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イタズラ中学生編

アルバイトのあるあるや、笑えた話などで皆様に笑いをお届けします!

これは私が某コンビニに勤めていた頃の話である。


その日はなぜか暇だった。

店には客が数えるほどしかおらず、本来するべきではないが、一緒にシフトに入っていた同僚の主婦さんと話ができるくらいには暇だった。


ふと顔を上げると、男子中学生4人が店の前に座り、なにやら会話をしているようだった。

特に気にもせず、のんびりと仕事をしているときにそれは起こった。

おもむろに中学生の一人が店に入ってきたかと思うと、数冊の雑誌を手に取りレジにやってきた。

バサッと置かれた雑誌。

それを見たとき、私の顔は引きつった。


その当時の私はまだ学生を卒業したばかりの18歳。

その雑誌を手に取るのも触るのにも抵抗があったのは致し方ない。


レジにもってこられた雑誌はなんとー

アダルト雑誌だったのだから。


当然未成年には売ってはいけないものである。


「あの、これは未成年には売れー」


ませんよ、と言い切る前に「エロTズム、エロひゃくせん…」と謎の呪文を中学生はしゃべり始める。

一体何を…と思って視線を落とすと、なんと読み上げているのは雑誌のタイトルであった。


なんともなまめかしい文字の羅列が並んでいる。これを読む彼の心境は一体どうなっているのか。

チラリと盗み見てみると、真っ赤な顔をしていた。聞いてる私もいたたまれないのだから、読んでいる彼は相当なものだろう。


「…たちの楽園!ありがとうございました!」


どうやら読み上げ終わったようである。

ぺこりとこちらに一礼するとササッと雑誌を手に取り、元の売り場に戻していった。

そしてそのまま、ダダッと外の仲間の元へ走っていった。


「なんてことさせんじゃーい!」


…と叫びながら。



それで終わったのかと思いきや、それは違った。今度はまた違う一人が店内に入ってきたのである。


きゅっ、きゅと腰をふりつつ。

それはまるで悩ましげに踊る妖艶なダンサーのような腰つきで。


おもむろにレジ前に来たかと思うとサッと脇を見せるように片腕を上げた。そしてもう片方の手はスプレーを持ったような形を保っていた。

そこにスプレーなどは持っていないが、まるで持っているかのようだった。そしてそれを脇の下にあてがうような仕草をしたかと思うと、


「シュー!!8×4ー!(エイトフ⚫ー)」


と、放送されていた制汗剤CMの商品名を叫びながら踊りだした。

oh!なんて爽快感なんだ!ヒャッフー!といわんばかりの顔を向けられたが、私はすぐには反応できず、固まった。


「………」


一瞬、二人の間になんとも言えない…空気感がただよった。


「…ぶふっ!」


お客様がいる以上、動揺してはならない…と思いつつもおかしさから口から空気が漏れた。

それを見た中学生は満足げに外へ走り出す。


「やったぞー!」

と嬉しそうに叫びながら。



中学生たちの行動から見るに、初めは何らかの罰ゲームだったようだが、二回目からは店員を笑わせようゲームに変わったであろうことがうかがえた。


まあ、だからといって私が仕事をするのは変わらない。揚げ物をしているとまたひとり中学生が入ってきた。


作業中だったので「いらっしゃいませ~」と言いながらも軽く見やるくらいで、まじまじとその姿を見ることはなかった。


何か違うところがあるかと言われれば、緑色のレジ袋を腰あたりにあてた手に持っているということぐらいだろう。特徴的な袋はひと目見ただけで近くのスーパーのものだとわかる。

袋を持ってきたなんてエコなことでいいじゃないか。と思っていたときだった。


突然、「Sさん、Sさん!」と同僚の主婦が私の背中をバンバンと叩く。


「え?なんですか?」

「アレ、アレ見て!」


いったいなんだというのか。

初めは何が違うのかわからなかった。


入ってきた中学生はモデル歩きをしつつ、何かをクイクイと引っ張っているようだった。

外を見ると仲間の中学生が笑いが押さえられないといった表情だったり、はたまた爆笑したりしていた。

そして改めて中学生を見てその意味がわかった。私は上半身にしか目が行っていなかったのだ。


相も変わらず中学生はくねくねとなまめかしい腰つきをしていた…が!

なんと彼はあろうことか緑色の袋に穴を開け、ズボンの上にパンツのように穿いていた。よもや袋もそんな使われ方をされるとは夢にも思うまい。

色気を出したつもりなのだろうか。袋の持ち手の部分をそれぞれ引き上げ、これでもかとハイレグにしていた。

私が気づくやいなや、中学生はパンツを脱ぎ、ドヤ!といわんばかりにバーンと脱いだパンツを広げてみせた。

なまめかしい緑の袋パンツが眼前ではためいた。


それを見た瞬間、もうダメだった。

「あははははは!!」

店内に響き渡るくらいの大声で笑ってしまったのは仕方ないことだとわかってほしい。お客様が中学生以外いなかったので、まあそこは許していただきたい。

きっと誰もがこんな場面に遭遇したら笑わずにはいられないはずだ。


「成功、成功~!」


企みが成功した中学生は楽しげに店から出ていった。



中学生が考えることは大人にはわからない。またいったい何を考えてくるのかと仕事中にもかかわらず楽しみになっていた。


再びキンコーンとドアチャイムが鳴る。また別の中学生が入ってきたのだ。その顔にはアイマスク。

その顔を見たときの私の顔は想像にお任せしたい。


「ぶふっ、ぶははははは!!」


ニヤけつつも笑いを押さえていたが、やはり顔面が崩壊した。だいたい笑うなという方が難しい。

彼が着けていたアイマスクは普通のアイマスクではない。昔の少女漫画の瞳のようにキラキラした瞳のアイマスクだったからだ。

アイマスクを着けているくせにスタスタとレジまでよく来たな、と思ってよーく見ると、なにやら目の部分に小さな穴が点々と空いていた。なるほど、ここから見ていたのか。

余興用のおもしろアイマスクのようだ。


「はははははっ!そ、それどこで買ったの?」


聞くと、黄色い看板とペンギンがトレードマークの店だと教えてくれた。確かにそこならこういうものも沢山あるだろう。

ひとしきり笑わせると中学生は楽しげに出て行った。



しばらくしてまたドアチャイムが鳴る。

今度は団体様だ。中学生が一列に並んで店内に入ってきた。


「いらっしゃいませ~……?!」


その異様さに息を呑む。

それもそのはず、全員があのアイマスクを着けて来たのだ。しかも、一種類ではなかった。

どうやら先ほどのことに気を良くした中学生が、仲間全員を引き連れて来たのだ。

中学生たちはわき目もふらず、一列にまっすぐレジに向かってきた。

横一列に並んだ姿は圧巻であった。

眉根を寄せたような悲しい瞳、ムンッとつりあがった怒りの瞳、キラキラの瞳、嬉しさを表現した…なんとも言えない腹立たしい笑みのマスク。


「チキンください!!!」


全員が一斉に同じものを注文する。

しかし、会計は別だ。一人を会計するとすぐ別のアイマスクがレジ前に立つ。

そのたびに肩が震え、声も震える。息も絶え絶えで会計するのはこんなにも苦しいものなのか。

やっとのことで会計を終わらせると中学生たちは「やったー」「俺らおもろすぎん?」「笑わせてやったぜー!」と高らかに勝利宣言をしつつ楽しげにコンビニから出て行き、姿を消した。


◇◇


あれは楽しいバイト時間であった。…苦しくもあったが。後にも先にもあれほど仕事中に笑ったことは…たぶんない。

あれから十数年余り。彼らも立派なオジサンとなっていることであろう。今でも面白いことをしているのだろうか。

それは彼らのみぞ知るところである。


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