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生徒は様々な年齢の人がいた。私たちのような学生もいれば、主婦やサラリーマン風の人、かなりの高齢者もいた。
「そこ! それじゃダメです! ちゃんと覚えてください!」
イアンさんは高齢のおじいさんとおばあさんにけっこうな強い口調で言った。
ー高齢者にそこまでのレベルを求めなくても良くない?
「裕人…やっぱりここおかしいよ。どう考えてもこんなことをして朝陽たちに会えるとは思えない…。」
私が小声で囁くと、裕人はイアンさんの視線を感じたのか、人差し指を口の前に当て、それ以上話すなと私と止めた。
「途中退場は許されません! もし辞めるのであれば、二度とこの場に戻って来ることはできません。」
イアンさんは私の囁きを聞きつけたのか、私の前に来て、大きな声で皆にそう言った。そして言い終わると私とギロっと睨んで去って行った。
―何なの、あの人!
帰り道、空にはキレイな満月が浮かんでいた。
「ごめん…無理に誘って。」
裕人は言った。
「いったい何なの? あの教室…。おかしくない? お年寄りに対してもあの態度だなんて…。辞めたら二度と戻れないって言ってたけど、そんなのこっちからお断りよ。」
私はイアンさんに対する怒りが収まらなかった。
「まともに考えたら社交ダンスを踊ったら行方不明者が見つかるなんて有り得る訳ないじゃん。それだったらまだ霊能力者とかに頼んで探してもらう方が見つかる可能性高くない?」
私は裕人に声を上げた。
「二人に会うにはこうするしか無いんだ。」
「え? どういうこと? もしかして朝陽たちはあの家に監禁でもされてるの?」
「そうじゃない! 花音、落ち着いて聞いて!」
裕人は私をなだめた。そして裕人自身もゆっくりと深呼吸をして再び話し始めた。
「二人はもうこの世界にはいない…。」
裕人が何を言っているか全く分からなかった。
「裕人までそんなこと言ってどうするの! 私たちだけはあの二人の生存を信じようって…今までずっと探してきたんでしょ! それを死んだなんて!」
私は泣き叫んだ。
「そうじゃない! 違うんだ!」
「何がよ! さっき二人はこの世にいないって言ったじゃない!」
「多分…別の世界に行ってことだよ。」
「え?」
「見たんだよ…俺…」
「見たって…何を見たの?」
「この建物の中で消えた人がいるのを…」