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神を飼い始めました  作者: 土車 甫
第二章 ペットという存在
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新しい生活

 翌朝、目が覚めて起き上がろうとすると、体に重みを感じた。体に抱きついている卯月を見て、そういえば一緒に寝ていたんだったなと思い出しながら、そっと体から離し、布団を出た。


 いつもなら起きてすぐに布団は畳むが、卯月がまだ寝ているためそのままにしておいた。


 昨日作った、焼きあがった状態のハンバーグを冷蔵庫から取り出してレンジで温め、他にもいろいろ緑のものなどを弁当に詰めていく。


 朝食は目玉焼きとレタスにトーストにした。卯月の分も作り、盛り付けた皿をラップに包んで机に置いて家を出ようとした時、卯月が起きた。睡眼を手でこすりながら「どこへ行くんですかぁ?」と聞いてくる。


「学校行ってくるね。朝食はそこに置いてあるから。昼食も、箱に詰めたのをそこに置いてあるから」


「わたしはお留守番ですか?」


「うん、そうなるね」


「うぅ……嫌ですけど、わたし、頑張りますぅ!」


 妙な意気込みを見せる卯月に笑い、それじゃあと言って家を出る。


 階段を下りると、そこには春侑が立っていた。下りてきた自分に気づくと、「はよーっす」と笑みを向けてきた。「おう」と軽く返事をして、そのまま通学路につく。


「ねえ、昨晩、何もなかったよね?」


「何があるって言うんだよ。何もなかったよ」


「そ、そうよね。いやほら、いっちゃんはアニコンでペトコンだから」


「だから違うっつの」


 へへっと笑う春侑に、俺はため息をつく。


「そういえば、つきちゃんはどうしてるの?」


「可哀想だけど、学校に連れて行くわけにはいかないし、ご飯は準備して留守番頼んできた」


「うん、まあ仕方ないよね」


 どうやって暇を潰すのだろうか。適当に本でも渡しておくべきだっただろうか。テレビを見ていいと言ったほうが良かっただろうか。そんな不安が頭をよぎっていく。


 そんなことを考えていると、いつのまにか学校に着いていた。また頬を膨らませてむくっとした春侑が隣に立っている。全く話を聞いていなかった。「ごめん」と軽く謝ると、「もうっ」と言って微笑んでくれた。


 教室に入り、大神に軽く挨拶して自分の席に着き、鞄を開ける。中身を見て、俺はため息をついた。弁当を家に置き忘れてしまったのだ。


「はよーっす」


 教室に虎子が入ってきた。おそるおそるそちらの方を見ると、目が合い、ニカッと笑みを向けられた。苦笑しか返せなかった。


「まいったな……」


 俺の弁当を楽しみにしているであろう虎子を見て、俺はまた、ため息をついた。





 昼休憩になると、俺は弁当が入っていないバッグの中身を見てため息をひとつつき、虎子のもとへ向かおうと席を立つ。


 そういえば、今日は一緒に食べる約束をしていた。さらに憂鬱になる。食堂でも許してくれるだろうか。


 教室を出ようと扉に手をかけたところで、春侑が話かけてきた。


「ね、ねえ。今日も一緒に食べない?」


 昨日もこんな事があったなと思いながら「悪い。今日は無理なんだ」と返す。春侑の表情が暗くなる。


「ねえ、どうしてそんなに、とらちゃんの昼食管理に熱心なわけ? も、もしかして、とらちゃんの胃袋を掴もうと……!?」


「違うわ。春侑は、今までのあの人の昼食メニューを見たことあるか?」


 その問いに、春侑は少しうーんと思い起こす素振りを見せ、かぶりを振る。


「一年の二学期の時にな、保護者アンケートを遅れて出しに行ったんだよ。その時、昼休憩でさ、見ちゃったんだよ。先生の昼食を。――からあげ棒、鳥の軟骨、豚の生姜焼きにビーフジャーキー」


「見事にお肉ばっかりだね……」


「それ見てさ、俺の弁当いりませんかって持ちかけたのがきっかけ。はぁ、朝と晩も渡したいくらいだ」


「ははっ、とらちゃんが聞いたら喜ぶよ。……私も、かな」


「お前は料理作れるだろ。昨日なんて完璧だったじゃないか。……おっと、早く行かないと。じゃあな」


「あ、うん……そういうわけじゃ、ないんだけどなぁ」


 後ろで春侑が何かを言っていた気がしたが、俺の耳には、はっきりと届かなかった。


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