13話 王位継承戦に巻き込まれました
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「エール、お前も出世したもんだな。もうA級冒険者だって?」
ゴブリン退治を終えてから一週間後、ギルドで久しぶりにニッコウさんと会うと、そんなことを言われた。
「たまたま運が良かっただけだよ」
「とは言ってもどんな形であれ、お前がゴブリンロードを倒したのは事実だ」
「いや、あれは―――」
普通のゴブリンロードではなかった、と俺は考えていた。
俺が“ホブゴブリン”だと思い倒したゴブリンは、ギルドの調査により後にゴブリンロードだと認定された。だが、俺はそのことを素直に受け入れることができていない。
明らかに姿形はゴブリンロードのそれを逸していた。しかも異常な再生能力は厄介だったものの、決して強い敵ではなかった。ギルドへ戻る道中、シンシアもあれはただのゴブリンロードではないと語っていた。
つまり、俺が倒したのは不完全な状態で生まれてしまったロード。
弱体化されたゴブリンロードだったのだろう。
俺はそのことをギルドに訴え続けたが、一向に受け入れて貰えず、半ば強制的にA級冒険者へと昇格させられてしまった。
シンシアともあの日以降、連絡が取れず、俺が一人でゴブリンロードを倒したという噂が独り歩きしたせいで、最近では悪い意味で目立ってしまってる。
「おい見ろよ。あれが噂のスーパールーキーだぞ」
「うわ。本当に弓持ってんじゃん。まじで弓撃手なんかな」
「どうせなんか不正したんだろ」
「それな。弓矢でゴブリンロードを倒すなんて無理に決まってる」
ひそひそと話が聞こえる。
「エール、あんま気にすんな」
「いや実際、俺一人でゴブリンロードを倒したわけではないし、彼らの言い分はもっともだ」
俺がニッコウさんとそんな話をしていたとき、突如入り口から一人の少女が駆け寄ってくる。
「エール様!」
少女はいきなり俺へとダイブする。俺が慌ててそれを受け止めると、少女は俺の腕の中で顔を上げて言った。
「エール様! この前はありがとうございました!」
「ん? ……あ。あのときの!」
この前、犬に襲われていた子か。
俺に抱きつく少女を見て、ニッコウさんは驚いたような表情を浮かべている。
「お、おい。エール。どこでその方と知り合ったんだ?」
「ん? ニッコウさんもこの子のことを知ってるのか?」
「知ってるも何も、お前、ミルキィ様はこの国の第二王女様だぞ!」
「第二王女? よくわからないが、とりあえず有名な人なんだな」
そう言われて、俺は初めてミルキィをよく見てみる。
ナチュラルボブの美しいブロンドヘア。水色のリボンはどこか品のある高貴さを彼女に添えている。可愛らしい顔立ち。大きな目は透き通るようなエメラルドグリーンの色をしていた。胸はそこそこ。小柄だが手足は健康的に伸びていて、全体として元気な雰囲気が感じられる。
「元気にしてた? エールくん」
俺がミルキィを観察していると、その背後からシンシアが現れる。
「シンシア! どこ行ってたんだよ。ずっと探してたんだぞ」
「ごめんなさい。色々仕事が忙しくてね。今日はミルキィ様の付き添い役として来たの」
俺たちがそんな会話をしていると、ミルキィは頬を膨らませ少しすねたような表情をする。
「もう! どうしてシンシアがエール様と親しいのよ! 彼は私の騎士なのに!」
ん? 騎士ってなんだ?
「すまないミルキィ。なにか勘違いしている。俺は騎士ではなく、弓撃手だぞ」
「騎士っていうのは職業ではなく、役割の話よ」
シンシアが指摘する。
「俺はそんな役割をもらった覚えはないが」
「それはそうよ! だってエール様は今から私の騎士になるんだから。今日はそれを伝えに来たんです!」
ニッコウさんは唖然とした表情で言った。
「おい。まさか騎士って。あの!」
「ええ。例外的なことではあるけれど、前回の騒動で欠員が出てしまったから、新しい騎士候補が必要になったの。それでミルキィ様の熱い要望もあって、エールくんには王位継承戦に第二王女の騎士として参加してもらうことになったわ」
「知らない間に、そんなことが」
ニッコウさんはまじまじと俺を見つめた。
「王位継承戦? なんのことかよくわからないが、とりあえずできる限りのことはするよ」
俺はミルキィに手を差し出す。
「よろしく頼む」
ミルキィはその手を強く握った。
「期待してますからね! あなたは私の英雄なんですから!」
こうして俺は王位継承戦へと巻き込まれたのだった。
2章完結です。3章からは王位継承戦編が続きます。
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