20話 弟子入りしました
別視点です。
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「あのあの。エールさん。うちのメンバーが迷惑かけました。ごめんなさい!」
私はエールさんの元に駆けつけ、謝罪をしました。
「エール様に何の用ですか。また何か悪いことでもするつもりですか」
ミルキィ様は私のことを警戒しているようです。無理もありません。うちのメンバーが迷惑をかけているんですから。
いまできるのはただ誠心誠意謝ることだけ。
「あぅ。エマはただ謝りたくて。本当にすみませんでした!」
「大丈夫だ。少しだけイラついたがもう収まった。お前は俺に何の用だ?」
「私、魔術師のエマって言います! 提案をしたくてここに来ました」
エールさんは私のことを訝しんだあと、言いました。
「提案? 一体どんな」
「もしよければその弓を綺麗に修繕することのできる鍛冶屋を紹介しようかなと思いまして」
「鍛冶屋? あぁ。わざわざ気を遣ってくれたのか。ありがとう。でも、その必要はない」
しかし、それは断られてしまいます。
「どうしてですか?」
もしかしたら、行きつけの場所があるのかもしれません。
しかし、私の予想は外れてしまいました。
「これくらいの故障なら自分で修繕できるんだ」
そう言うと、エールさんは優しく弓を撫でスキルを発動しました。
「【武具修復】」
弓が淡い光に包まれると、次の瞬間、弓は元の姿に戻りました。
「う、嘘ですよね? だってそれは鍛冶屋の職人さんでも三十年以上の修行の上で初めて覚えられるはずの―――」
【武具修復】
それは鍛冶の道を極めた職人のみが為せる技。
私が普段から杖の修繕をお願いしている老年の職人さんも、長く厳しい修行の上でその技を身につけたと言っていたはずです。そんな彼でさえも、いくら形が崩れていないと言え、いま目の前で行われたような完璧な修繕をするのには、30分以上の時間は必要でしょう。しかも、鍛冶場素材があって初めてそのスキルは発動できるはずです。それをどうやって。
「そんなにすごいことなのか? いまいち意識したことはなかったが」
さも当然のようにエールさんは言う。
――――この人は一体。
「どこで、そんなスキルを覚えたんですか」
「爺ちゃんに教えてもらったんだ。一日に何千本も矢を放っていると、武器の消耗も激しくてな。できる限り大切に弓矢を扱っているつもりもいずれガタが来る。そういう時にこうやって直してるんだ」
「ええ! すごいです! 実はエマ噂で聞いたことあるんです。エールさんはすごい冒険者だって。でも、多くの人はエールさんのことを偽物だとか、詐欺師だとか言う人がいて、どうかなって思ってたんですけど、いまのを見て確信しました! エールさんはやっぱり強い冒険者です!」
「いや、俺は強くなんかないよ。弓以外のこととなると全然駄目なんだ。剣や槍や斧は才能がないと言われた。魔法もろくに使えないし冒険者としてはまだまだ未熟者だ。ほら、見てみろよ」
そう言ってエールさんは、右手を差し出すと、魔法を詠唱しました。
「《ミニフレイム》」
紅い小さな炎が彼の手のひらでかすかに揺れました。
「え、えええ!!! すごい! すごいですよ!」
心の底から驚きました。
今目の前で見せてくれた魔法は紛れもなく上位魔法の一種。繊細な魔力コントロールを必要とするそれを何の溜めもなく発動できるなんて。
「ん? 何がすごんだ? この程度の魔法なら魔術師のお前は余裕でできるだろ」
謙遜の言葉をエールさんは言いました。しかし、エマとエールさんの実力差は明白です。
「エマ、エールさんのもとで学びたいです! エマを弟子にしてださい! お願いしますエールさん! いえ、先生!」
そんな言葉が自然に口から出てきました。
先生が私の処遇をどうするか考えていた時、酒場の奥から歓声が聞こえました。
「あれは何をしているんだ?」
「あれは、恒例の腕相撲大会です」
「面白そうだな。俺も行ってみるか」
そう言って、先生はミルキィ様と酒場の奥へと向っていくのでした。
次回で酒場編最終回です。
「面白いかも!」
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