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レオのふしぎ

もきゅもきゅ。

オスカーさんが買ってきてくれた晩ご飯の屋台飯、美味しい。

今日はいっぱいお掃除を頑張ったから、余計に美味しく感じられるのかも。

ぼくの相棒レオとも、この美味しさを分かち合いたかったけど、なにやら動揺しているオスカーさんがレオを寝室に連れて行くのを許してくれなかったから、残念だ。


そのオスカーさんは、自分が買ってきた焼いたお肉を挟んだ薄焼きのパンをひと口頬ばるごとにため息を吐いている。


「はあーっ」


そんな食べ方していて、美味しいのかな? お肉が柔らかくて美味しいのに。


「はあーっ」


「オスカーさん……」


「ああ、すまない。どうも私の常識が……、こんな簡単に覆ってしまって。いや、あのスライムがレアスライムなんじゃ……」


オスカーさんがパンを片手にブツブツと考え込んでしまった。

どうやら、ぼくとレオの関係がオスカーさんには理解できないらしい。


「ぼく、テイマースキルなんて持ってないですし。そんなにスライムとお友達になるのは珍しいんですかね?」


他にもいるんじゃないの? スライムをお友達にしている子供が。

だって、そこそこ大きなお屋敷には浄化してくれるスライムが必須だし、町や村にも一定数のスライムは共同井戸やゴミ捨て場にいて管理されているんだから。

そのスライムの中で、レオみたいなに知能がある子がいたら、仲良くなるんじゃないのかな?


「そもそも、スライムに知能はない。属性を持ったスライムなら攻撃したり身を守ったりするぐらいの知能は芽生えるが。あのレオというスライムの態度はティムされたスライム、それもスライム自体がレアの可能性が高い」


ぼくのことを少し恨めしそうに見るのは、やめてください。

そうなんだ……じゃあ、レオはレアなスライムなんだと思う。

あんな草原でたまたま見つけて連れて来たスライムがレアスライムで、ぼくなんかにティムされてお仕事を手伝ってくれるなんて、ぼくってばラッキーかも!

ゴブリンに襲われて頭を打って記憶がなくなっちゃったけど、そのあとはラッキー続きじゃない?


「なんで、そんなにニコニコしているんだ。さてはクルト。事態の異常性に気づいてないな?」


今度はオスカーさんにジト目で睨まれました。

申し訳ない気持ちで、つい首を引っ込めてしまう。


そもそもスライムの生態は謎に包まれている部分が多いが、確定されている事実として知能の有無がある。

町や屋敷、城などで汚水処理をしている水色の初期スライムやゴミ処理をしている茶色の初期スライム。

これらが何かのきっかけで進化すると、攻撃能力を備えた属性スライムとなる。

でも、自分の身を守るための攻撃が主で、自らの餌を捕食するために攻撃するという知能はないと思われている。

だから、進化したスライムでも気をつければ子供でも討伐可能なんだよね。


「そのほかにも、冒険者たちの噂では巨大化したスライムや分裂攻撃するスライムが存在するらしいが、これらのスライムが初期スライムからの進化なのか、突然変異なのかはわかっていない」


オスカーさんが腕を組んでうむうむと頷きながら、ぼくにスライム講義をしてくるけど、まだ食事中ですよ? もきゅもきゅ。


「そして、レオというスライムだが……。確かにテイマースキルでティムした魔物は知能が高くなるらしいが……」


ムムムと眉間にシワをくっきり刻むオスカーさん。

ティムされた魔物は、テイマーとの間にパスが繋がり意志の疎通が可能になるとされているけど、テイマーの技量による差異なのか、その魔物との意志疎通はなんとなくわかるという程度から、ハッキリと会話できるレベルまで。


「うーん、レオの言いたいことはなんとなく察せられる程度ですかね?」


レオが喋ったらかわいいと思うけど、どうかな? このまま一緒にいろいろなことにチャレンジしていたらお話しできるようになるかなぁ。


「……テイマーでもティムしたスライムと会話できた奴はいないと思うぞ」


なんか、オスカーさんがげっそりと疲れた声を出したけど、なんでだろう?

そのあと、トイレやお風呂の劇的変化に驚いたオスカーさんは、ヨロヨロと崩れるように寝袋の上に倒れてそのまま夜を明かした。









翌日の爽やかな朝。


「じゃあ、オスカーさん。買い出しお願いします。明日からはぼくが朝ご飯作りますから」


むんっと両拳を握って気合を見せつけます。


「あ、……ああ。あんまり無理しないように。掃除もそこそこでいいからな。スラ……じゃなかったレオにも無理させないように」


オスカーさんはぼくたちの足元でピョンピョンと弾んでいるレオにも声をかけて、ギルド支部へと出かけて行った。

なんか、体が傾いでいるようにも見えたけど、大丈夫かな? なんであんなに疲れているんだろう。


「そんなにギルドでの講習って厳しいの? 講義を聞いているだけだって言ってたのに?」


ぼくはコテンと首を傾げて、そんなオスカーさんの背中を見送った。


「さて、レオ。今日はどこをキレイにしようか?」


レオが「まかせて!」と主張するようにポーンッと弾んで、ぼくの腕の中に飛び込んでくる。


「わあっ、すごい! こんなにジャンプできるようになったんだね!」


レオの体がプルンと誇らし気に揺れ、その体も少し大きくなったような? 体の縁の金色のキラキラが一段と眩しいような気もする。

もしかしたら、初期スライムから進化できるかもしれないね。


「よしっ! ぼくも頑張るぞーっ!」


クルッと屋敷に入ろうとするぼくの目に入ったのは……薄暗い屋敷の姿。

びっしりと屋敷に蔓延った半ば枯れた蔦の葉と、元の色がわからないほどに汚れた外壁、朽ちかけの窓枠と黒い窓。


「……まずは、このお化け屋敷のナリをなんとかしないと」


ぼくは、レオを足元にそおっと下ろして、袖を捲り上げていく。

今日は、このお屋敷の外観をキレイにすることに決めました!


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