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戦闘と高揚

ぶつかったのは、遊びでよく登っていた木だった。


「ああ…ごめんよ…」


俺は木に謝る。


奇妙な感覚だった。樹木が倒れる程の勢いで激突したのに、体は痛くない。


さっき迄の恐怖が嘘の様に、頭が冷えている。しかし、体は熱い。


俺は蜘蛛の方へ向き直り、構える。


落ち着け。落ち着け。

もう一度だ。


さっきは向きが良くなかった。

自分の力も把握していなかった。


イメージするんだ。

蜘蛛に近づく。

多分、一歩で充分。

そこで、正拳突き。というか殴る。


よし。


俺は地面を思い切り蹴り、蜘蛛へと踏み出す。


が、今度は蜘蛛に体当たりする形になってしまった。


蜘蛛の巨体が地面へ転がる。

勿論、俺も転がる。だが痛くない。


蜘蛛は直ぐに起き上がる。しかし、動きが鈍い。


…あれ?これ、イケるんじゃね?

効いてるんじゃね?

ひょっとして、攻撃力はあるけど防御力は無いってヤツ?紙装甲的な?


見掛け倒し的な?実はそこまで強い魔物じゃないとか?


よし、もう一回だ。


再び地面を蹴る。今度は殴るというより、タックルするつもりで踏み出した。


今度は狙い通り成功し、蜘蛛が後方へ吹き飛んだ。


ヨロヨロと体を起こす蜘蛛を見て、俺は確信した。


効いている。

これは、戦える。というか、勝てるんじゃね?


「ふ、ふふふふふ、、ははははは‼︎なんだ、やれるじゃないか‼︎」


思わず笑い声が出る。


後から思い返せば、俺は調子に乗っていたのだろう。自分の力に酔っていたのかも知れない。


蜘蛛は俺に背を向け、逃げ出した。

この時追っていなければ、結果は違ったのかも知れない。


だが、自分の力を確信していた俺は、家族の事も忘れて、夢中で追いかけてしまったのだ。



ーーーーー


ここ数日の嫌な予感が的中した。アリアを抱えたサクルを見つけたとき、そう思った。


泣きながら話すサクルは、ヴァイスが1人魔物を引き付けて残ったと言った。



ヴァイスは、父親の自分から見ても異常な程に聡い子だった。

力も強かった。辛い筈の畑仕事にも、家の手伝いにも、文句の一つも言わなかった。


出来すぎた子だった。周りには子煩悩だとか言われたが、そんな生優しい話ではなかった。


サクルから話を聞いた瞬間、何故残してきたのかと一瞬怒鳴りつけそうになってしまったのを、辛うじて飲み込んだ。

きっとヴァイスの判断は正しいのだろう。


だが、それでも騎士団が追う様な魔物を相手にするのは、無茶どころの話ではない。


あの子はまだ7歳なのだ。



しかし駆け付けた自宅の前で、私は信じられない光景を目にした。


ヴァイスの小さな体が、蜘蛛の巨体を弾き飛ばしていたのだ。


雨のせいか、はっきりとは見えなかった。しかし、状況から見てヴァイスが何かしたのは明らかだった。


息子は笑っている様に見えた。


「ヴァイ…ス?」


だが、私の呟きなど聞こえる筈もなく、踵を返して逃げ出した蜘蛛を追い、息子はあっという間にその場から消えてしまった。


蜘蛛が逃げていったのは、河のある方角だった。


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