新メンバーと一緒に初級ダンジョン
ガタンゴトンと馬車に揺られて、今日はハルトムートさんも一緒に初級ダンジョンに挑戦です。
ぼくとレオはいつも通りの恰好に荷物ですが、他のみなさんはちょっと違う。
ハルトムートさんの指導の元、少し装備品が変わっております。
まずは本当は治癒士で臨時剣士のオスカーさんは、例のいまいち似合わないケープを脱がされ、簡易鎧に身を包みどこからどう見ても立派な剣士です。
ディータさんの装備はほぼ変わらず、ただ新たに武器として槍を持っています。
ビアンカさんは荷物が増えました。
ウエストポーチに投擲用の魔法玉がいくつか入っています。
魔物に当たると痺れさせたり、目くらましになったり、味方に当てて怪我を治すポーションの役目の魔法玉もありました。
通常、斥候役の人はいろいろと役に立つ魔法玉を持っているそうです。
確かに斥候役はその役柄、パーティーの先頭を歩くから危険はいっぱいです。
あらゆる事態を想定して、ビアンカさんの安全のためにも最初に用意すべきでした。
「しょうがないわよ。初級ダンジョンじゃ斥候の仕事なんてないし」
楽観的に捉えていたビアンカさんは、このあとハルトムートさんに軽く二時間ほどお説教され、涙目になってました。
焼きたてクッキーをあげておきましたよ。
ハルトムートさんは、ぼくとレオを地下に連れて行って魔法をいっぱい使わせました。
正直、ハルトムートさんの顔が驚愕で大変なことになっていたけど、しばらくするとそのショックから立ち直り、地上に出てオスカーさんたちの戦力確認しに行ったから大丈夫だったんだと思います。
ビアンカさんに「クルトたちのせいでヒドイ目にあった」と言われましたけど?
「ほら、着いたぞ」
乗合馬車に馬で併走していたハルトムートさんが、馬車の幌を上げてぼくたちに声をかけます。
「よし、下りよう」
ぼくはオスカーさんに抱き上げられて、ポンッと着地。
「俺は馬を預けてくる」
「ああ。私たちは受付で休憩スペースを借りてくる」
オスカーさんとハルトムートさんはお互いに軽く手を挙げて挨拶すると、それぞれの受付へ向かう。
ぼくたちはオスカーさんの実家から贈られた馬車と馬があるんだけど、まだ駆け出しのギルドが自前の馬車でダンジョンに来ると厄介な人たちから目を付けられる。
ましてや、オスカーさんが貴族子息だとわかると、いろいろと問題が出てくるとハルトムートさんから忠告されたので、中級ダンジョン攻略まで自前の馬車は使わないことに決めました。
ハルトムートさんは、そもそもソロでも冒険者ランクが高い人なので、馬に乗ってきても誰にも何も言われないし、言わせないのだろう。
ただ、馬車を使う機会がないと馬の運動量が問題になってくる。
ギルドの裏庭がいくら広くても、馬が満足に走るのには狭いからだ。
「休みの日に町を出て走りに行くしかないな」
オスカーさんが愛馬の世話をしながら嬉しそうに言うと、ハルトムートさんがディータさんたちを見てニヤリと笑う。
「お前たち馬には乗れるのか?」
「うーん、なんとかね」
「……少し?」
一応、見習い冒険者期間に乗馬の練習もしたらしいが、馬に乗って長距離移動をしたことはないらしい。
ちなみにぼくは、まったく乗った経験はない……はずです。
記憶を失う前のぼくも、乗ったことないですよね?
結局、ハルトムートさんの指導に乗馬が加わり、ビアンカさんたちは二、三日に一度、町の外に出て馬と戯れています。
「どこからにする?」
「そうだな。地下十階からでもいいが」
転移陣に乗ったあと、どこからダンジョン攻略を始めるかちょっと悩んでいます。
今までは、ぼくが目を開けて魔法を使うことができなかったので、地下五階から十階の間で潜っていたんですよ。
「そうだな。俺もまずは連携から確かめたいから、地下五階からでいい。地下十階以降は午後で」
ハルトムートさんはそう決めると、ポチっと転移陣の選択ボタンを押してしまう。
ヒュンッ。
もう目の前には、見慣れた地下五階の階段前です。
「んじゃ、今までの戦い方を見せてくれ」
いってらっしゃいとばかりにひらひら手を振るハルトムートさん。
ぼくたちはディータさんを先頭に階段を下りていった。
ディータさんの盾で魔物の動きを鈍らせてもらって、ぼくが【ウォーターボール】で攻撃。
打ち損なってしまった魔物をオスカーさんとビアンカさんが仕留める。
残念ながらドロップアイテムに目ぼしい物はなく、ハズレドロップもありませんでした。
目的がぼくたちの戦い方を見てもらうことなので、魔物を見つけては戦闘を繰り返し順調に地下十階まで下りてくることができました。
「ぜんぜーんダメだな」
まずは、ハルトムートさんの鋭い視線がぼくに刺さりました。
「クルト、お前なんで魔法を使うときに目を瞑ってるんだよっ」
グイグイと瞼を太い指で押し上げられます。
「す、すみませーん」
パッと手を放すと、今度はディータさんの腰にやや強めの蹴りが入ります。
「っ!」
ディータさんの大きな体がビクンと跳ねました。
「ディータ。上半身だけで盾を使うな。下半身もしっかりと力入れろ」
スリスリと蹴られた場所を摩りながら、ディータさんはハルトムートさんに一礼。
「あと、ビアンカ。キョロキョロしすぎだ。斥候だったら気配とか感じろ」
「そんなムチャな。あたし、察知系のスキルなんてないわよ」
「それはスキルじゃない。経験で身に付く能力だっ」
ハルトムートさんに言い返したビアンカさんは、さらにハルトムートさんに注意され頭を大きな手で鷲掴みにされている。
「いだだだっ」
「ハ、ハルトムート」
二人の周りをオロオロとオスカーさんがうろついている。
ぼくとディータさんはまだハルトムートさんからの被害に立ち直れていない。
目が痛いです。
「ああん? オスカー。お前もだ。動きが剣の型どおり過ぎるんだよっ。もっと適当に、臨機応変に剣を振り回せ」
ぐわっと迫るハルトムートさんの迫力に、オスカーさん「ハハハ」と困ったように笑った。




