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26話 目の前で強い魔物の大群が消滅したんだが?





24話の別視点になります。







「来るぞ! 用意しろ!」


 42階層。草原エリアの一帯。


「ブラックエリクの群れだ。フォーメーションはAでいい」

 俺の指示でメンバーは所定の位置につく。


 25頭の黒いヘラジカ型の魔物に向けてまず魔術師の二人が大技を放った。


「「《オーバーマジック・プロデメル・フレイム》」」


 獄炎の柱。

 本来フロアボスに放つべき威力のそれは15頭のブラックエリクを焼き殺す。ビストラ様の命令通り、二人の魔術師も最初から魔惜しみになく魔力を使ったのだ。



 10頭のブラックエリクが近づく。



「【大壁ザ・ウォール】」

 俺はスキルを発動する。


 巨大な壁がブラックエリクの前に出現すると、その動きを止めた。


「やれ!」



 グレイス、ヤリモンド、ブルーノの三人が足止めされている魔物に斬りかかった。


「【火炎斬かえんぎり】」

「【電撃疾風ザ・ライトニング】」

「【岩砕一撃がんさいげきつい】」


 素早い剣撃。

 鋭い一突き。

 大きな重撃。

 それぞれが洗練された一流の武技だ。



 3人の攻撃により、7頭のブラックエリクが成すすべもなくやられる。

 しかし、3頭は壁を突破し近づいてくる。やはり42階層の魔物となると一筋縄では行かないようだ。



「【絶対防御パーフェクト・アーマー】」

 俺は突進してくる3頭を受け止める。


「いまだ!」


「「「うおおおおお!」」」

 三人が抑えつけているブラックエリクを倒す。いつもよりその動きには力がある。彼らも宴会での屈辱を晴らすべく、奮起しているのだろう。


 3人の巧みな連携により、ブラックエリクは一頭残らず駆逐される。



 ―――――完璧な戦いだった。




 一通り戦闘後の処理を終えると、俺はエールの元へ向った。


「見たか? これが俺たちの実力だ」


 スピーディーかつパーフェクトな最高の動きだった。

 もしかすれば、俺たちの動きを目で追うことさえ、こいつにはできなかったかもしれない。


「あぁ。面白いものを見せてもらったよ」


 だが、その表情には動揺がみえる。

 こいつは余裕ぶっているだけで、内心ではあまりの実力差に絶望しているに違いない。



 エールは何かショックを受けたように立ち止まり思考をしている。



 そこにミルキィが現れ、言った。

「まさかこう出てくるとは思いませんでした。彼らと同じようにお願いします」


 この小娘は俺たちの意図を読み取り、同じように全力を出せと命じた。


「わかった。お、ちょうど来たみたいだな」


 エールがそれを承諾する。そして次の瞬間、魔術師のメルが声をあげる。



「レッドヴァルフの群れです!」

「数は?」

「40です!」

「40のレッドヴァルフか。まずいな」


 レッドヴァルフ。このエリアで一番会いたくない敵だ。42階層の食物連鎖において頂点に君臨する魔物。

 暴食の限りをつくし、素早い動きと息を合わせた連携で、狙った獲物を確実に狩る。S級冒険者ではまず太刀打ちできない相手だ。俺たちでも40頭ものレッドヴァルフの大群と戦えば、軽視できない被害を受けるだろう。



 ―――黒煙を使って、撤退するのが安全か。



 俺が判断を下した時、声がした。



「やってもいいんだよな?」


「お願いします」


「わかった」


 レッドヴォルフ相手に遠距離攻撃を仕掛ける? 何を言っているんだこいつは。


 レッドヴァルフの反射神経は最速とも言われている。10mの距離でさえ、どんな魔法をも回避するほどに機動力がある。倒すには接近戦に持ち込むのが定石だ。そんなことすら知らないとは。



 やはり、大した実力者ではないのだろう。そう結論づけた俺の横で、エールは弓を構える。その動きには無駄がなかった。



 決して早い動きではない。だが、流れるように矢を番えるその一連の動きは芸術のようでもあった。撤退することも忘れ、その動きに俺が魅入られているうちに、エールは力いっぱいに弦を引き絞る。


「これくらいかな」


 そう、一言だけ言うと矢が放たれる。


 シュバン!!



 空気を切り裂くような音。



 俺は目を疑った。そして、それが現実のことだとわかると、思考が停止した。



 100mほど先のレッドヴァルフの群れが、一匹残らず消失したのだった。




「あ、ありえない」

 一体何が起きたのだろうか。


 他のメンバーも驚いた表情を浮かべている。


 エールはそれを見てもなお、何事もなかったかのように涼しい顔をしていた。まるで、これくらい普通だと言わんばかりに。



「おい。いまの!」

 思わずエールに詰め寄る。


「まあお互い様だ」



 そういって、目の前の男は去っていった。







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