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神を飼い始めました  作者: 土車 甫
第一章 神を飼い始めました
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いつもの放課後……?

 最後の授業が終わり、帰りのHRも終える。


 今週は掃除当番でないため、帰宅部である俺は颯爽と教室を出る。


 学校を出る頃には、顔がニヤケ始めていた。あぁ、早くあの子犬や他の子たちを愛でたい。


 いつも通っているペットショップでは、自分以外のうちの生徒をよく見かける。そのため、向かう途中の道中で見かけることもあるが、今日は全く見かけない。自分が早すぎたのかと思うが、少し嫌な予感がする。


 それは見事に当たった。例のペットショップのドアにかけられたプレートに書いてある「本日休店」の文字。


 肩を落としながらその場から離れる。どうしよう。今日はこのまま、あの可愛い子たちに癒されるはずだったのに。


 このまま家に直帰しようか悩むところ。そういえば、春侑に買い物を誘われて断ったんだっけ。まだ間に合うかなあと思いながら、鞄から携帯を取り出そうとして、一緒に出てきた教科書を地面に落としてしまう。


「おっと。……ん?」


 しゃがんで教科書を拾い上げ、顔を上げると、「ペットショップ開店」と書いてあるチラシが電柱に貼られているのを発見する。


 駆け足でその電柱の傍に行き、チラシを見る。どうやら本日開店したらしく、矢印が指す先、ここから入れる裏道にあるらしい。


「行かなくちゃ」


 開店して間もないということ、子供がいっぱいいるに違いない。胸を躍らせながら、裏道に入っていく。




 裏道の少し進んだ先に、それはあった。しかし、それは決して新設とは思えないもので、所々にサビが付いているガレージの中に作ったようなものだった。


 じめじめとした、外界とは断っているかのような暗さの中に入っていく。すると、そこには一つのケージがあった。


「これは……」


 しゃがみ込んで中を覗く。そこには、とても綺麗な白い毛を持ったウサギが一羽いた。


「いらっしゃい」


「えっ!? あ、あぁ、どうも」


 先程まで気づかなかったが、椅子に腰をかけている浮浪人のような風貌の男性が、店の片隅にいた。


 さらに周りを見渡すが、ケージはこれ一つで、ガラリとしている。本当にここはペットショップなのだろうか。


「どうだ。そいつを飼う気があるのか」


 例の男性が話しかけてきた。この男性は、ここの店員なのだろうか。


「いいえ、俺は飼う気は……」


「抱いてみるか?」


「是非!」


 男はのそりと椅子から立つ。今まで座っていて分からなかったが、百九十ほどあるくらいの高身長だった。すこしギョッとしてしまった。


 男はガレージを開け、少し乱暴にウサギを掴み、俺の前に差し出してくる。優しく抱き上げると、ウサギは俺の胸のあたりに鼻をつんつんとくっつけてきた。とても可愛らしい。


 ゆっくりと毛を撫でると、指に絡むことなくスーッといった。だが、指には少し汚れが付いた。改めて、この店の環境に不満を抱く。


 首輪がつけられており、それは決してオシャレとは言えないものだった。


「どうだ。気に入ったか」


 再び椅子に座った男が聞いてくる。それが店員の態度なのだろうかと思いながら、抱いたままのウサギの感想を言おうと口を開ける。


「そうか、それじゃあ頼むぞ」


「……へ?」


 まだ何も言っていない。しかし、男はそう言って立ち上がり、俺の背中を押して店から出す。


「ち、ちょっと、何なんですか!? ていうか俺、まだウサギを抱いたまま――え?」


 店を出たところで後ろを振り向くと、今まで自分がいたはずの店がなくなっていた。サビ臭いガレージにシャッターが閉まっている。シャッターが閉まるような音など一切しなかったはず。


「えっ……どうなってんだよ、これ。どうすんだよ、これ!」


 例のウサギを抱いたまま、俺は吠えた。

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