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血は水よりも濃いんですよ

 小学生の頃、俺の妹がいじめられていた。

 兄としては許せることではなかったし、俺は妹を助けるために戦おうとした。

 そんなとき妹の桜はこう言った。

「お兄ちゃんが味方をしてくれるだけで十分だよ、これからも一緒だよね」

 そう言って桜は笑ってくれた。

 この笑顔を守るためなら一生をかけてもいいと思っていた。


 小学校も高学年になった頃、妹にも友達ができたようだった。

「お兄ちゃん、今日はゆずちゃんと一緒に遊んだんだ!」

 そういう桜に俺は一抹の寂しさを覚えながらも安心していた。

 それ以降、時々はその「ゆずちゃん」と一緒に下校することもあったが、それでも俺と一緒に帰ることが多かった。


 俺が中学に上がった時、桜は大泣きしていた。

「お兄ちゃんと一緒がいい」だそうである。

 中学生になって、多くのクラスメイトは兄妹仲が悪いのは普通だと言っていた。

 二年生に上がったとき、桜は大喜びで俺と同じ学校に入学してきた。

「私はお兄ちゃんがいれば大体満足ですよ」

 と俺と同じ学校に入ってきたわけを説明していた。


 小学生時代は集団登校だったので兄弟が一緒に登下校するのは普通だった。

 兄妹で一緒に家を出て、一緒に登校し、同じ時間に授業が終わるので一緒に帰っていた。


 中学に入ってから集団登校はなくなり、兄妹の下校時間もバラバラになったので、桜は友達と帰ることも少しだけ多くなっていた。

 それでも俺と同じ時間に帰るときは一緒に帰っていたが、ちゃんと友達もできたようで安心していた。

 だと言うのに……

「お兄ちゃん! 今日も待ってたよ!」

「二年の授業は1時間長かったような気がするんだが……」

「長かったねー、じゃ、帰ろ!」

 どうやら1時間待ってたらしい、さすがに悪い気もするので、

「先に帰っててもいいんだぞ」

 まだ春も始まったばかりでまだまだ寒い、この環境で待つのは負担だろうに。

「お兄ちゃんと一緒がいいんです! これからも待ちますからね!」

 待っててくれるらしい。

 こいつがこう言い出すと聞かないからな……

 人懐っこい笑顔がまぶしい、俺以外に向けるところは見たことないけど……

 もし俺が兄でなければ変な勘違いをしそうなほどにかわいい笑顔だ。

 シスコン? 言いたいなら言わせておけ、俺の妹が一番かわいい、ナンバーワンだ。

「友達ちゃんといるんだろうな……? 妹がぼっちだと心配なんだが」

 桜は心外とでも言うように反論した。

「ほら、昔から私たちと一緒にいた柚子ちゃんと仲いいんだよ」

「ならいい」

 柚子は俺たちの家の隣に住んでいる子だ、昔っから桜と仲がよかったので多分仲がいいのだろう。

 「多分」なのは俺が中学に上がってからほとんどあってなかったせいだ。

 友達というのは数より質ではないかと思う俺としては無条件に信じられる友達が一人でもいるならそれでいい。

「でも……お兄ちゃんが一番の友達……かな……」

「俺は友達扱いなのかよ?」

「うーん、友達兼恋人兼家族兼お兄ちゃんみたいな感じかな?」

 一体俺は何人いるんだろうか? というか恋人まで兼ねてんのかよ!?

「お兄ちゃん、ありがとうございます、まだ言ってなかったですね」

「何のだ?」

「私がいじめられてたときに助けてくれたじゃないですか」

「いや……結局俺じゃどうにもなんなかったし……」

 兄である俺ができたことはほとんどない、学校は隠蔽体質だったし保護者にもいい顔をしていたのでいじめっこの評判はよかった。

 結局のところ時間が解決してくれただけだった、兄としては情けない限りである。

 だから別にお礼を言われるようなことでもないのだが……

「それでも、お兄ちゃんは私のヒーローですよ!」

 お、おう。恥ずかしいことを平気で言うんだな。

「恥ずかしくなるからやめて」

「お兄ちゃんを褒めることのどこが恥ずかしいんですか?」

 マジですか……本気で言ってんだなあ……

 コイツのブラコンはいつからか? とこの先考えることがあったらここなんだろうな。

「さて、帰るぞ」

「うん!」

 帰り道、桜がつぶやいた。

「今が永遠に続けばいいのに……」

 どういう意味かは聞かないでおいた、その気持ちは俺も少し持っていたから。

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