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死神の相対



子供の頃想像した。

もしノミが人のサイズだったら。

軽くビルだって飛び越えるだろう。


カブトムシが人型なら?

ビルも軽々持ち上げてしまうだろう。

もし蜘蛛が人型なら?


その子供の頃の"もしも"の話。

決して現実になる事がないと分かっていたから笑って話せていたあの頃。


そんな前世の常識は、転生後の世界には通用しなかった。牛に負けるとも劣らないサイズの蜘蛛。

その存在は人に取って免れることの無い、死だ。


人間確実な死を覚悟するとどうやら笑えるらしい。


「ははは。勝手に笑っちゃうよ。あー泣けてくる」


前世は過労死。今生は絶望して死。


「全くどの世界もブラックだな。ちくしょう。いや、アリアとサクルを護って死ねるんだ。前世とは違う」


言われるがままに死んだ前回と、自らの意思で死地に出た今回では天と地の差がある。

不思議と身体の震えも収まってきた。


「どうせ死ぬなら、今までの努力をぶつけて死んでやろう」


ヴァイスは短い転生人生の走馬灯を見た。

日々の鍛錬、経験、意思、目標、全てに想いを馳せ、魔力に乗せて身体に巡らせる。


「普段は制限しながらだったからな。本気だすのは2回目か。ははは。なんか楽しくなってきた。行くぞ蜘蛛!! タダでは死んでやるか!! 」


身体に巡らせた魔力が身体能力を押し上げる。

実は昔に1度、実験を兼ねて本気の魔力を巡らせて、森の木に向かって正拳突きをした事があった。

その時はまだ訓練を初めて半年程度だったので、本当に強くなっているのか試したかったのだ。


そして勢い良く飛び出し蜘蛛に殴りかかった。

しかし蜘蛛の横を通過して奥の木に激突してしまった。勢いで木が倒れる。


「あれ? 気合い入れすぎちゃった。落ち着かなきゃ」



ーーー


蜘蛛は幸か不幸か同種と比べ特筆する点があった。

それは知能の高さだ。

先程気配を辿り、遂に自分よりも強い魔物を見つけた。

洞窟の中で寝ていた為気配を殺して近づく事が容易だった。

あと五歩という所で、その魔物は目を覚まし、瞬間に臨戦態勢を取った。


まともに戦っては勝てない。

そんな事は分かっていた。

踵を返し、急いで出口へ向かう。


当然、縄張りを荒らされた魔物は怒り狂って追いかける。

その怒りの為か、あっさりと蜘蛛の罠にかかってしまった。


洞窟の出入口付近に蜘蛛の糸を張り巡らせていたのだ。光と影の境目は糸が見えにくくなる事を蜘蛛は理解していた。


罠にかかった魔物が光に照らされ姿を現す。

一際大きな狼のような魔物だ。

蜘蛛は勝利を確信しながらゆっくりと狼の魔物へと近づき、ゆっくり牙を肉に中に突き立てる。


圧倒的優勢の時間を楽しむかのようにゆっくりゆっくり操る為に魔力を流し込む。

嗜虐心を満たしながら勝利に酔いしれていた。


満を持して、自分を追い詰めてきた人間共を殺す時が来た。


囮として狼を村に送り込み、その隙に逃げ遅れた村人で遊べばいい。

加虐心を満たす為に作戦を練り、ついでに邪魔な人間も排除する。


強力な手札を手に入れた蜘蛛の魔物は恍惚としながら村へと向かった。

まるで天は蜘蛛の味方をするかのように、類を見ない程の雨を振らせた。


作戦は完璧だった。

村は狼の魔物が現れた事をきっかけに警鐘を鳴らし戦力を集中させた。


後はここからはお楽しみの時間だ。

逃げ惑う村人をゆっくり殺せばいい。

なんなら村人を操って襲わせてもいい。


そう考えていた。

その矢先自分の目の前には子供が1匹。

逃げた奴の前まで生かして持っていき、そこで食い殺す。

そんな思いを巡らせていた瞬間。


目の前の子供の魔力が膨れ上がった。

その刹那、自分の横を通過した。

目で追うことは出来なかった。だが後方で木に当たる音が聞こえたので視線をやると、そこには先程の子供がぶつかっていた。


蜘蛛はこの瞬間悟ってしまった。

自分に前にいるのは嗜虐心を満たすおもちゃでは無い。

自分を死に追いやる可能性を秘めた"敵"だと。

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