バレンタインその2
現在高校に入って二度目のバレンタイン、絶賛監禁中!
昨日俺のクラスにいつものように迎えに来た桜と五月が顔を合わせた。
この二人はできるだけ合わせないようにしようと頑張ってたんだけどアクシデントだった。
その日特に用事もないと言っていた五月が俺に話しかけてきたんだ。
ちなみにほかの女子は桜に恨まれそうなので昼休みと放課後は誰も話しかけてくれない……
「あら五月さん、いたんですか。存在感がその胸のように薄いので気づきませんでした」
この時点で五月に青筋が立っていたのだがその後の発言がすべての元凶だった。
「桜ちゃん、お兄ちゃんはもっと控えめな人が好みだそうよ。
その無駄に存在感だけはある胸を減らした方がいいんじゃない。
もしもあと十年あなたが若かったら私も焦ったかもね」
ピキィ……
そんな音がした気がした。
で、帰宅後即妹の部屋に拉致られて現在に至る。
「さてお兄ちゃん……弁護士は立てましたか? あの幼女体型の先輩に頼んでもいいんですよ」
やだこの子こわい!
「落ち着いて話し合おうじゃないか……その……俺にそんな趣味はないから!」
「お兄ちゃんは……どんな子が好みなんですか! どうせ私みたいな存在感のある女は嫌なんでしょう!」
「そんなことはない! そんなことないぞ! ちゃんとお前のことも見てるから」
「お前のこと『も』ってなんですか! 私以外も見てるってことじゃないですか! お兄ちゃんは私だけを見るべきなんです! 他の人を見るくらいならお兄ちゃんの目を……」
「言葉の綾だって! ちゃんと桜だけしか見てないから! それに俺はその……」
「なんですか! はっきり言ってくださいよ!」
「その……胸は大きい方が好みだぞ」
桜は肩をふるわせピクピクしている。かと思うと突然叫んだ。
「ひゃーーーーーほーーーーう。どうですかあの幼女先輩、やっぱりお兄ちゃんは私だけが大事なんですよ! あんな特殊性癖持ってないんですよ、どうだっての!」
それはもう大層な喜び様でした。
「ふんふーん、妹はお兄ちゃんのものー、お兄ちゃんは妹のものー」
何やらガキ大将っぽい鼻歌を歌いながら夕食を食べている。
俺の告白が成功して無事、無傷で解放されたのだった。
人としての恥じらいをかなぐり捨ててた気もするがまあいいだろう。
桜も機嫌がいいようだし、みんなご機嫌ならそれでいいんじゃないかな。
「あっ! そうだ、お兄ちゃん! はいこれ!」
なにやらピンク色の包み紙を折れに差し出す、前にもこんなことが……
「ああ! 今日バレンタインか!」
「お兄ちゃんってば大事なこと忘れるんだから、大体あの先輩が残ってたのだって今日のためだったろうし……」
「なんだ?」
「ううん! なんでもない! ほらチョコ食べて! あーん」
「恥ずかしい……」
「今更じゃないですか。ほら、チョコ溶けちゃいますよ」
ぱくり
今年のチョコはちょっとビターなようだ、苦みがちょっと強い。
「おいしくなかった?」
心配そうに聞くので。
「いや、超うまかった」
そう答えると。
「うん、よかった。ところでお兄ちゃん、私のこと……好きなんだよね?」
う、そのまま逃がしてはくれないようだ。
「あ、ああ。好きだよ」
「そうですか」
そう言うと満足そうに食器を洗いに行った。
「あれ? それだけ?」
「十分ですよ、あと一年でお兄ちゃんが卒業しますし、できる私はちゃんと待つことにします」
どうやら諦めたわけではないのだった。