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002

 ぱち、と目を開けて、まず飛び込んできたのは鬱蒼と茂る熱帯雨林だった。

 日本の夏顔負けの湿度の高さと熱気に、思わず日陰を求めて移動をする。

 その際、何か体の重心がおかしなことに気が付いた。どうにも前に引っ張られる気がする。

 私は自分の体を触り、何か身体的に問題があるのかと確認してみた。

 大問題だった。


「おおおおおおおお!! なんだこれ!!」


 自信の声が高く、そして柔らかいこと。なんだこのおっぱい。さらには、股間のビックダディが損失していた。

 胸からぶら下がる肉塊を両手で包む。

 おっぱいである。

 男の私にはあってはならないおっぱいが、ぽよん、と胸から膨れ出ていた。

 腰もきゅっと括れているし、骨盤は結構広く、これが安産型とか言われる体形なのか? と頭の片隅で考える。

 あってはならない物があって、無くてはならない物が無い。


「これは帰ったら報告だな。まさか、魂の転生で転性までさせられるとは……お、この語呂合わせ使えそうだ。メモっとこう」


 私は良い話のタネになる、と口に出して笑った。

 木陰に入ると、肌を焼く日差しが随分と和らぐ。しかしながら、茹だる様な熱さは如何ともしがたい。

 ため息交じりに下を向けば、そこに小さなオレンジ色の実が一つ落ちていた。


「お? これは、木の実かな? 食べられるのかな?」


 私は足元に落ちてた拳くらいの木の実を拾おうと身を屈める。

 その時、ぴゅん、と風切り音が鳴り、目の前の木に何かが音を立てて突き刺さった。


「ん?」


 私は木に突き刺さったソレを見て、それから後ろを振り返る。

 ちょうど良い日陰だ、と潜り込んでいた木。その幹には深々と矢が刺さっていた。そして振り返った先には鬱蒼とした下草をかき分けながら、素早い動きでこちらに迫ってくる者たち。

 手に手に、煌めく刃を手にして奴らはやってきた。


「っああああああああ!?」


 全くもって私は反応が出来ない。

 恐怖に震え、迫りくる鈍色の刃を目で追う事しか出来なかった。

 こちらに襲い来るのは美男美女ばかり。しかし全員、頭からうさぎの耳が生えている。

 顔には原住民チックな、赤やオレンジを用いた模様が描かれ、身に着ける衣服も葉っぱや麻っぽい植物による手作りの代物。

 そこまで確認して、鈍色に輝く鉄器物が目の前いっぱいに広がった。

 私は頭に強い衝撃を受けた。ぽっくりと、意識は途切れる。


 私の異世界旅行は転生記録2分という驚異の短時間で終わることに――ならなかった。


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