パシオの血
「パシオ」という種族がいる。金の髪を持ち、その目はアメシストのように美しいと言われる。肌は白く体温が他の人種より低いことが伝えられている。七大賢者と呼ばれる族の長たちの元、大陸から遠く離れた島に国を持つとされている。しかし、島の存在が確認されたこと未だになく、存在しない幻の島として囁かれていた。
パシオ族の血には傷を癒す力があり一滴垂らすだけでどんなけがも治してしまう。彼らは、自らを「女神の血族」と称して、自分たちを神に選ばれた存在とした。彼らは「女神の血族」として大陸に赴き、血の力での治療と引き換えに大陸各国の技術、特産品などを報酬として大陸派遣を繰り返していた。
しかし、ある時事件が起きた。その力を我が物とせん「帝国ヨーグ」がパシオ族の派遣団を拉致したのである。拉致を逃れたパシオ族はこの事件を七大賢者に伝えた。そこからは、派遣がなくなり大陸のパシオ族は孤立無援となり、パシオ族は幻の存在となった。
大陸に残ったパシオ族は、毎日のように血をとられ、物のように扱われる日々を過ごすこととなった。島の居場所を吐かせるための拷問をされる中、脱走を試みる者もいたが結局捕まってしまい、拷問を三日三晩続けられた。その拷問の結果パシオ族は、体が他の種族と比べ非常に丈夫であり、驚異の回復力を持つことが確認された。その事実は皮肉にも、拷問をどれだけしても死なない、血をいくら抜き取られても死なない、都合のいい存在となってしまった。雑巾のようにボロボロになっても使われ続ける。死ぬことも許されない。
地下牢に隔離され光が見えたと思えばそれは、拷問か、血抜。たまの食事だけがささやかな幸せだった。扉が開けられると射し込む光は、大陸のパシオ族にとっては、絶望の象徴として代を重ね、血に刻まれていった。
ある時、光を見た一人のパシオ族が突然発狂して周りの兵士を襲う事件が起きた。そのパシオ族の一人は象徴として捕らえられた後、実験台として光を浴びせられ続けた。最初のうちは苦しむ様子が確認されたが三時間ほどたったときにパタッと意識を失ったかと思えばそこから目を覚ますことはなかった。
この実験により大陸のパシオ族は強い光に極度のストレスを感じるようになっていることが確認された。そこからは大陸のパシオ族を光で制御するようになった。
帝国のパシオ族拉致は、各国から、避難を浴びた。しかし、帝国が流した『パシオ族は自らの血ではなく、獣の血を我らに与え、我らを侮辱した』という噂もあり、それ以上の事にはならず、時が流れるにつれて歴史の闇に消えていった。