしまう。母親からも笑われてしまった。
とまあ、平和な暮らしを謳歌していたのだが、実は俺から見ると、かなり奇妙な事がいくつかある。
まず村の周辺の森に出る獣の中に、サイズが異常にデカいのが居るのだ。
狼みたいヤツだが、体だけで4〜5メートルくらいある。
稀に村まで入ってくる事もあり、村民総出で撃退したりする。
それはまだ良いのだが、奇妙なのは、その撃退方法だ。
主な撃退方法は、村長が手から放つ野球ボールくらいの火の玉なのだ。
そう、この世界には、魔法と呼ばれるものが存続するのだ。
初めて見たのは4歳の時。家から絶対に出るなと言われ仕方なく窓から様子を見ていたのだが、ムキムキマッチョな村長が放った火の玉は狼の顔に命中し、見事に撃退していた。
後で村長に教えてくれと強請ったら、「子供にはまだ早いし、そもそも適性があるかも街に行かないと判らん」
と、にべもなかった。
しかし、誰にも言ってはいないが、俺には多分適性があるのだ。
重い物を持ち上げたりする時に、偶に体の一部がポカポカして、楽に物を持てたりする事があるのだ。
俺はこれを魔力みたいなものだと思い、自分の意思で自在に使えないかと試行錯誤しながら、毎日を過ごしているのだった。