二人の進路
秋も深まった頃、俺は進路相談をしていた、もちろん妹に、だ。
まだ一年余裕があるがギリギリでごねられると困るからだ。
「ふむ、お兄ちゃんは隣の市の公立に行きたい、と」
「ああ、やっぱあんまり親に負担かけたくないしな。まだお前も受験しないといけないんだし」
「却下です! 却下却下! そんなとこ行ったら私との時間が減るじゃないですか!」
「いや、ちゃんと余暇もあるからさ、無くなるわけじゃないんだし」
「私の目が届く範囲しか進学は認めませんよ!」
我が家の教育大臣は市外留学を認めてくれなかった。
「大体、公立高校ならうちの市にもあるじゃないですか。そっちでいいでしょう」
そう、高校はあるしちゃんと公立で学費の心配も無い、無いのではあるが……
「偏差値が……ね」
「はぁ……しょうがないですね。ちゃんと勉強しましょう」
うぅ……スパルタ教育だ……
「そんないやな顔しないでくださいよ、一緒の高校に行くために必要なことですよ」
「えっ!? お前成績超いいだろ? 県外の名門私立でもいけるんじゃないのか?」
「そうですね、でも! 私は! お兄ちゃんと一緒がいいんです! っていうかお兄ちゃんがどこに行っても私が同じ高校受けられるように成績トップをキープしてるんですよ!」
そんな理由だったんかい! まてよ……ってことは俺の成績が悪いと桜の進学先のレベルまで下がるのか?
それは不味い、今まで桜を育ててくれた両親と先生に悪いな。
「はぁ……分かったよ、勉強はする。ベストは尽くしてみるよ」
「大丈夫です! 最悪でもどっかのFランに一緒に通えます!」
ちっとも安心できなかった。
―――――翌日
ふう、久しぶりに長いこと机に向かってたな、勉強しないと一緒にFランとかいう説得は効くなあ……
さて、コーヒー飲んで続きを……
「お兄ぢゃああんん」
桜が泣きながら部屋に飛び込んできた。
突然のことに脳内CPUが追いつかずフリーズする。
「なんで今日は私のところに来てくれないんですか! 嫌いになったんですか! いやですよおおお!」
「落ち着け、勉強してただけだよ、それに桜も勉強するって言ってたろ、邪魔しちゃ悪いと思ったんだ」
「お兄ちゃんに会えないなら勉強なんてファックなものしない方がいいです! 偏差値とかどうでもいいので入れるとこ狙って二人で頑張りましょうよおお」
最近は寝る前に桜とお話をするのが日課になってたなあ。そういや今日は勉強ばっかでロクに話をしてなかった。
「わかったから、ちゃんと時間は作るから! 落ち着け!」
「グス……お願いしますよ、将来一緒になるからって今苦労する必要は無いんですよ!」
なにかさらりと将来のことまで決められてしまった、それはともかく忙しいやつだな。
「じゃあ、お兄ちゃんが私に監視されながら勉強するのと、質問しながら一緒に勉強するのはどっちがいいですか?」
「一緒にしましょう!」
だって……監視って怖いよ……アレかな? 寝たら電流を流すみたいな?
「その顔を見るとお兄ちゃんの中の私像について疑問があるんですがまあいいです」
「明日から一緒に勉強しましょうね! 分からないところはちゃんと教えてあげますよ! お兄ちゃんと一緒なら何時間でもいいです!」
こうして俺たちの猛勉強が始まるのだった。