夢だと気持ちよかったかも
放課後の鐘が鳴る
『れーいくん、帰ろ?』
また来やがったこいつ。
ほんと秋、今日は帰らせねぇ
俺にあんなことさせた罪、償ってもらわなきゃな
『本屋』
そうつぶやき教室を後にする
『はいはい、了解でーす』
少し呆れて、でも少し嬉しそうに秋は言う。
『あっ!あの!十黒くん!』
ん?俺?
後ろを向くと、目の前に白沢が立っていた
『ちゃんと、言わなきゃって、思って』
ああ、お礼のこと。
『屋上、行きませんか』
ん?ここじゃダメなのね
まあ、廊下で話すのもおかしいか
『わかった』
一言いうと、彼女はうつむいたまま
コクリとうなづいた
『って、ことで秋』
りょーかい。
のウインクをして手を振り帰って行った
秋、うまくに逃げたかと思うなよ、明日は絶対復讐だ
本屋で新作をバンバン買わされてる秋を想像しながら
俺たちは屋上に向かう
はーー!いい風吹いてんじゃん
俺の正面に立つ白沢
顔を見るとまだ少し恐怖が残っているのかこわばっている。
整った顔立ちに艶のある白銀の髪はボブ
瞳は今日の空より青かった。
細い腕や脚は折れそうなくらいで、か弱い
なんて、俺どこ見てんの
女子と2人なんてなったことないから緊張しないわけがない。
きっと白沢もそうなんじゃないかと思う
『十黒くん、さっきは、本当にありがとうございました』
深々と礼をした白沢、その姿だけでも
麗しい
と、思ってしまう
『いや、こっちこそなんかいきなりごめんな、うまく行ったかわかんないけど』
言葉もうまく出てこねぇわ
ふるふると子犬のように首を横に振る白沢
『私、怖くて何もできなかった。でも十黒くんが居てくれたから』
雪のように白い肌を桃色に染めたのが見える
また、“ドキッ”とする
それ、カノジョがカレシにいう言葉だろうよ…!
ああ、もうなんか俺おかしい
白沢に…恋
そんなの
いきなりすぎだ
『そして、もうひとつ。お願いがあるんです。十黒くんにしか頼めないことなんです』
俺にしか、頼めない?
白沢の言葉をリピートしても理解できないまま
白沢は美しい髪を風に靡かせながら俺の方に駆け寄って
胸のあたりに手を置いて
顔を覗いてきた
グッと縮まった顔との距離に動揺する俺
ああ、綺麗だ
白沢の顔、甘い匂い、ピンクの唇
ああ、染まってしまいそうだ
君色に
『十黒くん、私をリア充にしてくれる?』
ん?いま、ん?なんて
あれ?これ夢?