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「花音…花音…」
遠くで朝陽の声がする。目を覚ますと彼が私の顔を覗き込んでいた。朝陽は私を力いっぱい抱きしめた。その顔は、涙と鼻水でぐしゃぐしゃになっている。
朝陽が連絡して、私の両親がやって来た。私はそれから病院で検査を受けたり、警察でいろんなことを聞かれたりした。
警察はもちろん、朝陽も両親も、他の人も皆、口を揃えておかしなことを言っている。
何故か、失踪した朝陽ではなく、私が一年も行方不明だった事になっていた!
「あのね朝陽…変に思われたら怖くて…他の人には言ってないんだけど…」
「何? どうしたの?」
「一年前、朝陽と小春があの電車に乗って…それで行方不明になったはずだよね? でもどうして私が行方不明になってるって…みんな言うんだろう…」
私がそう言うと、朝陽は首を傾げた。
「電車に乗って行方不明になったのは花音だよ。それから俺、ずっと花音の事探し続けてたんだから。」
「え? どういうこと? いなくなったのは朝陽だよ!」
私は錯乱した。
「違うって! お医者さんが花音は軽い記憶喪失になってるって言ってたから、きっと記憶が錯乱してるんだよ。いなくなったのは花音だよ。」
―どういうこと? 確かに私は朝陽と小春と会うために裕人と一緒にイアンさんの… 裕人!
「ねえ、裕人は? 裕人と小春はどうなったの?」
「裕人…? 小春…?」
朝陽はまた首を傾げた。
「裕人と小春だよ! 入学してから私たちずっと一緒だったじゃん! 忘れちゃったの?」
「入学してから俺たち付き合うようになったけど…グループなんて作ってなかっただろ。」
朝陽は言った。冗談を言っているようには見えない。
あの時…イアンさんの屋敷でダンスを踊って…私は朝陽と一緒にいる未来を望んだ。だから二人は別の世界に行ってしまったって事?
次回、最終回です。^^