30話 地下迷宮の中でも修行はできます
暗い闇。
目をつぶってから俺はイメージをする。
見慣れた山。
弓と矢を手に取り、また目をつぶる。
腐敗した森。
俺が来たかったのはここだ。
ザワザワザワ。
森が蠢き、5体のそれは出てくる。
ホブゴブリン。いや、ゴブリンロード。
今隣にシンシアの姿はない。1対5の戦い。
俺は正面の一体に初めの一矢を放った。
*****
続いてイメージしたのは王都バビロンの一角だった。
目の前には、ミルキィを襲った獰猛な犬。
だが、それだけじゃ足りない。爺ちゃんの話にあったケルベロスのイメージと同化させながら、犬の頭を3つから5つに増やすと、その身体も数倍になるよう調整する。
刹那。犬がこちらに向かい、迫ってくる。
流石に速い。左腕がもがれ、激痛が走るが耐える。
「《小回復》」
俺が回復魔法を唱えると左腕はすぐさま再生する。
そして弓矢を番えると、矢を放った。
******
・・・・ル様・もう・・・・すよ! ・・・・ください!
「エール様! もう朝ですよ! 起きてください!!」
ゆさゆさと身体を揺らされ、俺は目を覚ます。
「おはよう。ミルキィ」
「おはようございます。今日も修行ですか?」
「あぁ。地下迷宮に入ってからは修行する時間の確保が難しいからな」
「エール様はほんとに修行が好きですよね。でもすごいです。夢の中で自由に修行できるなんて。明晰夢っていうんでしたっけ。それができるなら私はずっと本を読んでたいです」
「ははは。そういう使い方もできるかもしれないな」
今日はついに50階層に突入する日だ。
俺とミルキィの作戦は成功し、ここまで大幅な時間の短縮ができた。
ビストラは何かと理由をつけ50階層を目指す俺たちを止めようとしたが、ミルキィがそれなら同盟を破棄すると脅すと渋々と言った様子で、先へ急ぐと言った。
「準備は大丈夫ですか?」
「まあなんとか。秘策はちゃんと用意してるから安心してくれ」
ゴブリンとの戦いで俺はギリギリ勝利することができた。その時の反省を活かし、何個かスキルを開発している。今回はそれらを使う場面が来そうだった。




