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神を飼い始めました  作者: 土車 甫
第四章 ペットの秘密と飼い主の在り方
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卯月の過去

方言で書いてよかったのだろうか。

 あれは今から数年前のことじゃ。


 卯月がまだ神様の力を持ち、信仰されていた頃。


実は、今も卯の神はおるんよ。別に一家だけじゃない。ただ、卯月は両親を早くから失っとったけん、卯月が信仰されなくなったことで、卯月の家系は終わったんじゃけど……。


それでの、卯月が東の地で配置されていた場所は、それはもう平和なところなんよ。……いや、平和だったんよ。


 卯の神はの、固有の力である治癒で、地元の住民を助けとったんよ。難病、骨折や火傷などの怪我。卯の神にかかりゃ、そげなもん、ちょちょいのちょいじゃ。


 じゃけぇ、卯の神――卯月は、よう慕われとったわ。……でもの、卯月は重大なミスを犯してしまうんよ。


 卯月が住む祠の近くに、隣の国の軍……地元の村にとっての敵軍が、やって来たんよ。それも、全身を怪我させて、息を切らしながらの。


 その者らの地元の信仰神は卯じゃないはず……じゃけど、その者らは卯月を頼った。正しくは、卯月が住んどった祠に祈ったんじゃが。人間というのは、欲深いもんじゃのぉ。


 卯月は悩んだ。この者らに力を使っていいのか。まあ卯月は経験が浅かったけぇ、仕方がなかったのかもしれんの。……悩む間に、目の前で、傷ついた軍兵がバタバタと力尽きていく。それを目の当たりにした卯月は、悩んだ末に、力を使うことに決めたんじゃ。


 さっきも言ったけど、卯月は経験が浅かったけぇかの、治癒をするのと一緒に雪を降らせよったんじゃ。雪が降らない季節に、突然降り始めた雪に、軍兵共は目を疑った。それと同時に、今まで自分の体を支配していた痛みがスーッと消えたことを疑った。血が出ていた箇所が塞がり、折れていた骨が治った。「奇跡だ!」。そう軍兵共は口々に叫んだ。


 そうして元気になった軍は、卯月の地元の村を滅ぼし、その国を討ち取った。後に、その者らは伝えたそうじゃ。「俺たちが勝てたのは、雪の奇跡のおかげだ」と。


 そんな話が、こっちの方にまで伝わって来た時はたまげたわ。まさかと思って確認しようと、うちの旦那が東の方に出向いたんじゃ。……卯月の祠は、地元の村の住民の生き残りに壊されていたそうじゃ。まあ、仕方がないじゃろ。卯月が、その村を滅ぼしたに等しいんじゃけぇのぉ……。


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