表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/85

お掃除の続き

気持ちを切り替えて別の場所に移動してお掃除を続けよう。

オスカーさんが買っておいてくれたお昼ご飯のサンドイッチを無言で食べて、ミルクティーに砂糖を多めに入れて自分の心を甘味で癒した。


キッチンはキレイになったけど、水と火の魔石をそれぞれの魔道具に設置してもらわないと使えないから、今日の夕ご飯は作れない。

蛇口と魔道コンロ、灯りの魔道具にも魔石が必要と、欲しい物を書き出しておいてオスカーさんにお願いして買ってもらおう。

食器も欠けたりヒビがあったり、カトラリーも不揃いだし、鍋も底が抜けてたり、フライパンには把手がないよ。

テーブルも椅子もガタガタするけど、これは修理して使ったほうがいいかな?

あとは、カーテンも新しい物に代えたいし、料理をするぼく用に踏み台とエプロンが欲しいなぁ。


「さて、次はぼくたちが寝起きしている部屋をキレイにしよう!」


また、ぼくのスキルが力を発揮してしまうのだろうか……、自分でもわからない力を使うのはちょっと気が重いなぁ。

そんなぼくの憂鬱な気分など気にも留めずに、レオはプルンとした体をぴょんぴょんと跳ねさせて軽快に階段を昇って行った。











ぼくとオスカーさんが寝起きしている部屋は、このお屋敷の中で一番広い部屋だ。

たぶん、主寝室だと思うんだけど家具すべて無くなっているので、ただ広いだけの部屋になっている。


「うん、埃っぽいね」


ここにも天井に主のいない蜘蛛の巣が幾つか蔓延っていたけど、最初に来た日にオスカーさんが払っていたから蜘蛛の巣は、問題なし。

ぼくは、今まで一度も開けたことのない窓まで行って、開けようとした。


「あ……」


ガキンと嫌な音を立てて窓の鍵が壊れてポトリとぼくの足元に落ちてしまった。


「壊れちゃった」


レオが触手を伸ばして、落ちた鍵をツンツンと突いている。


「カーテンも埃っぽいし、重そうだし、なんか臭い。窓も土埃で真っ黒だし」


こんな汚れがどっさりと蓄積された部屋でもキレイになるんだろうか?

ぼくは掃除道具を床に並べて、静かに目を閉じ自分に気合をいれる。


「スーハー。スーハー。よしっ! この部屋をキレイにしたいっ!」


キッチンのときと同様に、望みを口にして叫んでみた。

「シュン」と音を立てて、今日何度めかの半透明な画面が出てくる。


「今度はなんだろう?」


<リクエスト>寝室の掃除

埃除去【生活魔法・清潔(クリーン)】と【風魔法初級・バキューム】を併用

布製品の洗浄【生活魔法・洗浄(ウォッシュ)】のあと【生活魔法・乾燥(ドライ)】を使用

窓磨き【生活魔法・洗浄(ウォッシュ)】と【水魔法・ミスト】を併用

オプション 消臭しますか? [YES or NO]


な……なんか、いっぱい選択肢が出てきたーっ!


「レ……レオ、これどうしよう?」


思わず、ギュッウとレオの魅惑なポヨヨンボディを力任せに抱きしめてしまった。

レオは右に左に身を捩って、ぼくの抱擁地獄から逃れようと藻掻いたのち、触手を出してペチペチとぼくの腕を叩いた。


「あ、ごめん」


抱いた腕の力を緩めると、スライムらしくない素早さでぼくから距離を取り、上下左右に体を屈伸運動のように伸ばし始める。

なんとなく、レオからの抗議の声が聞こえてくる気がする。


「うーん、埃を払ってから床掃除……絨緞は布製品になるのかな?」


もしかして、絨緞とカーテンを一度に洗ってしまおうと考えているのかな? ぼくのスキルは。

窓磨きもスキルでキレイにできるみたいだけど……この広い部屋の掃除の手段のほとんどが【生活魔法】だよ?


「今さらだけど、【生活魔法】で掃除ができるって普通じゃないよね?」


【生活魔法】は全員が使える魔法だけど、その威力には個人差がある。

【生活魔法・清潔(クリーン)】では、自分の体にだけ使える人が多く、オスカーさんみたいに他人にまで行使できる人は魔力が多い人に限る。

しかも、人にかけるだけでなく、物や空間に行使できるのは稀だ。


【生活魔法・点火(ファイア)】は、人差し指の先にポワッと火を出すぐらいのが普通で、魔力の強い人だと松明の代わりになるぐらいの大きさだ。

ぼくの厄介なスキル『器用貧乏』だと、この【生活魔法】が人よりちょっと器用に使える程度なんだけど……。


「どう考えても威力が桁違いだよね」


たぶん、ぼくの扱う【生活魔法】のレベルは、魔力の多そうなオスカーさんを超えていると思う。

ふと、ぼくの魔力ってどうなっているんだろうと疑問が湧いた。

魔力は無尽蔵ではないし、量には個人差がある。

ぼくの魔力量はそんなに多いのだろうか? 魔力の多い貴族のオスカーさんよりも?

でもなぁぼく、キッチンの掃除で魔法をバンバン使った自覚があります。

あんなに魔法をいっぱい使える魔力がぼくにあるなんて……。

【生活魔法】がほとんどだったけど、初級レベルの属性魔法を何回か……しかも、その威力は初級レベルを超えている。


「魔力が枯渇するとどうなるんだっけ?」


魔力が著しく低下すると意識混濁して失神するし、そうなる前にほとんどの人は気分が悪くなったり眩暈を感じたりする。

どうやら魔力を必要以上に消費すると、それを補うように生命力が減っていくらしい。

ぼくは、にぎにぎと両の手を握ったり開いたりしてみる。


「……平気だよね?」


特に、気分が悪くなったり、吐き気がしたり、目が回ったりすることもなく、倦怠感も全く感じない。


「うん、とりあえず疲れたら今日はお終いにしよう」


それまでは予定どおりにお掃除をしていこう。

ぼくは、改めて数日前から寝泊まりしている広い部屋を見回して、スキルを使うことにした。


「【生活魔法・清潔(クリーン)】、【風魔法初級・バキューム】」


まずは、埃を払うことにしたのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ