8話 あの、チートスキル多すぎませんか......
ヒロイン視点です。
「この服もだいぶきつくなったわね。もう7年前かぁ」
国王からエールの監視を命令されたシンシアは会議の翌日、駆け出し冒険者時代に自分が使ってた服を取り出した。
「年齢は18。経歴は不明。4ヶ月前、一年制の職業訓練所を卒業。黒の短髪。弓を携えたF級の冒険者」
仲間が手に入れたスキル用紙には、男の強さを読み取れるような情報は全く無かった。いや、その情報が確かなものなら、むしろ冒険者には向いていないと言ってもいいだろう。だが、もしケルベロスを単独で倒すほどの強者なら、高レベルの隠密スキルで、ギルドのスキル鑑定器程度なら騙すことはできるだろう。なぜ、実力を隠しているのかはわからないが。
「でも、私の緋の眼の前ではそれも無意味」
私のスキル【緋色の研究】は見た対象を完全に分析できる。それは何も物体にのみ有効なわけではない。人に対してそれを使えば、常時発動するパッシブスキルについて知ることができる。
「随分、宿に戻るのが遅いのね。何かトラブルでもあったのかしら・・・・・あっ!」
泊まっているという噂の冒険者宿の入り口で張り込みをしていると、ちょうどそれらしき人影を見つける。
「【緋色の研究】」
スキルを発動した瞬間、シンシアの両目が緋色の淡い光を帯びる。シンシアはパッシブスキル【暗視】により、暗闇のなかでも対象の姿を捉えることができる。
「どれどれ。どんなスキルをもって・・・・・・」
シンシアの言葉が、途切れる。
「な、なんなのこれは!」
その目には莫大な数のスキルが写った。
【千里眼】
【心眼】
【明鏡止水】
【超集中】
【極限覚醒】
【弓強化】
【矢強化】
【連続装填】
【連続射撃強化】
【弓術の心得】
【聖弓の心得】
【神弓の心得】
【正射強化】
【単射強化】
【精密射撃】
【正射補正】
【風の加護】
【晴天の加護】
【雨天の加護】
【曇天の加護】
【山の加護】
【海の加護】
【森の加護」
【沼地の加護】
【砂漠の加護】
【地下迷宮の加護】
【魔界の加護】
【宵闇の加護】
【嵐の加護】
【無敵の加護】
【闘神の祝福】
【戦女神の祝福】
【運命女神の祝福】
【太陽神の祝福】
【死神の寵愛】
【認識齟齬の呪縛】
【御霊卸】
【降神術】
【運命の祝福】
【大英雄補正】
【救世主補正】
【激運】
【天衣無縫】
【鋭射】
【鈍射】
【窮鼠の反撃】
【火事場の馬鹿力】
【反射神経向上】
【腕力強化】
【脚力強化】
【消音】
【消姿】
【消匂】
【花鳥風月】
【消矢筋】
【見切り】
【疑似未来予知】
【心映複写】
【絶対模倣】
【剣の厄神】
【槍の厄神】
【盾の厄神】
【斧の厄神】
【魔の厄神】
【魔力増加】
【属性付与:火】
【属性付与:水】
【属性付与:雷】
【属性付与:風】
【属性付与:土】
【属性付与:光】
【属性付与:闇】
【属性付与:虚数】
【属性耐性:火】
【属性耐性:水】
【属性耐性:雷】
【属性耐性:風】
【属性耐性:土】
【属性耐性:光】
【属性耐性:闇】
【属性耐性:虚数】
【属性超強化】
【刹那の矢】
【天空の覇者】
【痛撃】
【重撃】
【音速の矢】
【神速の矢】
【因果逆転の矢】
【時空歪み調整】
【ゼノンの矢】
【第六感】
【阿頼耶識】
【天冥の弓】
【一にして全】
【虚無の矢】
【善の矢】
【無限射撃】
【無限装填】
【虚空の弓】
【全能の弓】
【魔物特攻】
【使徒殺し】
【龍殺し】
【魔人殺し】
【魔王殺し】
【不死鳥殺し】
【鬼殺し】
【吸血鬼殺し】
【邪神殺し】
【異世界転生者殺し】
【愚者の矢】
【王の矢】
【無限射程】
【正射省略】
【透射】
【射程省略】
【異次元の狙撃】
【超次元の矢】
【成長加速】
【変幻の矢】
【必殺の矢】
【確殺の矢】
【物理貫通】
【結界貫通】
【魔法貫通】
【複数掃射】
【多重掃射】
【先見の明】
【金剛】
【剛体破壊】
【画竜点睛】
【水滴石穿】
【九死一生】
【乾坤一擲】
【一意専心】
【心頭滅却】
【不撓不屈】
【風林火山陰雷】
【熱烈峻厳】
【背水之陣】
【魅了耐性】
【一衣帯水】
【起死回生】
【獅子奮迅】
【疾風迅雷】
【電光石火】
【絶対必中】
【不可避の矢】
【追撃補正】
【逆境補正】
【初見補正】
【初戦補正】
【連戦補正】
【ハイゼンベルグの不確定性原理】
【ゲーデルの不完全性定理】
【ディラックの海】
【マクスウェルの悪魔殺し】
【シュレディンガーの猫に小判】
【ヒルベルト空間補正】
【神の見えざる手の補正】
【サー・アーサー・エディントンの矢】
【グランドカノニカル・アンサンブル】
【ラプラスの悪魔殺し】
【NP困難打破】
【ラッセルのパラドクス】
【悪魔の証明の立証】
【カノッサの屈辱の倍返し】
【テセウスの魔棲物】
【アキレスと亀甲獣骨】
【梵我一如】
【輪廻解脱】
【天上天下唯我独尊】
【那須与一の加護】
【雷上動】
【鵺殺し】
【天若日子の加護】
【天羽々矢の影】
【月の女神の加護】
【太陽神の加護】
【黄帝の加護】
【神龍の加護】
【アルジュナの加護】
【ヴィシュヌの加護】
【シェキナーの加護】
【ヒュドラの毒矢】
【フェイルノートの一撃】
【インドラの加護】
【ジークフリートの一撃】
【ヘラクレスの一撃】
【ピロクテテスの一撃】
【ペルセウスの加護】
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「あ、ありえない!」
シンシアはまずそのスキルの多さに衝撃を受ける。
スキルというのは大きく、パッシブスキルとアクティブスキルの2つに分けられる。
本人の意思に関わらず、常時発動するパッシブスキル。
そして、本人の意思によって発動される、技のようなアクティブスキル。
『八聖』といえども、パッシブスキルを30以上もつものはいない。しかし、目の前の少年は無数のパッシブスキルを所有している。
「それに、【千里眼】【心眼】って」
エールのもつスキルのほとんどはシンシアの知らないものだった。だが、その2つのスキルについては熟知していた。紛れもなく[隠密者]系統の秘技とされるスキルだ。
もし他のスキルも同じくらい強力なスキルだったら―――。
「一人でケルベロスを倒すなんてこと、造作もないはずだわ」
明日、シンシアは駆け出し冒険者のふりをして、エールに近づく手はずになっている。その計画が今更になって重みを増す。
「彼が敵のスパイだったら・・・・・・」
ゴクリ。
自分の死は免れないだろう。いや、この国の崩壊ももはや確実だ。
全てはこの一人の少年にかかっているのだ。シンシアは冷や汗をかく。その感覚は何年ぶりのものだろうか。
「ん? 誰かいるのか?」
エールの声が聞こえる。
次の瞬間、シンシアはその場から姿を消した。
*****
「冷静に。冷静に」
深呼吸をしたあと、エールに声をかける。
「ねえ、ちょっといい?」
「ん? どうした?」
エールは後ろ振り向く。
爽やかな顔立ち。黒髪の短髪。標準的な体格に、強さは感じられない。だがしかし、この少年こそが王国の運命を揺るがすかもしれないのだ。
「もしよければ私と一緒にクエストにいってくれない?」
恐る恐る私は言葉を発する。
「お、俺でよければぜひ。でも弓撃手だぞ?」
言葉が詰まった? 警戒されてる?
「そんなの関係ないわ。私、シンシアって言いうの」
大丈夫。こちらが動じなければ問題はないはずだわ。
「あれ、どこかで会ったような」
ぎくり。
昨日の夜の偵察がバレてた?
それならまずい。敵か味方かもわからない相手に素性を明かすわけにもいかない。とりあえず話を逸らさなくては。
「え、ええ! はじめてじゃないかしら。それよりもお名前はなんて言うのかしら?」
思わず手を握ってしまった。大丈夫だろうか。
「そ、そうか。人違いならすまない。たしかにこんな美しい人にあって忘れるなんてことないか。俺の名前はエールだ」
え、褒められてる?
もしかしてバレてないのかも。
「どのクエスト受けようかしら。私、D級だからゴブリン退治とかは?」
「いいのか? 俺はF級だから足を引っ張ってしまうかもしれない」
「平気よ。索敵や隠密は任せて。危なかったら無理せず、すぐに逃げましょう」
「そうか。なら、行ってみよう。迷惑をかけるだろうし、報酬の分配はそちらで決めてくれて構わない」
ひとまず話は決まった。果たして、彼の力量を正確に見極めることはできるのだろうか。
ブクマ50ありがとうございます!
今回は初のスキル箇条書き回です。途中で少し遊んでみたところもありますが、一応どんな能力かは全部考えてあります。
ブクマ、評価、感想、レビューなどお待ちしてます!!