かなり短めプロローグ ー初飲み会にてー
「お酒お注ぎしますね」
「ああ、ありがとう」
「相模課長、楽しんでますか?」
「まぁ、それなりにね」
「では失礼しますね」
今の会話は飲み会では至って普通だろう。でも普通すぎるのだ。
何故かって?仮にも俺は28歳にして課長だし、今日だって初の飲み会なんだ。普通もっと歓迎されないかな?
しかも席は端っこだし、極め付けは「早く帰ってくれないかな」みたいな視線と隣の人と席が一つ空いていると言う事だ。
流石に初飲み会でルールを知らない俺でも分かる、厄介者扱いされていると。
でもまぁ、何回か飲み会に来たらみんな慣れるだろう。最初だけの辛抱だ、多分...
「お酒お注ぎしますね」
「え?さっき注いだばっかりじゃないか、気を遣わなくても良いんだよ」
「いえいえ、相模課長ですから」
今の会話も別に普通の会話だろう。でも飲み会に来てから6回はした気がする。
あれ?もしかして酔わせて早く帰らせようとしてるんじゃ...
「お酒お注ぎしますね」
「いや遠慮しておくよ。もう結構酔いが回ってるからね」
「そうでしたか。確か相模課長は初めての宴会でしたよね。ですので念のため早く帰って方が良いかもしれませんよ。酒の力は恐ろしいですから」
「...あ、ああ。忠告感謝するよ...」
はぁ、と深い溜め息をつく。9年間頑張った甲斐は何だったんだろう。そう思った俺は自然と居酒屋の外へと足が動いた。
居酒屋から出て3分ほど歩いただろうか。そこで俺は大きく口を開いた。
「やってられっかよこのクソ会社が!!!」
「部長の残業を頼む時の爬虫類みたいな目も嫌いだ!」
「たいして顔も性格も良くない同期の惚気話も嫌いだ!」
「何より俺を上手いこと働かせたあの皮脂脂が汚ねぇ社長が大っ嫌いだ!」
それは9年間社畜をしているのにも関わらず裏切られた者の9年分の重みがのった叫び、いやもはや咆哮のレベルだろう。。
明日から無断欠勤上等だ。俺のやりたいことをやろう。幸い貯金はあるからフリーターでも生きてけるだろう。
そのすぐ後、職質されたのは言うまでもない。