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自惚れと喪失



妙な高揚感に覆われている。

圧倒的強者だったはずの魔物が背を向けて逃げている。

年端も行かぬ7歳の子供に。


妙な加虐心が生まれてしまう。

先程まではビルよりも巨大に見えた体躯が、犬ほどに感じてしまう。


訪れる死を待つだけの時から一転し、勝利を確信した脳は、麻薬的な物質をを大量に分泌し始めたようだ。身体能力はいつもの数十倍以上に上昇している感覚がある。

逃げる蜘蛛にお遅れをとることなく追跡できている。普段の魔力による強化だけでは難しかったかもしれない。


「よっし! どこまでも着いてってやるよ! 鬼ごっこだ! 」


逃げる魔物をわざわざ追いかける必要が無いのは冷静であれば理解出来る事だ。

家族の安否も未確認であるならば、本来優先すべきはそちらだろう。


自分を強者と自覚した愚かな若造が無策で追いかける。


ーーーーーー

知性を持った魔物は勝利を掴むために河へ走る。


河まで逃げ切れれば蜘蛛は勝てる自信があった。

しかし、あの子供が本気を出せば一瞬で追いつくはずだ。

奴は今、楽しんでいる。圧倒的強者が弱者を狩る行為を。

それは自信も同様の嗜虐心や加虐心を持ち合わせるからこその推測だった。


そしてその賭け勝った。

眼前には河がある。目的の河だ。


小僧は未だ余裕の笑みを浮かべたまま付かず離れずを維持して追跡してくる。

多分私が恐怖におののき、生を懇願し醜く逃げているように見えていることだろう。


(若い。経験が浅い。助かった。私の勝ちだ)


河へ飛び込むと同時に小僧も飛び込んできた。

タイミングを合わせ、魔法によって操作した巨大な魔蛇を呼び寄せた。


何かあった時の予備として河の中に潜ませておいたのだ。

人間は水の中では無力に近い。今まで追ってきた奴らも同じだった。


子供水の中で魔蛇に巻き付けられ水中へと沈められた。


ーーーーーー

蜘蛛が河に飛び込んだ。

地面を強く蹴り、一瞬で飛び込んだ蜘蛛に追いついた。

なぜ飛び込んだのかは分からないけど、河の中では身動きが取れないはず。

死を確信した哀れな蜘蛛の愚策にトドメを刺す決意を固め、飛び込んだと同時に殴りかかった。


しかし水の抵抗もあり、蜘蛛に拳が触れることはなかった。それどころか身体中を強く締め上げる何かが巻きついている。


「ぐぼぁ。へび......」


魔力で肉体を強化しているおかげで圧死はせずに済んでいたが、呼吸については解決できなかった。

予期せぬ出来事に動揺してしまい、水を大量に飲み込んでしまった。


肺に水が入ってしまった。

意識が強制的に奪われる。

身体が陸に上げられた魚のように痙攣を始めるのがわかった。


意識を奪われると同時に魔力操作が出来なくった。魔蛇に締め付けられた身体中の骨が音を立てて砕けていく。

最後の記憶はそこまでだった。



「おぉ、目を覚ましたか!? ボウズ!大丈夫か!? 」


「つっ......あれ、ここは? うぐぅ」


起き上がろうとしたが身体中に激痛が走る。


「おい! 無茶しちゃいかんよ。 ボウズは身体中の骨と内蔵がぐちゃぐちゃじゃったんじゃ。運良く治癒魔法を掛けれる高名な僧侶の方が近くに居たおかげで一命を免れたとこじゃ」


「えぇ、あ、なんで? あれ、そもそも僕はなにを? 」


自分の名前もなぜここに居るのかも分からない。記憶が根こそぎ抜け落ちていたのだ。


「まさかボウズ、記憶が無いのか」


ヴァイスは力を絞り出して一言"うん"と声を出す。


「まぁ、失った記憶も突然戻ることだってある。ここは何も無いが静養には持ってこいじゃ。身体が癒えるまでここで寝てるんじゃ。話はそれからじゃ。わしゃ、町まで行って僧侶様を呼んでくるから寝ておくんじゃ」


そう言い残すとガタイのいい口ひげを生やした老人は家を出ていってしまった。


どういう状況か分からないが今は身体中に痛みが走る。寝る以外何も出来ないことは理解出来た。

瞼を閉じて眠りについた。

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