36話 地下迷宮から帰還します
「ただいま。ミルキィ」
「おかえりなさい。エール様。もしかして先程の衝撃って」
「あぁ。第二奥義【奔馬】を使って三毒を倒してきた」
「さすがエール様! それでこそ私の英雄です!」
そう言ってミルキィは俺に抱きついてくる。
俺はしばらくの間、ミルキィの頭を撫でる。
「あ、そういえば肝はどうしました?」
「あ……」
まずい。倒すことに夢中で肝を持って帰るという一番大事なことを忘れてしまっていた。そうしよう。
「すまん。倒すのに必死でついやっちまった。多分、一つの肉片も残ってないと思う」
「そうですか。まあ全員脱落になるようなことはないと思うので大丈夫だと思います。それよりもエール様が無事で良かったです」
「俺の方は平気だよ。ゴブリンのときと同じように決めてに欠けていただけで、負ける可能性は最初からなかった。ミルキィの言う通り、弓矢が弱点みたいで良かった」
「あれ、私そんなこと言いましたっけ?」
それにしても今回の収穫は大きかった。
50階層のフロアボス。弓矢と相性が良い敵ですらここまで苦戦するとは。
あの三毒だけ異様に強かった点を考えても、やはり今まではミストがデバフ魔法を魔物たちにかけてくれていたことは間違いない。礼を言わなくては。
俺はミストの元に近づき、感謝を述べる。
「ありがとう。君のおかげで助かったよ」
「え、ええ」
「どうした? 顔色が悪いみたいだが。まだ毒が残っているのか?」
「だ、大丈夫。どうして私なんかに」
ミストは青ざめたような顔をしている。俺が彼女を心配していると、エマが近づいてくる。
「先生! お疲れさまですぅ」
「おお。エマか。毒のほうはもう大丈夫か?」
「はぁい。見ての通りもうピンピンですよぉ」
「それはよかった。ところで俺に何か用か?」
「あのぅ。この試練が終わったら稽古に付き合っていただけないかと思いまして」
「稽古か? 俺が教わりたいくらいだが」
「もぅ。冗談やめてくださいよ。でも本当にお願いしますよ?」
「わかった。約束するよ。時間があるときに声でもかけてくれ」
「はぁい」
そう言ってエマは去っていく。
「またあの泥棒猫ですか。シンシアといいあの泥棒猫といい、どうして私の邪魔をするんですかね」
「邪魔? シンシアもエマも良いやつだと思うが」
「もう馬鹿。いつまで鈍感なんですか!」
「すまない。また何かやってしまったか?」
「あー、もうなんでもないです! とりあえず上に戻るまでの間はずっと私が独占しますからね!」
ミルキィが謎の宣言をしてくる。
こうして俺たちは帰路へと着くのだった。




