45話 記憶の間
記憶の間。
城の最上階に位置する三つの隠し部屋。そのうちの一つに俺とミルキィの二人は入る。
部屋の中は暗く、中央には真っ赤な色をした巨大な水晶が置かれていた。
「これに血を捧げます」
そう言って、ミルキィは指の先を軽くナイフで切り、水晶に血を垂らす。
俺は自らの指を噛みちぎり、同じように水晶に血を捧げる。
・・・・・・。
水晶が淡い光を放つ。
そして。
ドガン!!!
大きな音とともに、天井が崩れ、部屋に光が差す。
「何が起こって―――」
ミルキィがそう呟く。
瓦礫の中に誰かが立っているのが見える。
「お前はまさか………」
俺はそいつに見覚えがあった。
「ジーク―――」
ジークは俺を見ると、首をかしげた。
「顔に見覚えがある。どこかで会ったか?」
「忘れたとは言わせないぞ。お前は俺の爺ちゃんを殺したんだ」
「爺ちゃん? あぁ。そうか。お前、あの時のランシズの孫か。なるほどな。王都で俺の計画を邪魔する弓撃手はお前か。ようやく合点がいったよ」
「エール様、気をつけてください。あれは血の記憶なんかではなく―――」
ミルキィのその一言で俺は理解する。
そうか。目の前の敵は本物のジークではなく、俺の中の記憶が生み出した産物であると。
だとしら、俺はなんとしてでもここでこいつを倒さなければならない。
「いつまでも過去を見ていちゃ、爺ちゃんとの約束は守れないからな」
そうして最終決戦が始まる。
明日で完結します。




