美少年の妹が女中に虐められるのは、どこも同じですか? 前編
初めて書き始めました。
何かを題材にしたわけではなく、一応オリジナルの世界です。(他作品から影響を受けていることは多々あります)
初めてなので、文脈がおかしかったり、誤字脱字等あるかもしれませんが、ご了承ください。
(どのぐらいがちょうどいいのか分からなかったので、長いかもしれません)
私の住む町には、有名な家があった。
何で有名なのかというと、その家の男の子は全員カッコいいからだ。その家族の中でも一番は、当主とその一族。一世代に一人は美少年と呼ばれる奇麗な顔立ちをした子が生まれる。独特なオーラをもっていて近寄りがたい存在……らしい。
でも、この家には謎が一つある。それは、女の子が生まれたとか、女の子がいる、という話を聞かない事だ。
女性はいっぱいいるんだけどね。
私? 私はこの家―相川家って言うんだけど、その中にいる女の子。と言っても、普段は男の子扱いされているんだけどね。理由は聞いたことがないけど、私の安全のためとお父様が言っていた。
一族に女の子がいないことと関係してるのかな?
私は、この世代の美少年、冬馬様の双子の妹という関係である。
まぁ、普段は弟だけど……。
そのため、色々と大変で面倒だ。学校で冬馬様が不自由しないように絶対同じクラスになるように学校側に言ったり、怪我をさせてはいけません、と女中たちに言われたり、話していたり隣にいるだけで、鋭い視線を向けられるし、良いことがない。
まぁ、私としては、冬馬様と一緒に入れるだけで、心が少し軽くなるんだけどね。誰も近寄ってこないから。
「千明? 弁当きたよ。食べよう?」
背中をつつかれ冬馬様に言われた。
冬馬様の声はすごく小さい。周りには絶対聞こえない声で話す。けど、私にはすごく聞き取りやすい声。
「申し訳ございません。ありがとうございます」
私は振り返り、頭を下げた。学校だからこのぐらいの謝り方だが、家に帰るときちんと床に手をついて謝罪をする。
「学校でそれは無し、という約束だけど?」
「そうでしたね。お飲み物買ってきましょうか?」
うぅ~、謝りたい。謝りたいよぉ。
「いや、持って来てくれたから、いらない」
「そうですか……」
私は、冬馬様の机の上にある二重になっているお弁当を開ける。豪華な方を冬馬様に、質素な方を私がもらう。外からは見えないようになっているから、周りからは何とも思われていないだろう。
冬馬様は、少し顔をしかめながらお弁当を受け取ってくれた。冬馬様の顔の変化はじっと見ていないとわからないくらいの変化である。私は百ミリℓのお茶をもらい、前を向いた。
「向き合って食べようよ」
また背中をつつかれる。
「冬馬様が良いのなら……」
と言いつつ、すごく周りの目が痛い……
「いいよ」
冬馬様は意外と我儘なのである。私は、さっきもらった一セットを持って、振り返り冬馬様の机にのせ、立ち上がって椅子を前後反対にし、座り直す。
いただきます。
弁当を持ち上げ 食べ始める。
あぁー、周りの視線がー!
「千明、やっぱり、女中に何かされてる? 何で僕とこんなにお弁当の差があるのかな?」
冬馬様が少しムッとした顔になる。
「それは、分からないですね。でも、僕は質素でも問題ないので、このままでいいです」
私は、下を向きながら言った。冬馬様と面と向かって話すことなんてできないからだ。いろいろな意味で。一応男の子としているために、話すときには僕を使っている。
「僕と双子なのに? 同じ時に一緒に生まれたのに?」
「僕に聞かれても分からないですよ。物心ついたときにはこうだったので」
「やっぱり、父さんに聞いた方が……」
「大事にはしたくないので、冬馬様に害がなければそれでいいです。僕がいる価値はありますから」
冬馬様の話している最中に遮ってしまった。
やっちゃったよー。どうしよう。でも、言っておかないと本当にやるし……、あぁー!
「一緒にいる僕が嫌なんだ」
「それは、申し訳ございません。冬馬様に害を与えているつもりはなかったのですが……。そう思われているなら、僕がいなくなりますので、いつでも言ってください」
私は冬馬様の机にお弁当を置いて、机の端にそっと指を置いて、深々と頭を下げる。
「謝らなくていいし、いなくならないでよ。このままもどうにかしなくちゃいけないと思うし、嫌だけど、千明がいなくなる方がもっと嫌だから」
「……そうですか。そう思ってくださっているなら光栄です」
私は顔をあげ、お弁当を取って食べる。
「だから、学校でそれは無しだって」
「申し訳ございません」
「謝るのも禁止にしようかなぁ?」
冬馬様が少しからかっている顔になる。
「それだけはやめてください」
私が真面目に言うと、冬馬様はクスッと笑う。
なんか笑われるようなこと言ったかな?
起立、礼。
学校の学活が終わり、教室から人が雪崩れるように出て行く。
私たちもこれから帰るのだが、窓から校門を見ると、まだ車が来ていなかった。当主一族の冬馬様がいるため、車で送り迎えしてもらっている。
「まだ来てないですね」
「歩いて帰る?」
「やめてください。僕が怒られます」
「そっかぁ」
私はつまらなそうな顔をしている冬馬様を横目に見ながら、スマホを鞄から取り出す。
着信はゼロ。何で来てないんだろう。……もしかして、本当に来ない?
そんなことを考えていると、手に持っていたスマホから着信音が流れる。届いたメールを開く。
―迎えに来ました―
それだけだ。私が女中とメールのやりとりをすることなんてほぼない。するとしても、もっぱら冬馬様の話を散々聞かれるだけ。こういう時に私にメールをするのは、冬馬様に直接送ることができないかららしい。
まぁ、まず、メールアドレスの交換なんてしてないと思うけど。……もちろん、僕は知ってる。
「迎えがついたらしいです。行きましょう」
私が冬馬様の方を見ると、冬馬様は窓の外を眺めていた。
「うん。車が来てるからね」
冬馬様が立ち上がると、教室内の空気が少しピリッとする。まだ数人教室内に残っていた。
「冬馬様、荷物お持ちします」
「嫌だけど、しょうがないよね……」
冬馬様はしぶしぶ鞄を渡してくれる。私はその鞄を持ち、机の横にかかっている自分の鞄を持って、冬馬様の歩く後ろをついて行く。
教室は三階にあり、階段を下りて行くと、二階の壁に寄りかかっている人がいる。その人は、私や冬馬様の兄の優斗様だ。
「車、来た?」
「うん」
優斗様の問いに、冬馬様が答える。
「鞄、お持ちします」
私が手を出すと、優斗様が少し間をあけてから鞄をのせてくれた。
ほっ、これで怒られずに済む。怒り出すと長いからなぁ~。
二人の後ろを歩いて、昇降口まで来ると、私は二人を抜いて、二人の下駄箱から靴を出し整えて置く。二人が履き替えると上履きを片付け、自分も履き替え、後を追う。
はぁ、はぁ、やっぱり違う学年だと行き来が多くて大変……。
車の近くまで来ると、私はドアを開けるために二人を追い越し、後ろのドアを開ける。
「お疲れ様です」
私は、前のドアのところに居る、女中に軽くお辞儀をしながら言った。なぜか、女中が絶対いる。運転手さんともメアド交換してるんだけど……。女中はずっと私を睨んでいる。
あぁー、怖っ。
二人が歩いてくると、女中は態度を一変し、にこやかに笑う。
「お疲れ様です。優斗様、冬馬様」
この落差、まじ何なの?
という声が、冬馬様の方から聞こえてくる気がする……。
二人がのると、私も隣に乗ってドアを閉めた。女中が乗りドアを閉めると、車はゆっくり発進した。
屋敷の前につくと、私は車を降りて、玄関の前まで行く。二人が来ると同時に扉を開けた。
「「おかえりなさいませ。優斗様、冬馬様」」
玄関を開けると、待っていた女中たちが全員床に手をついてお辞儀をした。
「お二人とも、美佳様が帰られております」
女中頭が顔をあげて言う。
美佳様とは、私や冬馬様、優斗様のお母様である。普段は事情があって家にいない。
「そうか、すぐに会うから、伝えておいてくれ」
優斗様が靴を脱ぎながら言う。
「冬馬様はどうされますか?」
「僕も会う。伝えておいて」
冬馬様は、家に戻ると声を大きくして話す。普段の三倍以上の声量な気がする。小さい声で話すと威厳が無いと言われるからだ。ちなみに、週四回ペースで喉を痛めている。
女中たちは、守りたいのか無理させたいのか、どちらなんだろう……。
「かしこまりました。あなた、伝えてきてください」
女中頭が、お辞儀をしていた一人に指示を出した。
「千明さん、鞄を」
女中頭は、私の方に手を出してくる。私は躊躇うことなく、鞄を渡そうとしたが、冬馬様の手によって遮られた。ここで躊躇っていたら、冷たい目で見られるし、変な噂が流されるからね。
「今日は千明が良い。少し話をしたい」
「ですが、千明さんは自分の物を片付けた後、色々なことをやらなくてはなりません。それに、千明さん以上のことができるものは何人もいるのですよ? 話すことなら夕食の時にできますし」
色々なことっていっても、女中たちに今日の出来事を詳しく話して、説教するだけでしょ。
女中頭が言うと、その場にいた女中全員が揃って頷いた。
これだけ格差をつけられて接せられても、夕食の時だけは一緒に食べる。外聞をよくするためだろう。それを、多分全員がねたんでいるから、こういう反応になるのであろう。
ほんと、呆れる。
「今じゃないといけないんだ。千明、行くよ」
「あ、はい」
私は、冬馬様に引っ張られながら、冬馬様の部屋に向かった。優斗様はもう戻っていた。
「あの、冬馬様、もう離してもらえませんか?」
「逃げない?」
学校で話すときの声量に戻っていた。
「逃げません」
私が言うと、冬馬様は手を離してくれた。
あ~、ドキドキした。誰にも見られてないよね? 玄関のところに居た女中除くけど。これ以上文句つけられても何もできないよ。
冬馬様に続いて階段を上ると、優斗様の女中が待っていた。
「千明さん、優斗様の鞄もらえますか?」
私は、女中に持っていた優斗様の鞄を渡した。女中が優斗様の部屋に入るのを確認して、二人で冬馬様の部屋に入った。
冬馬様の鞄を机の横にかけ、冬馬様の着ていた学ランの上着を受け取る。ちなみに私も、学ランを着ている。冬馬様の学ランの上着をハンガーにかけ壁にかけた。
「すぐに向かいますか?」
「いや、千明が片付け終るの待つよ。さっき言ったけど、話したい事があるし」
「では、先にお話を」
私が床に正座をする。
「作業しながらでいいよ。これ以上千明の時間を奪うわけにはいかないし」
「ですが、冬馬様の話を聞いている最中に何かをするなど、女中たちに文句を言われるだけですから」
「今は、二人しかいないし、僕の声は小さいから大丈夫だよ」
「そうですか」
私は立ち上がって、横に自分の鞄を置いて、冬馬様の鞄を持ち上げ机の上に置く。
冬馬様は、私の横にあった椅子を少しだけ引いて座った。
「あ、申し訳ございません」
私は、床にぶつかる勢いで手をついて頭を下げる。
「今は二人だけだから……ごめん、もういいから、片付けして」
「はい」
学校ではやらないが、家ではやる。何と言われようとそう決まっているから、二人でもやる。
私は、再び立ち上がって、冬馬様の鞄からお弁当箱や水筒、教科書などを取り出していく。
「千明は今日、母さんに会えそう?」
冬馬様がつぶやいた。
「どうでしょう。今、こういう状態になってしまっているので、後からいろいろ言われるのは目に見えているので、時間が余るかどうか……。それに、僕の身分ですと、美佳様と一対一になれるかもわからないので」
来週の学校の時間割を確認しながら教科書などを鞄に入れていく。
「そっか。じゃあ、僕が会う時に一緒に会えない?」
「その方が難しいかと……。女中たちが誰も寄せ付けないと思います」
「それもそうか……」
「多分、一対一でなければ会えると思います。美佳様は女中たちのまとめ役ですから、見に来ることはあると思いますので、その時に」
「それなら少し安心。帰ってくることがないのに、顔も合わせられないのは親子として、少し寂しいから」
「そうですね。少し寂しいです」
なんて言ってるけど、そうでもなかったりする。これがいつも通りだから。
「女中の話は、僕からも言っておくし、千明に会ってくれるようにも言っておく」
「ありがとうございます」
今度はゆっくり、床に座って手をついてお礼を言う。
「行こう。僕がわがまま言って、千明が怒られるかもしれないのは、ごめん」
「大丈夫です」
私はそう言いながら、顔をあげ扉を開く。机のところまで戻ってお弁当と自分の鞄を持って冬馬様の後について行く。
廊下には、玄関にいた時より半分ぐらい減ったが、女中たちが床に手をついて頭を下げていた。顔をあげると同時に、私のほうに冷たい目線を向ける。
怖っ……。
「母さんはどこに居るの?」
冬馬様は家で話すときの声量に戻っていた。
明日は喉を痛めているかも……。
「案内します。こちらへ」
女中頭ではない人が立ち上がって手で指し示す。冬馬様が歩き出すと、二人が立ち上がってついて行った。
「千明さんは、部屋で話を聞きますので、今日の洗い物と部屋を整えるのは免除します。……美佳様にも話さなくてはいけませんね」
女中頭はそ不機嫌そうな顔をしながら立ちあがり、女中が準備をする部屋に向かって歩き出す。私もついて行こうとすると、周りの女中に止められる。
「千明さんは一番後ろを歩いてください。今は近づかない方がいいですよ。……全く、あんなことをするから怒っているのですよ。自覚を持ってくださいな」
女中たちはそう言うと女中頭にぞろぞろとついて行く。私は一番後ろの人と少し間を開けて歩く。
はぁ、なんで、こうなるかな? 免除なんて、絶対嘘でしょ。やることになるに決まっている。
簡易的な取り調べ室のようなところに入り、私は女中頭と向き合うように置かれた椅子に座る。他の女中は、女中頭の後ろに立った。
今日は何を言われるのかな? もうなんでもいいけど。半分以上聞いてないし。
それから、多分一時間ぐらい永遠とお小言を聞かされた。半分以上が学校の話で、他の半分はさっき冬馬様と二人きりになったことだった。
それが終わったのは、いきなり簡易的な取り調べ室の扉が開かれたためだ。私はビクッとして椅子の端のほうに移動した。扉の外を見ると、美佳様、冬馬様、大地様、優斗様がいた。
……? 何で? どうかしたのかな?
大地様は、私たちのお父様であり、相川家の当主である。
「千明、一度こちらに来てくれ」
大地様に言われた。冬馬様の顔を伺うと少し嬉しそうだった。
冬馬様が嬉しそうなら、なんかあったのだろう。
「はい」
私は、床に置いていた自分の鞄を持って、扉のほうに歩いて行く。
「美佳、こっちは頼むぞ」
「はい」
美佳様は部屋の中に入って行く。入れ違いで私は部屋を出た。
「千明、話を聞きたい。ついてきてくれ」
大地様はどこかに向かって歩き出す。私がついて行くと、冬馬様と優斗様もついてくる。
大地様は自分の部屋の扉を開け、入って行く。私たちも入る。私は三人が座る場所を確認して、その後ろの方に座った。
「千明、そんな後ろに行くな。ここに来い」
大地様に手招きをされる。私は少しずつ三人に近づいて行った。
「うん。じゃあ、どこから聞こうかな?」
ここまで読んでくださりありがとうございました。
誤字脱字等あったら、教えていただけるとありがたいです。
二週間後に次回を出す予定です。読んでくださるとうれしいです。
なんか、色々と展開が早過ぎて、作者自身も追いつけていないような感じになっています。
女中に関しては、作者の偏見が混じっているかもしれません。まぁ、思いついたことを書くとこうなってしまうわけですね。
(千明たちに関する細かい設定などは決めておりませんので、物語を読みながら設定してみてください。作者より)