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3.凜音から見た居候

本日最後の更新。

明日もできるだけ頑張りますわっしょい。

 初めてあの子を見た時は、つい悲鳴をあげそうになった。

 だって、公園で寝ていたあの子……フーリは、誰が見ても分かるくらいに全身がボロボロで、傷だらけで、しかも痩せ細っていたから。寝ている少女の姿はものすごく魘されていて、唇もかなり紫色に変色していた。

 駄目なことくらい、やってはいけないことくらいは分かってるつもりだった。これが誘拐とやっていることが同じだって、もちろん分かってはいる。



 私は急いでフーリを抱えて家に連れて帰った。持ち上げた時、想像以上の軽さに驚き、でも幸いにもそのおかげで苦労することもなく家に帰ることが出来た。

 幸いにも、大学に上がってから私は親元を離れて一人暮らししているので、その辺りから煩わされることは早々ないだろう。

 ぐっすり寝ているフーリを普段私が使っているベッドに寝かせ、私はというと毛布を持ってリビングのソファーに寝そべる。私自身、時折ソファーでそのまま寝落ちしてしまう事もたまにあるから、ソファーで寝ることを苦だとは思わない。




 翌朝、ソファーで寝てしまったせいか、いつもより身体が凝っている感覚があったため、少しほぐした後軽く身嗜みを整え、昨日つい()()()()()()()()あの子の居るはずの部屋へと向かう。

 そして部屋に入った途端、もう起きていた様子のあの子と目が合ってしまった。



「「あっ」」



 まだ状況がよく分かっていないのか、ぽかんと呆けた様子で固まる少女。いや、むしろ幼女か? ぱっちり大きい栗色の目に、やはり生活環境は相当悪かったのかかなり傷んではいるものの同じく腰まである長さを纏めた栗色の髪。そして日本人とはまた違った色白の非常に可愛い女の子。外国人の女の子? ただ、顔立ちは割と日本人っぽいし歳よりもちょっと歳下そうに見える童顔……まあ、そもそもこの子の年齢なんて知らないんだけど。



 さて、この子の分析についてはここまでにしよう。問題は、私が話しかけてみると、めちゃくちゃ警戒されていることだろう。しかも、非常に不本意な勘違いまでされてしまった。やたらと他人行儀で子供らしくない話し方だし、一人称も女の子らしくない「僕」を使っている。それに何より……着替えのために一回女の子の服を脱がせた時、服の下の小さな身体には、日本では一生見れないだろうと断言出来るくらいには小さな傷が出来ていた。しかも、ほとんど跡になってしまっていて、きっともうこの怪我が消えることはなさそう。あまりにも酷い状態に、怒りを通り越して泣きそうになってしまった。あの子が起きた時、そんな姿は見せないようにしないとなぁ……。



 珍しい、というよりもここまで来ると本当に同じ世界に住んでいたのかと疑いたくなるレベルに複雑そうな経歴に、私も頭を抱えそうになる。服装だって、なんか変なファンタジー小説に出てきそうな胴長のだぼだぼな服を着てたし。でも、あの服を見ていると、どうにもこの少女に合わせて誂えられた服なんだなというのだけはよく分かったので、できるだけほつれ等のないように細心の注意を払って洗い、今は乾燥のために干してある。



 話を聞いていくうちに、どうやら女の子は保護者と離れ離れになってしまったらしい。女の子自身は保護者のことを悪く思っていないようなので、この怪我や凄惨な過去を思わせるような主ではないんだろう。となると、多分保護者に引き取られる前の話なのかな。というか、その保護者とは一体どういう経緯ではぐれることになったんだろう……はぐれて数日どころじゃないように見えるけど、警察に届けを出さなかったのかな? もしくは、出せなかった?



 うん、やっぱり警察に連れて行かなかったのは正解だったかもしれない。

 それから暫く話し合ってようやく信用してくれるようになったのか、最初みたいに警戒していたのが嘘のように引っ付いてくるようになった。

 後、名前も教えて貰えたし、口調も崩してもらうことが出来た。

 何より! お姉ちゃん呼びと家にしばらく滞在することになったことは、私の人生で最大のファインプレーだったかもしれない。今は料理支度をしているのだが、見慣れないのかはたまた落ち着かないか、きょろきょろ見回して私の後ろをちょこちょこ付いてくる様はまるでカルガモの子供のよう。

 控えめに言っても天使。誇張する言葉は存在しないと言っても過言ではないだろう。むしろ、フーリちゃんという名前こそが至上の最上位言語で間違いない。



 こちらから見つめ返すと、首を傾げて。



「どうしたの? お姉ちゃん」



と見上げてくるのだ。私の前世は聖人と呼ばれるくらい徳を積んだに違いない。

 ただ、その後にもハプニングはあった。食事中、料理に口をつけたフーリちゃんがグスグスと泣き始めたのだ。流石に慌てたが、フーリちゃん曰く「懐かしかった」そうだ。もしかして、フーリちゃんの縁は日本にあるのかな? だとすれば、日本料理に郷愁を抱くのも納得がいく。



 さて、料理も食べてお風呂で恥ずかしがるフーリちゃんを存分に堪能すると、いよいよ本番に取り掛かるとする。とどのつまり、今から仕事とやらを始めるのである。

 普段はこの時間に仕事をすることはあんまりない。最近は割と案件を貰うことが多かったので、昼間であることが多かった。ただ、それだけ。

 でも、今回は趣がガラッと変わる。内容的には久しぶりの()()()だが、メインはフーリちゃんの紹介だ。あんまり顔出しは個人情報の面で良くないんだけど、人を探すならむしろあっちに見て来てもらう方がいいだろうからね。



 と、いうわけで、そこで不思議そうにしているフーリちゃん。



「ねえ、フーリちゃん。私の仕事を手伝ってくれるって言ったよね?」

「? うん」



 よし、言質を取った……子供相手に何やってるのか、正直恥ずかしい。

 だけどこれは、私にとってもフーリちゃんにとっても非常に大切なこと。だから、申し訳なさを心の奥底に隠しながら、笑顔で言い放つ。



「じゃ、私と一緒に配信、やろっか」



 それに、フーリちゃんとやるの、楽しみだったんだよね。

本作は結構色々な要素がごちゃ混ぜになってます。混ぜすぎて中途半端な内容にならないようしっかりプロットは組んだつもりですが、進行上でそうならないよう頑張ります。


ブクマ&ポイント等、くれたら喜びでどじょうすくいします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 情景描写がしつこく無く、イメージが容易で初めて読むタイプの設定の作品だけど、凄い読みやすいのでストレス無く読めて次回が気になります! [一言] 頑張って下さい!
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