22話 シンシアが見送りに来てくれました
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「これが、地下迷宮の裏口。イメージとは違うな」
俺はミルキィ、ビストラ、そして『曇天の霹靂』の8人のメンバーとともに、王都にある秘密の部屋へと通された。秘密の部屋は俺が初めてミルキィと出会った場所の近くにあった。
部屋の中は広く、その壁面には様々な魔法装置が設置されていた。地面には複雑な図形や特殊な文字の刻まれた大きな魔法陣が虹色の光を放っていた。
「ここにあるのは古代魔術の一つ《門》を擬似的に再現できる魔法陣。王国の知恵を総動員して作った、我が国の誇りです」
ミルキィはそう俺に説明してくれた。
黒い服を身につけた、王家の使用人たちが転送の準備を始める。
そろそろ準備が終わるというところで、見知った人物が現れた。
「シンシア! どうしてここに!」
シンシアは普段まとめている髪を下ろし、ラフな格好をしていた。ゆったりとした大人の女性らしい服装。その姿は相変わらず美しかった。
「あなたたちの見送りに来たのよ。現役の『八聖』である私が一緒に地下迷宮に行くことはできないから、せめてね」
「八聖? なんだそれ」
「もう。この前説明したでしょ」
呆れたようにシンシアは笑う。
「すまん。忘れっぽくて。でも、見送りに来てくれてありがとう」
シンシアとは再会して以降、度々連絡を取り合っている。
俺と比べると何やら忙しい毎日を送っているシンシアだが、お互いの予定の会う日は、遊びに出かけたりもする。この前、ビストラの宴会があってから、今日に至るまでの半月間で何度か飲みにも行った。
俺がシンシアと会話をしていると、横にいたミルキィが頬を膨らませながら言った。
「どーして、シンシアは私の邪魔をするのよ! エール様は私のものなんだから!」
「これから数ヶ月は独り占めできるんだからいいじゃない。大体エールくんは騎士であって、ミルキィ様のものではないわ」
「それは、そうだけど」
渋々と言った表情で、ミルキィは引き下がる。
それからシンシアは何かを思い出したように、口元にかすかな笑みを浮かべ爆弾を落とす。
「あぁ。でも、心配だわ。だってミルキィ様相手じゃこの前みたいに甘えることはできないわけでしょ? 可愛かったなぁ。私に撫で撫でしてってお願いしてくるエールくん」
「なっ! シ、シンシア! それは言わない約束じゃ。違うんだミルキィ。あれは酔ってただけで」
「あわわわわ!」
目を大きく見開いて、ミルキィは混乱した表情を浮かべる。
その隙にシンシアは俺の元へ近づき、腰に手を回すと、ぎゅっと俺を抱き寄せた。柔らかい感触。ふわりと漂う甘い髪の匂い。
「帰ってきたら、またデートしましょう」
耳元でシンシアがそっと囁く。その優しい声に脳が溶かされそうになる。
俺の頭が思考を停止をしていると、シンシアはすっと離れる。
「じゃあね。二人共頑張ってね」
シンシアはウィンクをしたあと、笑顔で手を振る。
こうして、慌ただしく俺たちは地下迷宮へ転送されるのだった。
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