第3話『歌って踊るお姫様』
第3話
ゲリラ告知をした日から3週間後
同じ地区にて特設ステージでDCPのデビューイベントが行われることになる
枠のない場所なので
当然無料
誰でもその場に居れば参加できる
デビューに用意した歌は2曲
1曲はリーアのソロでリーンとテスローはバックダンサーとなる
もう1曲は3人で歌い踊る
曲はもちろん、踊りもしっかりと練習してきた
予定されるイベントは
MCによる進行で始まり
3人の自己紹介を行い
トークをして場を盛り上げたら
メインの歌披露2曲分
最後に今後のスケジュール発表
メディア発売を含めた活動予定を
約30分くらいで終わる短いものになるだろうが
ネットワークの生配信も行う
世界デビューを視野に入れたプロモーションでもある
「あわわ・・・リーアさん、人がたくさんいますわ~」
「わー、凄いですね・・・」
「テスローとリーンの反応は極端だな」
モニターに映るステージの映像をチェックしている3人
既に衣装を着替えている
フリル付きのミニスカに
左手だけに手袋と
膝上まであるニーソは
リーアは赤、リーンは青、テスローは黄
それぞれのメインカラーをそのように決めて
お揃いの白いブラウスで
「私緊張してきました・・・」
テスローは今にも泣きそうな感じでリーアを見つめている
「緊張しない人なんていないわ、リーアも緊張してるし」
そうは見えないリーアは堂々としている
「私も緊張しています、リーア慰めて」
無表情でリーアを見ながら、棒読みで
「・・・リーンは特別かもしれないわね」
自分も緊張はしているのに、まったく何なんだろうと思うリーア
「私もリーアさんに慰めて欲しいかも」
リーンは冗談で言っているんだろうとわかるが、このテスローの場合は
本気で言っている可能性が高いので慎重に対応しなければならない
「デビューが成功したら、考えておくわ・・・」
可もなく不可もない答えだが、リーンやテスローにはこれで十分だと思って
適当な感じで対応してしまう、慎重という前提で
「これは成功必須になりましたね、テスロー」
焚きつけるように促すリーン
「・・・はい!!」
妙にやる気を起こしているテスロー、緊張どころではなくなっていた
「リーアさんのために私頑張ります!!」
リーアを見つめながらテスローは気合を入れている
それに目の輝きが違っていた、怖いくらいに
「目先の人気はテスロー、あなたの胸がまず持っていくだろうから・・・」
そんなテスローをというかその胸を見つめている
「あ、何をなさるんですか・・・」
リーアに胸をツンツンされ恥じらうテスロー
「何、リーアより大きいのを装備しているのだからこれくらい我慢しなさい」
強力な武器と同様な位の装備を保有するテスローに対してまだツンツンしている
「リーアさん、やめて下さい」
別の意味で気分が高揚してきているテスロー
本気で抵抗はしていない
「テスローよかったですね、大好きなリーアにそんなことされて」
少し離れた場所で二人のイチャイチャな行為を眺めているリーン
「え、そんな私・・・リーアさんのこと、あ・・・大好きだなんて」
図星だったようで、テスローの顔が真っ赤になっていた
「リーアのこと大好きだったのか、テスローはそっちの属性だったとは」
薄々感じてはいたが、本人の反応からしてその通りだったとわかり
「別に構わないが、活動に支障があるようなら自粛してもらうことになるからな」
少し離れてテスローを牽制するようにリーアが身構える
「・・・リーアさん」
急に離れてしまったために中途半端な気持ちでいるテスロー
「この続きはイベントが成功したらということにしてもらえば」
リーンは見透かしたかのような発言でまたテスローを焚きつけた
「おい、リーンあまり過激な発言は控えてくれよ・・・収集がつかなくなるじゃないか」
そのリーンの言葉があとで自分に不利益になると感じているリーアは
「本気にするなよ、テスロー・・・」
まあ、既に遅かったと言うしかない
「ああ、私リーアさんのために頑張ります・・・うふふ♥」
当のテスローは上の空で部屋を出ていこうとしている
「引っ込み思案のテスローをやる気にさせるにはこれくらいしないとダメなので」
スッと近づきリーアの耳元でリーンが話す
「リーアに対してのリスクが大きすぎるぞ、お前にも手伝ってもらわないと困る」
あくまで上からのリーアだが、このリーンの策略に少し怯んでいる
それでも、自分の大成のための駒であれば最終的にいいのだと思っているが
「わかっています、リーア様の手駒として動くのみですからね・・・ふふふ」
不敵な笑みを浮かべ、リーンはあくまで部下だと強調している
「100%信用はしていないから、好きにすればいい・・・くくく」
リーンに張り合うようにリーアも不敵に笑う
「寂しいこと言うんですね、少なくともテスローの前では禁句ですよ」
悲しげな顔でリーアを見るリーン
「リーン・・・」
言おうとしたことを抑えて
「素直に忠告を聞いておこ、あいつのメンタルを考えればというわけだな」
形式的な対応で返すリーア
「そういうことです、私同様に上手く制圧して下さい」
一変してリーンはにっこり微笑んで部屋を出て行った
「まったく、喰えない奴だなリーンは・・・」
つぶやくようにリーアは言うと
リーンのあとを追うように自分も部屋を出て行く
どんな思惑があるのかは知らない
聞いたところで曖昧に対応されるだけだろうと
最後に自分が残ればそれでいい
リーアは単純にそう思っていた
全てを利用できる装備やツールだと
想いビトですら、その対象であると感じている
無料でオープンに行われるイベント
宣伝もいろいろなメディアで実施して
効果は抜群だった
「最初のイベントと考えれば上出来の集まりか・・・」
ステージの裏で観客の入りを再度確認しているリーア
打算的なお姫様だと思っているんだろうと
リーンやテスローに対しても使い捨ての駒だと言い聞かせていた
感情を移入してしまうと、後半絶対に辛くなるから
もう、始まっている戦いに対して
これは個人戦なのだからと・・・
「本気でそう思っているのか・・・リーア??」
急にリーアのところへ戻ってきたリーン
心でも読めるスキルでもあるんだろうか
若干、見透かされた気持ちだが
「もちろん、本気に決まってるじゃない・・・あなたも道具の一つよ!!」
ほぼ、売り言葉に買い言葉な感じで返すリーア
揺らぐ心を更に振るわせようとしてくる感じに苛立ちを見せているが
初陣となるステージを前に、仲間割れをしても無意味なので
グッと気持ちを抑えて
「リーアがまとめなくてはならないのに、乱してどうするのよね・・・」
思わぬ反応に、リーンもそれ以上は何も言わなかった
かなり詳しく世界について把握していると思われるリーンは逆にそれほどの問題とは思っていない、むしろテスローの方が潜在的な部分を含めて危険だと思っている
「さっきは、すいませんでした・・・リーアさんは、素敵なお姫様なので・・・」
そわそわしている
さっき、中途半端な感じで話が終わってしまったから
「気にしないでとは言いません、リーアもまだあなたのことよくわかっていないし」
探り気味でテスローの様子を見ている
歩み寄ってくれている感じなので、このままゆりゆりな関係でも悪くはないかとも
「テスローは、リーアと関係を持ってもいいと思ってるの??」
直球を投げてみた
変化球でじわじわとも考えたが
そんな面倒なことしたくなかったので
「・・・え、関係って・・・テスローとリーアさんがですか・・・ぽっ♥」
顔を真っ赤にして俯いてしまった
正直な反応で、わかりやすい
気持ちはあるとわかれば、それでいい
リーア自体も女性との関係に関しては嫌いではないので
しかも、あんな最強兵器を装備しているわがままボディを好きにできると思うと
「リーンにも確認してみるけど、3人組ユニットなのでできるだけ平等にしたいから」
リーンのことを忘れていたわけではないが
テスローはリーアと二人だけの関係だと思っていたようで
若干、寂しそうな表情でリーアを見つめていた
(本当に、わかりやすい反応をするのねこの娘は・・・リーンには話せばわかってもらえそうだし・・・当面はテスロー攻略がリーアのするべきことだろうか??)
内心、そんな感じで今後の目標ではないが
行う方向性を見据えたビジョンを考えていた
「できれば、リーアさんとだけの関係を望みたいんですが・・・」
と、急に積極的に攻めてきた
まあ、好都合かもしれない
「そう・・・なら、リーンにはそのように言って、察してもらうわ」
というか、リーアの後ろに隠れるようにして待機していたリーンが出てくる
そして、テスローの肩に手を置いて
「頑張れよ・・・応援するからね」
と言って、先にステージへ向かっていった
これは、内気なテスローのやる気を当面高いモチベーションに保たせる作戦とも言える
リーンも策士なんだろう、リーアは恐怖を感じつつ
この作戦に賛同して、ゆりゆりな展開を進めることになった
「リーン公認なら、問題ないだろ・・・テスローも??」
「・・・はい、後でお礼します」
ニッコリと微笑んで、ステージへ走っていった
それを見ながら、リーアも後ろをついてゆく
デビューした、新規のユニットとして注目を浴びているDCPなので
その勢いをそのままに一気に全国区のアイドルとして有名になりたいと
地道な活動が始まる・・・