46話 虚無への供物
「【武具召喚】」
ジークがスキルを発動すると、その背後に亜空間から100の武器が出現する。
「【春の雪】」
一にして百の矢。
俺の放った渾身の一撃をジークは相殺する。
「なかなかやるな。ランシズより強い。前の俺だったら瞬殺だっただろう。だが、この数年の間に俺も強くなったんだ」
攻防が続く。
こちらのほうが技量は上だ。しかし、再生能力が今まで戦ったどの相手よりも厄介だった。
バコン!!
ジークの一撃を俺が躱すと、壁が崩壊し、隣の部屋があらわになる。
そこにはアーサーたちがいた。
「お前たち何を!」
アーサーはジークを視認する。
「ほう、魔人か。試練は一度中止。こっちが優先だ」
アーサーたちは武器を構え、戦闘体制に入る。
「俺たちの強さを見せつけるいい機会だ。一瞬で終わらせよう」
それぞれが大技を放つ素振りを見せる。
が、しかし。
「邪魔者は失せろ」
ジークが指を一振りすると、アーサーたちのもとに武器が襲いかかる。そしてパーティーは壊滅する。
「ははは! 雑魚め! 魔王様から俺はさらなる血をいただいたんだ。今の俺はどの魔人よりも強い。お前たち人間ごときが倒せる相手ではないんだよ!」
どうするか。
【春の雪】ではやつの再生力を押し切ることはできない。
【奔馬】この場所で放てば街に甚大な被害が出るだろう。
そんなことを考えるうちにも戦闘は続く。
膠着状態。それを崩すためにジークが先に動いた。
「思い出したよ。お前みたいなウザイ人間の倒し方をな!!」
そう言って、ジークが指を振るうと、十の剣がミルキィの元へ向う。
バリン!
だが、その全てはミルキィの元へ到達するまえに撃ち落とされる。
「お前がそういう手に出ることはわかってる。だから予めミルキィには【暁の寺】を発動させている」
第三奥義【暁の寺】。
それは防御のための技。一人の対象者をあらゆる攻撃から守る奥義。原理不明の絶対空間は、原理不明が故に突破は不可能。物質、非物質に関わらず全ての攻撃は無効化され、矢に撃ち落とされる。
「へー。なかなかやるじゃねえか。認めよう。お前は強い。【武具召喚】だけで勝てると思っていた俺が間違いだった。だがな、俺には禁術が残ってる」
「禁術?」
「あぁそうだ。いまから俺が発動する技は魔王様のものだ。それを発動した瞬間、決着が決まってしまうそんな代物だ。単純に言えば、面白くないんだよ。だから俺はこの技を禁術として封印していた。だが、それももうやめだ。お前を殺すために俺も全ての技を使おう」
ジークは笑みを浮かべながら、その技を発動した。
「【虚無への供物】」




