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「イアンさんは消えた乗客に会える方法をしっているんだよ。」
「…それが…あのダンスって事?」
「…多分。」
「なんで踊ったら消えた人達に会えるの? 今までこれだけ探しても見つからなかったのに。」
「…確かにそうだけど…今まで出来る限りの事をしても手がかりは何も見つからなかった。俺たちもう、ここにすがる以外ないんじゃない?」
「…。」
そして私たちは真剣にダンスを学んだ。慎重に…絶対に間違えないように…。
「…明日の夜です。」
イアンさんは言った。教室中がざわついた。
―明日…本当に朝陽と小春に会えるのだろうか…
ついにその日がやって来た。
私たちは定位置着いた。イアンさんは一人ずつ、立ち位置をチェックしていった。そして私のそばまでやって来た。私はモヤモヤしていたことをイアンさんに聞いた。
「会えるだけなんですか? こっちの世界に戻すことは出来ないんですか?」
私がそう言うと、皆が一斉にこちらを振り向いた。イアンはその様子を見渡して、小さく溜息をついた。そして呟いた。
「私が皆さんを手助けできるのは、ここまでです。彼らと私たちは、鏡のこちら側とアチラ側のように、干渉できない別の世界にいるのです。二つの世界は螺旋を描きながら回っている…私たちがこれまで学んで来たダンスのように…。その二つの軌道が最も近くなるのが今晩なのです。」
「だから…会えるだけなのか…。」
裕人は溜息をついた。
「でも! 何かあるはずでしょ! もともと一緒の世界にいたんだし! もしまた同じ世界にいられるのなら、私は何だってする!」
私はイアンに迫った。イアンは何も言わなかった。
「お願い! 私はどうしても諦める事が出来ない!」
私はイアンの両腕にしがみついて叫んだ。
「…わかりません…私にも…。でも…この世の中の流れは、私たちの想像を超えている…。過去と未来、方向は一定じゃないかもしれないし、きっと一瞬一瞬、世界は無数に広がっているのでしょう。だったら…先に自分で未来を決めてしまったらいいのかもしれないですね…。」
イアンは悲しく微笑んだ。