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「異世界レシピ」スキルで新人ギルドを全力サポートして、成り上がります!  作者: 沢野 りお
ギルド

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美味しいご飯

パチッと目を開けると、心配そうにぼくの顔を覗き込むオスカーさんの顔のどアップがありました。

うわっ! と驚くと頭の上からズルッと何かがずり落ちる感覚がある。


「……レオ?」


ぼくの呼びかけにポヨンと体を揺らめかせて返事をする、かわいいぼくの相棒。

どうやら、少しひんやりする体温? でぼくの頭を冷やしてくれていたらしい。


「そのスラ……、レオは倒れたクルトの頭を守っていたぞ。偉いんだけど、スライムに知能はないはずなんだけどな……」


アハハと疲れたように笑うオスカーさんに対して申し訳ない気持ちが湧いてきます。

よっこいしょと横になっていた体を起こして、体のあちこちを動かしてみるけど、怪我はないみたい。

レオが守ってくれたから、頭にたんこぶもできてない。

あの割れるように痛かった頭痛も落ち着いているし、文字が猛スピードでスクロールされていた半透明な画面も消えている。


「クルト、大丈夫か?」


「はい。今は平気みたいです」


オスカーさんにニッコリ笑ってみせて、ぼくは作りかけの朝ごはんの仕上げをしよう。

ほとんどできていたので、オスカーさんもお皿を運ぶのを手伝ってくれました。

ただ、問題は……。


<リクエスト>紅茶の淹れ方

マスターは習得済です。


なに、これ?

別にスキルを使おうと思ったわけでもないのに、無断で「シュン」と見慣れた半透明な画面が出てきたと思ったら、この表示。


「ぼくが、紅茶の淹れ方を習得済み?」


そんな、バカな……と思ったけど、もしかして記憶がなくなる前のぼくは紅茶が上手に淹れられたのかな?


「おーい、クルト。早く食べよう」


「あ、はーい」


そうだ、早く食べないとオスカーさんがギルドの講習に遅刻してしまう。

ぼくは、紅茶のセットを持ってテーブルへと移動した。


最初のひと口はオドオドとした動作でフォークを使っていたのに、パクリ、モグモグ、ゴクンとした後は、猛烈なスピードで食べ始めました。

オスカーさん……見た目もちゃんと美味しそうに作ったんですけど、ぼくの作った料理を疑ってましたね?

ぼくも、カリカリのベーコンをひと口。


「ん!」


塩味がちょうどよくて、ジュワッと肉汁が口に溢れて美味しい!

トロトロの卵の黄身もかけて、パンに乗せてサクッと。


「美味しいですね!」


「ああ、美味しいな!」


オスカーさんは体の大きさ通りにいっぱい食べているけど、その所作が上品なのは貴族の教育の賜物みたいです。

ぼくの足元ではぴょんとレオが跳ねています。


「うん。レオも美味しいね!」


「いや、スラ……レオに普通の食事を与えていいのか? 汚水を飲まなくなるんじゃ……」


「でも、レオも喜んでますし」


そうなんだよね。

いざ、テーブルに朝ご飯を並べて食べ始めようとしたら、レオが「自分も食べたい」とばかりにバシンバシン床を触手で叩いて主張してきたから、ちょっと分けてあげたんだ。

オスカーさんには、水色スライムに液体以外の固形物を与えると汚水処理能力が失われると注意されたけど、もう一昨日から果物やら炭やらを食べさせちゃったし。

まあ、どうしもダメだったら、レオ以外の水色スライムを連れてくれば問題なし!


食後には、オスカーさんに美味しい紅茶を淹れてあげることができました。

なんだろう?

頭で考えるより勝手に体が動いたというか、手が覚えていたというか……不思議なことが続いて段々普通の間隔が麻痺してきたかも。

オスカーさんに褒められたから、難しく考えなくてもいいか。


「くれぐれも、スキルを乱用しないように! 掃除はできる範囲で構わないし、なんだったら晩ご飯だけ作ってくれればそれでいいから」


出かけるオスカーさんにかなり強めに念押しされたけど、今日は無理しないよ?


「はい。わかりました。いってらっしゃい」


笑顔で手を振るぼくと、みょんと触手を振るレオ。


「スライムが手を振っている……。え? 見送りってわかっているのか? いやいやクルトの真似をしているだけ」


オスカーさん、ブツブツ下を向いて呟いてると転びますよー。










確かに、このままスキルを使ってお掃除をしても、リフォーム計画がハッキリしてなかったら二度手間になるかもしれない。

ギルドメンバーが揃うのが、オスカーさんのギルド講習五日間が終わる、翌日。


「みんなが揃ってから、それからでもお掃除は間に合うでしょう」


ぼくのスキルとレオの協力があればね。


「ということで、今日は普通にお掃除したあと、料理をしようと思います」


オーッと右手を高く上げると、レオもオーッと触手を上げる。

朝食べた食器や使った調理道具を洗ったあと、キッチンや寝室、水回りを箒やモップで掃除して、庭は表庭の正面扉付近だけ掃き掃除をした。

この表庭もどう利用するか、メンバーのみんなで相談して決めるとのことだからお掃除はちょっとだけ。


「ふうっ。ひと通り終わったかな?」


いつもは知らないうちにスキルを使われて、魔法が勝手にキレイにしてくれたけど、自分の力で掃除をすると結構疲れるものだな。

これでもモップかけのときには、レオが大活躍してくれたのに。

あ、レオはちゃんと汚水を飲んでくれたし、キレイにした水を出してくれました!

お昼は朝作ったサンドイッチをレオと分け合って食べて、ひと休み。


「さてさて、問題の料理だ」


ぼくは、腕まくりをして決意を新たに踏み台に昇ります。

朝はスキルから表示される膨大な情報量に頭がパンクして倒れちゃったんだと思う。

今までもぼくはざっくりと「キレイにしたい」と願ってスキルを使ってきたけど、正しくはスキルに振り回されていたんだ。


「もっと望みを絞って、スキルを使いこなさなきゃ」


まずは、食材と調味料の不足ということから対処しよう。


「でも。それなりに食材も調味料も揃っているんだよね」


ぼくはうーんと腕を組んで、キッチンの作業台に並べた野菜や調味料を確認する。


「ぼくの知らない料理じゃなくて、知っている料理に絞ってみようか?」


試しに、オーク肉と芋とニンジンとタマネギとキノコもあったな。

他にもトウモロコシとトマト、チーズ類、調味料。


「これならトマトの煮込み系の料理ができる……はず」


いや、むしろこの材料でできる料理と指定するか? あ、簡単な料理と注文してみるとか?

もう一度バターンと倒れる覚悟は決めた!


「でも、レオ。また倒れたら守ってね」


オーケーとでも請け負うように、レオはぴょんぴょんと跳ねて返事をする。


「よ、よしっ。ここの材料でできる簡単な煮込み料理を教えて!」


叫んだあと、来る衝撃に備えてぼくはギュッと目を閉じた。


<リクエスト>簡単な煮込み料理 食材指定

……料理手順を自動で行いますか? [YESorNO]



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