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4話  訓練所に通っても才能なしな件

話が動き始めます。










 訓練所には1年間通った。


 ニッコウさんが紹介してくれた訓練所は一年制の上級者用のもので、転職を希望する冒険者を主なターゲットとした場所だった。そこでは地下迷宮ダンジョンや魔界に関する講義はほとんどなく、技術のみを極める厳しい訓練が日々行われていた。


 剣、槍、斧、盾、これらのスキルはどうやら俺に向いていなかったらしい。教官は口を揃えてこういった。


「お前の動きには独特な癖がある」


 おそらく、長年培ってきた弓の感覚が新たな武器の習得を邪魔していたのだろう。しかし、逆に体術や隠密に関してはそこそこの適性がありそうだった。



 1年間の訓練所生活を終えると、俺は以前と同じようにギルドへ向かった。



「エール、お勤めご苦労さん」


「ニッコウさん。わざわざ来てくれてありがとう」


「あぁ。お前の成長を俺も見たくてな。どれ、どんなスキルを身に着けたんだ?」


 俺がスキルチェックを行うと、ニッコウさんは紙に書かれた内容を確認する。


「これは・・・・・・?」






  ----------------------------------------------------------------

 〈スキル鑑定結果〉


 [剣士セイバー]:なし

 [槍騎兵ランサー]:なし

 [斧操者アックス]:なし

 [守護者ガーディアン]:なし

 [武闘家ファイター]:なし

 [隠密者シーカー]:なし

 [魔術師マジシャン]:なし

 [聖職者プリースト]:なし

 [その他]:なし



 [推奨職業]・・・・なし

 ---------------------------------------------------------------



「これでも『推奨職業なし』か。何か妙だな。アクティブスキルのほうは身につけたんだよな?」


「アクティブスキルって、【受け身】とか【瞬歩】とか【隠密】のことだろ?」


「そうだ。常時発動するパッシブスキルと違い能動的に発動するいわば技のようなものだ。このスキル鑑定器ではパッシブスキルしか測ることができないから、お前の身につけたアクティブスキルが出てこないのはわかる。だが、職業毎の基本的なアクティブスキルを身につけることができれば、ある程度のパッシブスキルは自然に身につくはずなんだがな......」



「もしかして、俺は冒険者になれないのか?」


「いや、そこは大丈夫だ。卒業証書はもらっただろ? それがあれば冒険者にはなることができる。ただ―――」


「ただ?」


「階級は一番下の更に下。F級から始まる」


「F級? そんな階級が」


「あぁ。訓練所や魔法学校に通っても推奨職業が生じなかった者のための救済処置だ。すまない。本当は今すぐにでもお前に地下迷宮ダンジョンを攻略してもらいたかったが、こればかりは俺の力ではどうすることもできん。F級なら他の訓練所に通うこともできる。スキルアップがしたいなら利用してみてくれ」


 地下迷宮ダンジョンに入るためにはC級以上の階級が必要だ。訓練所を卒業した冒険者は通常ならC級から始めることができるのだが、どうやら俺は不可能なようだ。



「不甲斐ない結果を見せてしまってすまない。色々と世話をしてくれてありがとう」


 俺はニッコウさんに礼を言う。


「いやいや、いいんだ。何かあったらまた俺を頼ってくれ」



 熱い握手を交わし、俺たちは別れる。



「早速クエストを受けてみるか」


 俺は受付へ行き、F級クエストの受注をお願いする。



「F級ですと、こちらになりますね」


「ん? 魔物の討伐クエストがない!?」


「はい。F級クエストは主に街のボランティアになります」



 ボランティアか・・・・・。

 俺のイメージに描いていた冒険者像とはかけ離れたものだが、それも立派な人助けだ。

 何事も謙虚に。努力を欠かさなければいつか実る日が来る。


 俺の冒険者生活はこうして始まったのだった。




*****




「エールちゃん、いつもありがとうね」


「いえいえ。これが俺の仕事ですから」


 俺はF級クエストをこなす傍らに魔法学校に通う生活を4ヶ月ほど続けていた。F級冒険者の主な仕事は街の掃除や荷物の運搬などの力仕事。【瞬歩】はそれらの仕事をするのに役立った。


「にしても、冒険者になるのがこんなに難しいとは」


 魔法に関しても俺は才能が無いようだった。


 魔法学校に通い、4ヶ月の期間で覚えられたのはわずかに《ミニフレイム》と《小回復リトルヒール》だけ。《回復ヒール》も使えないようじゃ、パーティーの足手まといになってしまう。



「いや、暗いことを考えるのはよそう。慢心するのは駄目だが、落ち込みすぎるのもよくない。弓の修行は一日だって欠かしたことはないだろう。いずれそれが必要になる日が来る」


 そう思い、俺はコツコツと仕事をこなしていた。




「ふぅ。これで全部か」

「兄ちゃんいつもありがとな。助かってるぜ」

「いえいえ!」



 夕暮れ時。俺が運搬の仕事を終えたその時だった。


「なんだ?」



材料庫の奥、女の叫び声のようなものが一瞬だけ聞こえた。


「誰か――助けて――」








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