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24話 手加減しました

「来るぞ! 用意しろ!」


 42階層。草原エリアの一帯で、俺たちは魔物の群れに襲われようといていた。


「ブラックエリクの群れだ。フォーメーションはAでいい」

『曇天の霹靂』リーダー、守護者のウィリアムが指示を出すと、メンバーは所定の配置につく。


 25頭の黒いヘラジカ型の魔物がこちらに向ってくる。



「「《オーバーマジック・プロデメル・フレイム》」」


 二人の魔術師が魔法を唱える。赤い炎の柱が15頭のブラックエリクを焼き殺す。



「【大壁ザ・ウォール】」

 ウィリアムがスキルを発動する。


 巨大な壁がブラックエリクの前に出現すると、その動きを止めた。


「やれ!」


 剣士、槍騎兵、斧操者の三人が足止めされている魔物に斬りかかった。


「【火炎斬かえんぎり】」

「【電撃疾風ザ・ライトニング】」

「【岩砕一撃がんさいげきつい】」


 3人の攻撃により、7頭のブラックエリクが成すすべもなくやられる。

 しかし、3頭は壁を突破し近づいてくる。



「【絶対防御パーフェクト・アーマー】」

 ウィリアムが突進してくる3頭を受け止める。

「いまだ!」



「「「うおおおおお!」」」

 剣士、槍騎兵、斧操者の三人はウィリアムが抑えつけているブラックエリクを倒した。



 一通り戦闘後の処理を終え、ウィリアムがこちらに近づいてくると言った。

「見たか? これが俺たちの実力だ」

 自慢気に彼は言う。


「あぁ。面白いものを見せてもらったよ」

 一応、表面上は相手に合わせる。



 はっきり言って、馬鹿馬鹿しかった。



 普通の冒険者パーティーの戦闘を見るのは初めてだったが、それでも今目の前で行われたのは明らかに手抜きだったということはわかる。


 最初の魔法は遠距離攻撃というメリットを活かせてない。魔法を放つタイミングがおそすぎるし、20mの距離で放つなら接近戦と変わらない。それに弓矢よりも強い魔法がたった15頭の魔物しか屠れないのもおかしい。だいたい接近戦の3人の動きが遅すぎる。弱そうな魔物の攻撃を何度か攻撃も受けているのもわざとらしい。



 ――――ミルキィの言う通り、向こう側も手を抜いているのだろう。



 ここまで露骨にくるとは思わなかったが。



 俺がそこまで考えていると、ミルキィが言う。

「まさかこう出てくるとは思いませんでした。彼らと同じようにお願いします」


 俺にもできるだけ手を抜けということだろう。


「わかった。お、ちょうど来たみたいだな」


 200m先。赤い狼の群れがこちらに向ってきている。



「レッドヴァルフの群れです!」

「数は?」

「40です!」

「40のレッドヴァルフか。まずいな」

 そんな会話が聞こえる。



「やってもいいんだよな?」


「お願いします」

 ミルキィは言った。


「わかった」

 そう言うと、俺はできるだけゆっくりと弓を構える。


 手加減をしろ。手の内を見せないように、わざと鈍く。わざと弱く。


 弦を引き絞ると、矢を放つ。


「これくらいかな」



 ヒュッ!



 ノロノロと矢が飛び、40頭のレッドヴォルフが倒れる。



「あ、ありえない」

「今なにが」

「嘘、だろ」


『曇天の霹靂』メンバー全員がこちらに目を向ける。



 ――――流石にやりすぎたかもしれない。


 矢を無駄にすることはセオリーに反するため、わざと外すようなことはしなかった。しかし、十分に手加減はした。こちらが手加減していることも向こうにバレたのだろう。



「おい。いまの!」

 ウィリアムが俺に言う。


「まあお互い様だ」



 お前たちが本気を見せない限り、俺も本気になることはない。



「いやなチキンレースだ」



 俺は一人、そう呟いた。







「続きが気になる!」

「面白いかも!」

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