第一話『次元を超えるお姫様』
ディメンション コントロール プリンセス
第1話「次元を越えるお姫様」
「リーア様、本気で行かれるのですか?」
皇女お付きのユニバースは巨大な戦艦の前で乗り込もうとしている姫を制している
「ユニバースはリーアの何だ、口出しできると思っているのか!!」
可愛い声とは裏腹なきつい口調で言い返す主リーア
大帝国の母星
皇帝陛下の娘、第一皇女であるリーアは
フィアンセで専属の側近であるユニバースの制止にあっていた
先日やってきた次元間を航行可能だという戦艦を前に
「しかし、これは無謀としか言えません・・・」
リーアを心配した上での行為
身分をわきまえた騎士としての
「無謀かどうかは、リーアが決めること・・・ユニが決めることではないわ!!」
そんな心配をよそにその戦艦に乗り込もうとしている
基本的な行動は自分で決めてもいいと父である皇帝陛下から言われている
ユニバースもその意向には賛同していて
幼い頃より一緒に過ごしてきて
何度も振り回されている
今回も同様になると思っている
しかも、別の次元に行こうとする
それも最も危険とされるアナザースペースに
その場所の伝承があり
あらゆる次元より猛者が集まり
ゲームが行われる
唯一の勝者だけが元の世界に戻れ
願いを叶えられる
と語り継がれている
その伝承を実証したのが現皇帝陛下だ
その時もLという別の銀河より来た戦艦を使い
直接干渉して勝利して戻ってきた
その対価として今の地位がある
その話を知った時からずっとリーアはこの機会を待っていた
父と同じように勝者になるために
「リーア様、僕はあなたのことを案じて・・・」
そんなユニバースの言葉へかぶせるように
「いつものようにリーアについてくればいい!!心配なんだろう~♪」
ニコニコしながらリーアはユニバースの口にキスをする
「・・・軽々しく、私との口づけを」
リーアにキスされ躊躇するユニバース
これもいつもと同じだった
毎回、行動を起こそうとすると必ず制止される
亡き母からのイケナイ教えを実践している
好意のある人限定で相手を説得するおまじない
【天使の口づけ】を教えられたのだ
毎回このスキルによってユニバースはやられてしまうから
それで今回も同じ、いつものようにこのスキルを使用した
「これを使うのは好意を持つ相手だけなんだからね!!」
そして、これが殺し文句だ
破壊力の高いスキル
使用できる相手が限定されるだけに効果が絶大
「・・・もう、好きにして下さい」
ユニバースはこの手の行為に弱く
毎回、強い意志を持って抵抗するのだが
今回も玉砕
100%の効果
「よ~し、ではリーアのマネージャーとして頑張ってもらうからね!!」
ウインクで合図してユニバースの手を取り戦艦に乗り込んだ
「は~また、勝てなかった・・・」
手を引かれながら落ち込むユニバースだった
無駄に大きい戦艦
点在する様々な次元を繋ぐシステムを搭載した
最も進化したLという次元の技術
エクサという永久機関を使用している
世界空間都市とほぼ同じゲートのシステムでもある
「姫さん、簡単に説得したな」
甲板からさっきのやり取りを見ていたこの戦艦の持ち主
「イエロー出航の準備は出来てるのかしら!!」
そこへリーアがユニバースを引っ張ったままやってきた
「ああ、姫さんの搭乗待ちだったからな・・・いつでも出ることができる」
漆黒のゴーグルが印象的な年齢不詳なダンディな男
次元を旅して日記を綴る詩人らしい
数名のクルーがいる
戦艦といっても実際に戦いをする目的で作ったわけではないので
少人数で十分済む
「そう、では早速アナザースペースに向かってちょうだい!!」
急かすようにイエローにリーアが話しているところに
「あなたが来なければリーア様も・・・」
ユニバースが怒りをあらわにして睨んでいる
「そんなことは君の力が足りなかっただけのことだ、私の責任にしてもらっては困る」
そんなのは知ったことではないという感じで物凄く淡白に言い放つ、無責任だとも思える
イエローという男はリーアが同行したいと言ってきたから
それに対して好きにすればいいと、アナザースペースに向かうこの戦艦を利用することに
「そうよ、リーアを止められなかったユニが力不足だっただけよ」
同じように冷たく当たるリーア
「リーア様まで、そんな・・・」
理不尽な感じをどうすることもできない不甲斐なさを自分に対して怒り悲しんだ
「ユニバースはリーアに選ばれた存在なんだ、付いていけばそれでいい」
イエローはそっと声をかける
「リーア様に選ばれた存在・・・」
言葉の意味をまだ理解できていなかったユニバースだったが
「イエロー!!恥ずかしい事言わないでほしいわ・・・」
その言葉に思い切り反応して顔を真っ赤にして俯いていた
毎回のように同行させているのは
ユニバースのことを好きだから
一緒について来てほしいと思っているから
未来のパートナーである相手とのわがままな旅をできるから
そんな存在は全ての次元で一人しかいない
「そういうことだ、ユニバースはリーアにとって・・・」
と、言いかけたところでリーアの視線を感じて
「おっと、これ以上は野暮だったな・・・まあ、察してみろユニバース」
そのまま去っていった
「ああ、あの男どうも好きになれないわ!!」
全てを見透かされているようでリーアはイエローに対して怒っている
目的のための踏み台の一つ位にしか思っていないだろうが
そんな存在だからこそ、余計に怒りが起こってしまうのかもしれない
操舵室にて
「艦長、出航されますか?」
銀髪の女性が問いかけてくる
「ゲストが乗艦したからな、すぐにでも出るぞリーン君」
さっきまでリーアと話していたイエローが指示を出す
「了解しました、エクサドライブを展開します」
リーンは淡々と出航の準備を行っていて
客のリーアとユニバースが乗りいよいよ旅立ちとなる
「イエロー艦長様、ゲート開放まではあと5分ですわ」
計器類をチェックしているもう一人
お淑やかな雰囲気の大人の女性といった感じ
「テスロー君、開放と共にブーストをかけてくれ」
イエローはもう一人のテスローという女性にも指示を出した
「了解いたしました」
テスローはニッコリと微笑みながら器用に装置を稼働させていた
この戦艦には
艦長のイエローを含め
副艦長のリーン・ロイロ
艦長補佐のテスロー・ネズルス
整備技師のジェノ
医師のウェリア
謎の物体、トマ
がクルーとして搭乗している
それにゲストとして
帝国第一皇女のリーア
リーアの側近ユニバース
の2名が乗っている
イエローが各次元で乗せてきたクルー
その素性は後の話でわかると思うので省略します
それぞれの性別は
イエローとジェノが男性で
リーン、テスロー、ウェリアが女性
トマは15センチくらいの人形で性別は不明
いつの間にか乗っていた謎多き存在
特に危害が及ぶこともなかったのでそのままにしているようです
「ゲートの展開を確認、ブーストをかけますわ」
テスローは目の前に出現した次元の扉であるゲートの発生を確認すると
エクサドライブのブーストを解除する
「よし、戦艦イエローブランド発進!!」
自分の戦艦を発進号令をかける
「イエローブランド発進します」
その掛け声でリーンは戦艦を始動させる
「聖域展開!!レベル20」
ゲートに対してイエローが聖域を展開する
次元航行で最も重要なのは主体となる存在の聖域
これがなければ次元の扉を通過できない
「艦長の聖域侵食開始、ゲートを通過します」
リーンの操縦でアナザースペースに向けて次元の扉を超えていた
「リーンさん、調整の誤差を修正いたしますね」
テスローがサポートしている
「あ、ありがとうテスロー」
ぎこちなく笑うリーン
「3人組のユニットも面白そうだな・・・」
不敵に笑みを浮かべて航海を見守るイエロー
未知の次元アナザースペースにたどり着いて
新たなゲームに参加して覇者となれるのか
「このリーアにできないことはない!!」
ゲストルームでユニバースと医師のウェリアと共にくつろいでいた
自信たっぷりにリーアは旅の始まりを満喫している
「リーアちゃんは自信家さんなんですね~、お姉さん楽しみです」
白衣を着たウェリアは頭をナデナデしてリーアに言うと
「わ、リーアに対してそんな態度でくるとは・・・度胸があるな~!!」
普段されない行動に戸惑っていた
「ウェリアさん、何をするんですか・・・」
ユニバースも動揺していた
「え~、だって可愛いじゃないですかリーアちゃん」
満面の笑みを浮かべているウェリア
「まあ、可愛いのは当然だからな・・・仕方ない」
たまにはこういうのも悪い気はしないリーアはこの状況に少しそのままでいた
そうしているうち
戦艦はゲートを突破して
「イエロー艦長、アナザースペースに到着しましたわ」
テスローの声と共に
目の前に真っ青な空と海が広がっていた
「ビジョン通りの世界のようだな・・・」
予想通りと言わんばかりにイエローはつぶやいた
「着艦予定地、日本国東京都千代田区外神田付近です」
リーンが目的地の住所を言うと
「伝説のアイドルの聖地ということだからな、ここがふさわしいだろう」
ゴーグルがキラリと光り渋く決めるイエローだった
「都市の中心で空地はありません、スクリーンで姿を消して上空待機になりますわ」
テスローは不安そうにモニターをチェックしている
「それでも問題はないだろう・・・」
少し残念そうにイエローは下の映像を見ている
「UDXという建物に座標を固定して艦を待機させます」
到着した場所にあった複数の建物のうちリーンが無作為で一つを固定用に利用する
「Dアンカー固定完了ですわ」
テスローが停止した艦をイカリで固定した
「到着した、姫さんに伝えてこよう・・・二人も一緒に来い」
そう言うと、リーンとテスローも一緒にイエローはリーアのもとに向かう
本当の戦いがはじまる
この次元に来た理由と覇者になることとは
アナザースペース(異なる別の世界)で・・・
~あとがき~
幻想の風の総体的な物語になる話です
リーアという存在がどのようなものなのかを
一部だけ紹介する感じです
一般的に見て
別の世界から来たお姫様が地球で奮闘する
簡単に言うとそうなります
しかし、あくまでゲームの仮想です
全ては幻想の風の中に消える・・・
ということで続きをお楽しみにね